梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

勉強会稽古日誌 4頁

2006年08月17日 | 芝居
本番初日まで、とうとう一週間となりました。思えば五月の<本読み>からはじまりまして、総勢十六名の出演者がそれぞれの舞台スケジュールの合間をぬって、できる限りのお稽古を重ねてまいりましたが、初めて台本を手離して動いてみた時からくらべれば、<まとまり>とか<落ち着き>というものは、確かにできてきたと申し上げることができます。これからの集中的なお稽古では、個々の技術の向上と、この<物語>自体をお客様に楽しんで観て頂けるように、全員で一つの空気、新歌舞伎らしい魅力を出せるよう、努力してまいりたいものです。

これまで書くのを忘れておりましたが、一日のお稽古では、A班、B班の両方が通しで一回ずつ演じるのが基本パターンです。紀伊国屋さんには、いっぺんに二回の『修禅寺物語』をご覧頂いているわけです。
片方の班が演じている最中は、もう片方の班は見学です。自分と同じ役を、どう演じるのか見比べたり、あるいは芝居にあわせて自分の台詞を小声でくちずさんだり。色々な過ごし方はございますが、お互いの演技を見ての感想を言い合ったり、ここはこうしたら、とアドバイスをしあったりすることで、よりよい演技ができるよう協力しあえるというのも、勉強会ならではだと思います。

今日の頼家の演技では、将軍としての<大きさ>を出すよう心がけました。せせこましくならず、悠揚に振る舞うべく、顔の動きなども極力細かくならないようにし、表情の作り過ぎも戒めました。昨日とどこまで変わったかはわかりませんが、どっしりと演じようと気をつけたおかげか、落ち着いて演じることはできました。加えて、つかの間の恋の相手であるかつらのことを、本当に、本当に愛すること。第二場ではこれを一番に考え、結果として優しさを出せるよう頑張ってましたが、なかなか上手くいきませんね。でも「昨日よりさわやかだった」との、A班の出演者からの感想をもらって、やっぱり演技というものは、意識して変えてみないと、観ている側には変化は伝わらないものだなと思いました。
ただ気をつけたいのは、今日は意識してやったことを、明日からは自然にできるようこなさなくてはなりません。こういうことをしてますよ、みんな判ってくださいよ、というようなお芝居に陥らないように、これまでの舞台からの反省もこめて、もっともっと自然に舞台に立てるようになりたいものです。