『狐と笛吹き』は平安時代のお話ですので、師匠演ずる楽人春方を始め、登場する男達は、みな〈指貫袴(さしぬきばかま)〉をはき<狩衣>を着た格好となっております。師匠は五場全てに出ておりますが、その都度衣裳の色や柄が変わっているのは、ご覧頂いた方にはお判りになったかと思います。
春夏秋冬の移り変わりに合わせて、色あいに変化をつけているわけですが、「有職故実」や「襲ねの色目」に忠実に基づいているというわけではなく、この演目の初演時(昭和二十七年)に美術を担当なさった、高根宏浩氏がおたてになった衣裳プランをもとに、現在の演者や衣裳方さんの意見も加わり、今回の上演をむかえているわけでございます。今回の師匠の衣裳は、前回(平成十四年五月南座)と全く一緒ですが、第一場で着ている、玉子地に桜を散らしたデザインは、初演の春方役でいらした故市川寿海さんの時から変わらず続いているものです。
さて、衣裳が各場で変わるということは、舞台転換中の短い間に着替えが行われているというわけで、いわゆる<早ごしらえ>です。今回は、上手の揚幕の中に<こしらえ場>を作り、計四回の衣裳転換を行っております。白地紗綾型地紋の着付や襦袢はずっと着たままで、<狩衣>や<指貫袴>を取り替えることになるのですが、両方を取り替えるのは一回目と三回目の時。二回目は<指貫袴>はそのままで、<狩衣>だけをとりかえています。四回目は<狩衣>を脱がせて着付だけになり、袴の紐をわざと雑に結び、契りを結んだ後の雰囲気を出します。
衣裳の着付けは私がさせて頂いておりますが、時間的に一番いそぐのが一回目の着替え、つまり第一場から第二場に移る時です。第二場の幕開きからすでに舞台にいなくてはならないのですが、装置はあらかじめ第一場の裏にできていて、転換は舞台を回すだけで済んでしまうので、師匠のスタンバイを待って開けるようなかたちなんです。着付け自体に難しい作業はないのですが、<指貫袴>の紐や、<狩衣>の衣紋が抜けないように襟に付けられている隠し紐を結ぶのが、ちょいと手間がかかります。前回よりかは手早くできているとは思いますが、楽日までにはもっと早くできるようになりたいです。
一幕もので、これほど衣裳替えが忙しいお芝居も、珍しいのではないですかね。
春夏秋冬の移り変わりに合わせて、色あいに変化をつけているわけですが、「有職故実」や「襲ねの色目」に忠実に基づいているというわけではなく、この演目の初演時(昭和二十七年)に美術を担当なさった、高根宏浩氏がおたてになった衣裳プランをもとに、現在の演者や衣裳方さんの意見も加わり、今回の上演をむかえているわけでございます。今回の師匠の衣裳は、前回(平成十四年五月南座)と全く一緒ですが、第一場で着ている、玉子地に桜を散らしたデザインは、初演の春方役でいらした故市川寿海さんの時から変わらず続いているものです。
さて、衣裳が各場で変わるということは、舞台転換中の短い間に着替えが行われているというわけで、いわゆる<早ごしらえ>です。今回は、上手の揚幕の中に<こしらえ場>を作り、計四回の衣裳転換を行っております。白地紗綾型地紋の着付や襦袢はずっと着たままで、<狩衣>や<指貫袴>を取り替えることになるのですが、両方を取り替えるのは一回目と三回目の時。二回目は<指貫袴>はそのままで、<狩衣>だけをとりかえています。四回目は<狩衣>を脱がせて着付だけになり、袴の紐をわざと雑に結び、契りを結んだ後の雰囲気を出します。
衣裳の着付けは私がさせて頂いておりますが、時間的に一番いそぐのが一回目の着替え、つまり第一場から第二場に移る時です。第二場の幕開きからすでに舞台にいなくてはならないのですが、装置はあらかじめ第一場の裏にできていて、転換は舞台を回すだけで済んでしまうので、師匠のスタンバイを待って開けるようなかたちなんです。着付け自体に難しい作業はないのですが、<指貫袴>の紐や、<狩衣>の衣紋が抜けないように襟に付けられている隠し紐を結ぶのが、ちょいと手間がかかります。前回よりかは手早くできているとは思いますが、楽日までにはもっと早くできるようになりたいです。
一幕もので、これほど衣裳替えが忙しいお芝居も、珍しいのではないですかね。