梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

稲苗月稽古場便り・終

2007年04月30日 | 芝居
稽古の仕上げは『め組の喧嘩』の<初日通り舞台稽古>。
私が出る序幕<島崎楼の場>は、高島屋(右之助)さん、橘屋(家橘)さんのお武家と成田屋(團十郎)さん演じる相撲取り四ツ車大八の酒宴の場。芝居の合間合間に、めいめいが酒を飲んだり煙草を呑んだり扇であおいだりいたしますが、酌婦としてはべる私ども女郎も、そうした各人が自由になさる動きに受けこたえしながら、なおかつ自分の演技もしなくてはなりません。こういうお役は初めてといってもいいくらいですので、稽古場ではなかなか感じが掴めませんでしたが、実際、お銚子やお膳、タバコ盆など小道具がならび、自分も緋の長襦袢に縞の打掛という拵えになってみますと、なんとはなしに(こんな感じかな)という手がかりは掴めました。出しゃばってはいけませんが、こういうお役で芝居の雰囲気を作らなければそこにいる意味がなくなってしまいますので、行儀よく、そしてしっかりとお芝居に参加したいものです。

出番を終えた後は黒衣に着替えて師匠の用事。師匠演じます<炊き出し喜三郎>は、ご存知の通り大詰めの鳶と相撲の喧嘩を仲裁する役。押し合いへし合いする群衆の上から、大梯子にぶらさがって割って入るというスゴい場面がございますが、この段取りも含め、鳶や相撲役の方々の立廻りの段取り稽古も、時間を割いて入念に行われました。
本当にこの立廻りはすごい! まさに体を張った演技。ひとつ間違えば怪我しかねない技を集団で見せるわけですが、皆様真剣なのは申すまでもなく、それをもう一つ突き詰めて、<鳶>としての威勢、粋を見せていらっしゃる。これなればこそ、この喧嘩場が大きな見せ場になるのでしょうね。

いよいよ明日は初日。皐月興行らしい爽やかで意気のいいお芝居が並んだ<團菊祭>に、是非是非お越し下さいませ。