梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

聞こえてますか?

2006年04月11日 | 芝居
今月、色々な場面で「声の出演」をさせて頂いております。先日お話しした『井伊大老』の二つの〈唄〉もそうなんですが、『関八州繋馬』の二場目の「劇中口上」、夜の部の『六世中村歌右衛門五年祭追善口上』での〈東西触れ〉、そして『関八州繋馬』第一場の〈呼び〉です。〈東西触れ〉も〈呼び〉も以前ご説明いたしましたが、こと今回の〈呼び〉に関しては少々珍しいものでございまして、加賀屋(魁春)さん扮する如月姫実は胡蝶蜘の精が、音羽屋(菊五郎)さん演ずる源頼信を惑わすところへ、花道揚げ幕より「お帰りや~、お帰りや~」と〈呼び〉をいれ、それから襲名披露の六代目松江さん演ずる源頼平が颯爽と変化を退治に登場、となるという演出です。「お帰りや~」というフレーズも、まして二回繰り返して言うのも他に例がありませんが、普通一人で言うのを三人にしているのも、常とは違うところです。約四十年前の復活初演の時にこの演出ができたそうで、その時の舞台を録音したテープを聞かせて頂き、参考にいたしましたが、前回はずいぶんと陰気に、ゆっくり言っておりましたのが、「もっとキッパリ言ってほしい」というご注文が今回ございましたので、言い回しはだいぶ変えました。…前回の頼平役は師匠梅玉でしたので、この〈呼び〉は歌右衛門の大旦那のお弟子さんがなすったのでしょうか? 師匠に伺ってみようかな…。

一方〈東西触れ〉は何度もさせて頂いておりますが、「追善口上」では、はじめに一人だけで長く「と~ざ~い~」と言うのを勉強させて頂いております。常式幕が開き切るまでのばさなくてはならないので結構大変です。また、〈東西触れ〉らしい、力強くハッキリした声の出し方を出すのが、ふだん内に籠る発声が癖になっている私には難しいところで、いろいろ試しながら勤めておりますが、華やかな口上の幕開きをきちんと飾ることができているか、心配です。
〈東西触れ〉は、一幕の「口上」ですと「と~ざ~い~ とざい と~ざ~い~」と、東西を三回申しますが、今回の『関八州繋馬』でみられるような「劇中口上」ですと、「とざい と~ざ~い~」の二回になります。
はからずも、一日のうちにいろんな質の声を使い分けることとなりまして、もともと弱い喉が悲鳴をあげております。まあこれも試練、これからは高低自在の〈七色の声〉が出せるようになる…かもしれません。

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