梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

昇り降りにも名前が

2007年03月15日 | 芝居
写真は『渡海屋・大物浦』で使われる<高二重>屋体についている段々です。
これを幕内では<入れ歯>と申しております。なるほど、半円形の段の周囲に、細丸木を縦に取り付けた様は、入れ歯に見えなくもないですね。この<入れ歯>は、『毛谷村』『太功記十段目』『吃又』など、おもに時代物、時代世話の舞台で使われます。高二重の舞台の時は写真のように3段ですが、<常足><中足>など、舞台の高さによっては2段、1段にもなります(2段のときがいちばん入れ歯らしいですね)。



さてお次の写真はやはり『渡海屋』で見られる段。こちらはただの直方体ですが、<白緑(びゃくろく)>と申しております。白緑とは色の名前で、黄土色に緑色を混ぜた“白緑色”に塗られているところからついた名称です。現在では、屋内に置いているという設定の時はご覧の通り白緑色になり、屋外の場合は石肌を描いた灰色のものになることがほとんどですが、昔はどちらの場合でも白緑色のものを使ったのだそうで、色みは違えど今でも双方を<白緑>と呼んでいます。

<入れ歯>にしても<白緑>にしても、歌舞伎芝居での段々は、1段7寸が定式です。<高足><中足><常足>それぞれの二重舞台を、等分できる寸法なんですね。

最新の画像もっと見る