梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

『研辰』稽古場だより・参

2005年04月29日 | 芝居
昨日は更新できず失礼をいたしました。実は昨日の歌舞伎座の舞台での稽古、六時に終わる予定だったのが、結局八時過ぎまでかかってしまい、お腹がペコペコに。後輩と銀座で食事をし、そのままその人の家に遊びにいってしまいました。今日は二日分の稽古場レポートをお届けします。
昨日は午後三時から実際の舞台上で。舞台でただの稽古を行うというのは珍しいことで、今回の芝居は装置も通常の歌舞伎とは違いますし、セリ穴が沈みっぱなしの場面もあり危険を伴いますから、出演者に確認をしてもらうためにも、また演技の流れも本番通りになる意味でも、こういう芝居には都合のいい稽古法でしょう。
すでに装置は出来上がってセット済み、その他バックの吊り幕、アトリエ・カオスの特殊小道具も全てが揃いました。
さて前日の続きから始まりましたが、思わぬアクシデントが。今回のセットは、回り舞台にスッポリ収まる大きさの、半弧状のスロープになっていて、高いところは三メートルぐらいあるのですが、このスロープを支える柱が一部曲がっていたのです。このスロープ舞台には大勢の役者が乗って動き回りますから、その衝撃は相当なもの。もし柱が折れでもしたら、役者はスロープごと転落でしょう。稽古中に気がついてよかったですが、もしこのまま上で暴れ続けていたら、と考えるとゾッとしました。急遽稽古を中断して、全ての柱の点検、補強を行いました。
かくて再開した稽古、やはり舞台でやってみるとうまく行かないところは多く見つかるもので、稽古も中断しがち。歌舞伎座の広い舞台から、さらに広い客席まで、しっかりつたわる演技を工夫します。そういうわけで稽古は延長、それでも途中で、他の芝居の稽古の都合もあり、八時過ぎに打ち切りに。考えてみればまだ一度も、「通し稽古」をしていません。まだ四日あるとはいえ、ちょっと不安に、というか、いきなり途中の場面から始めるという稽古にすこし戸惑いも。明日はどうなる? という気持ちを抱いての、銀座ご飯となりました。
今日は十一時から。やはり昨日の続きから。三時から別の芝居の稽古があるので、どう進行するかな、と思いましたが、今日は案外順調に。群集シーンもだんだんとメリハリがついて、ダメ出しも減ってきました。幕切れ、一枚の紅葉が決められた居所に散る仕掛けに、少々かかりましたが、一時半にはとりあえず終わり、休憩を挟んで、あらためて序幕から。これが結局、始めての通し稽古となりました。多少のつっかえがあっても野田さんの「続けて!」の声でノンストップ。そうなってくると自然に役者のテンションも上がってくるもので、流れに乗っていきいきしてくるから不思議です。大詰めまで終わってからのダメ出しでも「急に通し稽古にしてしまったけど、流れはとっても良くなった」との全体評。その後の個々のダメは微に入り細を穿つものでしたが、一貫しているのは、「気持ちの流れ」と「その場でハッキリさせたい言葉」を大事にする、ということ。なるほどと思うことしきりでした。
結局四時までかかってしまいましたけれど、スッキリとした形で稽古が終わりました。私は帰れる身ですが、勘三郎さんはそれから『髪結新三』の附立。すごい体力ですね。
ところで私が勤めるお化け提灯も、今日の稽古でなんとか面白い暴れ方を見つけました。また、からくり人形は亀蔵さんですが、昨日の稽古から手にしたある小道具に一同大爆笑。御期待下さいませ。
二日分の長文になってしまいました。御容赦下さい。

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