梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

菊見月稽古場便り 一

2006年08月29日 | 芝居
勉強会の余韻も感慨もさておいて、早速に始まりました歌舞伎座公演の稽古。
九月の公演は、<秀山祭 九月大歌舞伎>と銘打ちまして、本年生誕百二十年となる『大播磨』、すなわち初代中村吉右衛門さんの遺徳を称え、所縁の演目の上演、あるいは当代播磨屋(吉右衛門)さんはじめ、初代の芸脈を受け継ぐ方々がそろってご出演なさるなど、大変賑々しい興行となります。

午前十時半に楽屋入り。まずは一時間半ほどかけて師匠の楽屋作りです。それから稽古場である歌舞伎座ロビーにゆきまして、壁に掲示された<貼り出し>をチェック。以前お話いたしましたが、歌舞伎座ではこの<貼り出し>で、名題下俳優の総配役が発表されるのです。今月の私は…夜の部『籠釣瓶花街酔醒』序幕「吉原仲之町見染の場」での、<八ツ橋付き振袖新造>。そうですまたまた女形です! 私は過去四回この狂言に出演しておりますが、立役で出たのは一回だけ。五回目の今回もご多分にもれず、というところでしょうか。なんにしましても、普段からの女形さんに失礼がないよう、心して勤めさせて頂きます。

もう一つ、師匠が在原業平を演じます『六歌仙容彩』の<業平・小町>で、師匠の後見(着付後見)をさせて頂きますが、踊りにせよ芝居にせよ、後見は<役>とは見なしませんので<貼り出し>には記載されません。師匠から直接口頭でおおせつかりました。
『籠釣瓶』も『業平・小町』も今日は<附立て>でした。どちらもまだ段取りがついたわけではございませんので、各演目のお話は明日以降にさせてくださいませ。

それにしましても今月の名題下部屋は総勢六十八名と大所帯! 自分の師匠がお休みでも舞台に出るという、俗にいう<主(しゅう)なし>の方が多数いらっしゃるからでしょう。なんといっても『籠釣瓶』は大変な人数を必要とするお芝居ですからね。様々なお家のお弟子さんが集まったので、楽屋の顔ぶれもいつもと変わって多士済々、数年ぶりにご一緒する先輩、後輩もいて、ちょっと楽しいです。