梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

高いところで働いてます

2006年04月08日 | 芝居
師匠にとりまして二度目の上演となる『狐と笛吹き』。全五場の構成で、春夏秋冬折々の景色の中、狐と人間の悲しい恋物語が繰り広げられております。
狐が化身した、ともねという娘と、師匠演じる楽人春方が出会うのが第一場の春の野原。春方に請われて舞うともねに、桜の花が降り注ぎますが、これは以前にもお話しした通り、舞台の天井近く、照明機器を吊るした<簀の子>から、人の手で降らせておりまして、私と、成駒屋(福助)さんのお弟子さんたちとの計三人でやっております。踊りに合わせて、降らせる量を加減して、メリハリがつくようにいたしておりますが、降らせ始めからお客様の目に入るまでの時間差も考えなくてはならず、初日近辺は手探り状態でしたが、今はバッチリです。
それにしても、歌舞伎座の<簀の子>は高いです! しかも、なるほど<簀の子>と呼ばれている通り、足場も隙間だらけ。おまけに周りは暗いときているので、移動は慎重に行います。散らせる桜の花びらは、ビニル袋に入れて携帯しているのですが、うっかり隙間から落っことそうものなら、お芝居ぶち壊しなので、袋の端を自分の黒衣に結わえ付けて用心しております。
この<散り花>の他、第二場での飛び交う<蛍>も<簀の子>から操作します。ゆっくりとした点滅を繰り返す小さなライトをつけた細いコードを吊るし、手で上げ下げすることでそれらしく見せるのです。手元のスイッチで灯りを消せば、どこかに飛んで行ったことになります。
第三場では<枯れ葉>も落ちてきますので、このお芝居、短いながらも<高所につき危険>の作業が沢山ある演目です。

舞台で繰り広げられているお芝居を真上から見下ろすと、なかなか新鮮です。ナントカは高いところが好きだそうですが、私、居心地が悪いと感じることは全然ありません(むしろ楽しんでいたりして)。