梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

花に戯れ…

2006年12月08日 | 芝居
『勢獅子』は、山王祭に浮き立つ日枝神社を舞台に、鳶頭はじめ大勢の祭の若い者、手古舞が出てくる大変賑やかな舞踊です。
30分と決して長くはない上演時間ですが、鳶と手古舞の木遣りの踊り(幕内では常磐津の語り出しからとって<かっかれ>と呼んでおります)に始まり、頭二人の曾我の夜討ちの振り事、<ぼうふら踊り>といわれるおどけ節の踊り、芸者のクドキ、獅子舞からオカメとヒョットコの面をかぶった(今回はこれにもう一面加わっておりますが)おかしみの振り…と、盛りだくさんの内容です。

さて、このいくつにもわかれるパートのうち、幹部俳優さん自らが入って演技をするのが珍しい<獅子舞>について、ちょっとお話しさせて頂きます。
当然ながら、前足、後足にわかれ、2人が操るわけですが、前足の方は獅子頭の操作もなさいます。獅子頭の内部は、口の開閉を操作する握りがついており、手を離せば開き、握れば閉じるようになっています。またこの握りのすぐ近くには、耳の上げ下げを行う把手もついており、口の開け閉めの握りといっぺんに操作できるようになっております。ご覧になった方はおわかりだと思いますが、踊りの要所要所で効果的に操作され、表情を出しておりまして、お客様からも歓声があがるところでございます。
後足の方は、獅子の尻尾の根元を自分の腰に固定します。こうしないとだらしなく垂れ下がったままになってしまうんですね。獅子の胴体を表す緑色の布、<錣(しころ)>と申しますが、この錣のお尻の部分には穴が開いており、ここに別に作られた尻尾を差し込む。尻尾の根元には板で作られたベロがついており、これを後足役の方の帯に差し込み、さらにベロと一緒に取り付けられている晒の布で、腰回りを縛って固定するわけです。
そして後足の方は、錣の中ほどを掴んで、獅子の動きに合わせてヒラヒラとはためかせます。こうすると、獅子の動きに、さらに躍動感が出るのだそうでございます。
獅子頭のすぐ下の錣には、同じ色の紗で作った覗き窓があり、前足の方はここから方向を確認しますが、後足の方は足下しか見えません。錣はどの演目でも緑色(革色といったほうが正確でしょうか)で、華蔓(けまん)模様が散らしてあります。獅子頭は金塗りで、白い毛がついており、錣にも、和紙で作られた、毛を表現する飾りがついています。
…寝る、でんぐり返りをする、足拍子を踏むなど、さまざまな技が駆使される獅子舞。カラミの得物も獅子にちなんで紅白の牡丹の花枝。一幕で一番動きのある件でございます。

つらつら獅子について書いてしまいましたが、私も実は『お祭り』などのカラミとして、3公演ほど獅子に入った経験がございまして、そんなおかげでこの文章が書けました。いずれも前足をさせていただきましたが、ずっと飛び跳ねるので足はパンパン、息はゼイゼイ。体力が無い私には相当なシゴキでした!

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1 コメント

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獅子舞 (はなみずき)
2006-12-09 08:11:09
獅子舞が大好きですので、「勢獅子」もワクワクしながら拝見してました。前幕「芝浜」の幕切れには、新七丈がお一人でお獅子に入っていらっしゃいますね。私の子どもの頃は、お正月ともなると、町内のお囃子が出て、お獅子が家々をまわったものですが、アパートやマンションが多くなった昨今は、いつの間にかそのようなゆったりとした行事もなくなってしまいました。歌舞伎座でお獅子を堪能します!
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