梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

悔しい思いをするときも

2006年09月14日 | 芝居
本日<中日>。残り二週間となりました。気候もぐっと涼しく(というか肌寒く)なってまいりましたね。体調には気をつけて、あと半分頑張ります。

師匠の衣裳の着付けは、弟子の立場の者が責任をもって担当するのは、以前お話しさせて頂いたと思います。今月私は、『業平 小町』での、業平の着付けをさせて頂いておりますが、業平の衣裳は公家装束でも一番おおがかりな<束帯>でございまして、使う紐の数も増えますし、見た目第一、綺麗に仕上げなくてはなりません。歌舞伎といえど公家装束はたまにしかでませんし、<かさばる>衣裳を綺麗にまとめることに、慣れない身ゆえ最初はずいぶん手間取りまして、いまでこそ少しはジタバタせずに作業できるようにならいましたが、衣裳さんはじめ周りの方々から毎日色々とダメ出しを受けながら勉強しております。まだまだ基本ができてないなと反省することばかりです。

私が師匠の着付け、とくに初めて着せる衣裳の着付けをいたしますときは、舞台稽古までに過去の上演写真や映像を拝見して、「こういう風に着せなくては」というイメージを作ることから始めますが、自分の頭の中と手先指先が、上手く連動してくれればよいものの、実際は初めて触れる衣裳に戸惑うことばかり。ヒダをとるには? 端折るには? どこを持ったら上手くさばける? と疑問の嵐に襲われます。衣裳さんはじめ兄弟子、先輩方にいろいろ質問して、疑問を解決してはゆきますが、結局コツとか手さばきというものは、頭で理解するものではなく、自分の体に叩き込まねばなりません。

今年一月の『鶴壽千歳』で、似た拵えの装束は着付けましたが、純然たる束帯は今回が初めてなので、いまは汗かきながらの作業になってしまっても致し方ないのかもしれません。ただしそれは今回まで! 次にどんな演目であれ、師匠が束帯をお召しになるときは、もう落ち着いて、テキパキ綺麗に着せることが出来なくてはいけないのだと思います。

平成十一年に入門した私ですが、<まだ>七年でもあり、<もう>七年でもあります。ときに自分を追い込み、カツを入れ、つねに勉強の心を忘れずに、どんな仕事でも取り組んでまいりたいと考えております。