梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之名古屋日記・16

2008年04月20日 | 芝居
昼の部の『鬼平犯科帳 大川の隠居』は、昨年の5月、新橋演舞場におきまして<歌舞伎>として初演され、今回名古屋初お目見えになった次第でございますが、歌舞伎の興行の中で「鬼平」ものが上演されましたのは、平成2年歌舞伎座の『狐火』以来ということになるのでしょう。

稽古場便りのなかでも触れましたが、全編、歌舞伎の演出で芝居作りがなされております。場面場面の雰囲気を作る音楽は全て黒御簾での下座囃子で処理し、舞台の進行は狂言作者の柝で指揮されます。鳥のさえずりや犬の声も、歌舞伎ならではの笛、声色を使って役者が勤めておりますし、まさしくこれは世話物なのです。
なればこそ、芝居の途中で<劇中口上>が入っても、お客様にすんなりと受け入れていただいているでしょうね。


序幕の『源太勘当』で時代物をじっくり味わっていただいたあと、30分の休憩で、第一場<大川端船着場>がはじまりますが、田舎の大尽、船頭、芸者と箱屋の若い衆、苗売り、行商人、漁師…。様々な職の男女が行き交う江戸の町の賑わいが一気にパアッと広がります。

時代と世話、重みと軽やかさの対比が面白い2演目がスッキリと並んだ、素敵な趣向の御園座昼の部でございます。

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