梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

風待月稽古場便り・壱

2007年05月29日 | 芝居
2日間の充電を経て、歌舞伎座6月大歌舞伎の稽古が始まりました。
今日は『妹背山婦女庭訓』の<附立>。今回は「小松原」「花渡し」「吉野川」の3幕構成で、いわば<半通し>でございます。蘇我対藤原の政権争いの陰ではかなく散ってゆく若き男女の悲恋、そして親たちの苦悩がよりわかりやすくなるのではないでしょうか。
私が演じます「小松原」の腰元は、出番も短く、とりたてて仕事もないのですが、早春の野辺に姫君のお供で遊山に来たわけですので、少しでもそういう気分が出せればと思います。そこにいる<だけ>のお役でも、おしつけがましくない“風情”がある役者になりたいのです。

「花渡し」をはさんで、大曲「吉野川」となりますが、ここでは師匠演じます久我之助の用事を色々と。この場に携わりますのは平成14年正月公演以来です。割合裏の仕事が多い演目でございまして、おいおいお話しさせて頂きたいと思いますが、今日は兄弟子と打ち合わせをしながら、師匠の演技を拝見いたしました。

午後3時の<顔寄せ>で手締めをし、今日の仕事は終了。それから渋谷に向かいまして、シアターコクーンでの『藪原検校』を拝見してまいりました。
井上ひさしさんの傑作戯曲を蜷川幸雄さんが演出。『天保十二年のシェイクスピア』以来の企画です。親の因果で盲目に生まれついた杉の市(古田新太さん)が、悪事の限りを尽くして金と権力をつかみ取る、その栄光と転落を描いた痛快一代記。小学生の頃、新潮文庫で戯曲は読んでいたのですが、あらためて舞台で観ることで、主人公が背負う、ハンデを負った者の哀しみ、力強い<生>への執着、あるいは健常者中心に動く社会の残酷さが迫ってまいりました。
古田さんはじめ、段田安則さん、壤晴彦さん六平直政さんといった個性的な男優陣の魅力があふれる芝居でした.


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1 コメント

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はじめまして (チエちゃん)
2007-05-30 20:45:37
おじゃまいたします。
素敵なブログを見つけて、興奮気味の私です。
私は地方に住んでおりますので、なかなか歌舞伎を拝見する機会がありませんが、地元で公演があるときは都合のつく限り足を運んでおります。
昨年は高麗屋さんの「勧進帳」を拝見いたしました。
歌舞伎のことは、まだまだ知らないことばかりです。
梅之さんの過去ログを読ませていただき、勉強したいと思っております。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
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