縯兄弟威名日盛。更始殺縯。秀不敢服喪、飮食言笑。惟枕席有涕泣處。更始慙、拜秀大將軍、封武信侯。未幾以秀行大司馬事、遣徇河北。所過除莽苛政。南陽禹、杖策追秀、及於鄴。秀曰、我得專封拜。生遠來、寧欲仕乎。禹曰、不願也。但願明公威加於四海、禹得效其尺寸、垂功名於竹帛耳。更始常才、帝王大業、非所任。明公莫如延攬英雄、務悦民心。立高祖之業、救萬民之命、天下不足定也。秀大悦、令禹常宿止於中、與定計議。
縯兄弟の威名日に盛んなり。更始縯を殺す。秀敢えて喪に服せず、飲食言笑す。惟枕席(ちんせき)に涕泣(ていきゅう)する処有るのみ。更始慙(は)じて、秀を大将軍に拝し、武信侯に封ず。未だ幾(いくばく)ならずして、秀を以って大司馬の事を行わしめ、河北を徇(とな)えしむ。過ぐる所莽の苛政を除く。南陽の禹、策を杖つき秀を追い、鄴(ぎょう)に及ぶ。秀曰く、我封拝を専(もっぱ)らにするを得たり。生(せい)遠く来るは、寧ろ仕えんと欲するか、と。禹曰く、願わざるなり。但(た)だ願わくは明公の威徳四海に加わり、禹其の尺寸を效(いた)すを得て、功名を竹帛(ちくはく)に垂(た)れんのみ。更始は常才、帝王は大業、任ずる所に非ず。明公、英雄を延攬(えんらん)し、務めて民心を悦ばしむるに如(し)くは莫(な)し。高祖の業を立てて、万民の命を救わば、天下は定むるに足らざるなり、と。秀、大いに悦び、禹をして常に中(うち)に宿止(しゅくし)せしめ、与(とも)に計議を定む。
劉縯・劉秀兄弟の声望は日増しに高まっていった。危機感を抱いた更始帝と側近たちに劉縯は殺されてしまった。劉秀はあえて喪に服さず、普段どおり飲食し、談笑していた。ただ夜床に就いた時に涙するばかりであった。これを聞いた更始帝は心中恥じて、劉秀を大将軍に任じ、武信侯に封じた。さらに程なくして大司馬の任務を行わせ、河北を説き巡らせた。劉秀は行く先々で王莽の悪政の弊害を除いていった。
南陽の禹は、馬の鞭を杖にして秀の後を追って鄴までやって来た。秀は「私は封侯の事や将を拝する専権を得ている、あなたが遠く尋ねて来たのは、私に仕えたいと思ってのことか」と聞いた。禹は「そうではありません、ただ私の願いは、あなた様の威光や徳が天下にあまねく布かれ、わたくしめがほんの僅かでもご助力でき、功名を後の世に残したいのでございます。更始帝は凡庸、帝王は大事業でありますから、とてもつとまりはしません。あなた様には宜しく天下の英雄を糾合し、つとめて民心をよろこばせることが肝要かと存じます。高祖皇帝のような大業を立て、万民の命を救うことだできれば、天下の平定はさして難くはございますまい」と申し上げた。劉秀はたいそう喜び、禹を引き止め、幕中に宿泊させてともに策を練った
縯兄弟の威名日に盛んなり。更始縯を殺す。秀敢えて喪に服せず、飲食言笑す。惟枕席(ちんせき)に涕泣(ていきゅう)する処有るのみ。更始慙(は)じて、秀を大将軍に拝し、武信侯に封ず。未だ幾(いくばく)ならずして、秀を以って大司馬の事を行わしめ、河北を徇(とな)えしむ。過ぐる所莽の苛政を除く。南陽の禹、策を杖つき秀を追い、鄴(ぎょう)に及ぶ。秀曰く、我封拝を専(もっぱ)らにするを得たり。生(せい)遠く来るは、寧ろ仕えんと欲するか、と。禹曰く、願わざるなり。但(た)だ願わくは明公の威徳四海に加わり、禹其の尺寸を效(いた)すを得て、功名を竹帛(ちくはく)に垂(た)れんのみ。更始は常才、帝王は大業、任ずる所に非ず。明公、英雄を延攬(えんらん)し、務めて民心を悦ばしむるに如(し)くは莫(な)し。高祖の業を立てて、万民の命を救わば、天下は定むるに足らざるなり、と。秀、大いに悦び、禹をして常に中(うち)に宿止(しゅくし)せしめ、与(とも)に計議を定む。
劉縯・劉秀兄弟の声望は日増しに高まっていった。危機感を抱いた更始帝と側近たちに劉縯は殺されてしまった。劉秀はあえて喪に服さず、普段どおり飲食し、談笑していた。ただ夜床に就いた時に涙するばかりであった。これを聞いた更始帝は心中恥じて、劉秀を大将軍に任じ、武信侯に封じた。さらに程なくして大司馬の任務を行わせ、河北を説き巡らせた。劉秀は行く先々で王莽の悪政の弊害を除いていった。
南陽の禹は、馬の鞭を杖にして秀の後を追って鄴までやって来た。秀は「私は封侯の事や将を拝する専権を得ている、あなたが遠く尋ねて来たのは、私に仕えたいと思ってのことか」と聞いた。禹は「そうではありません、ただ私の願いは、あなた様の威光や徳が天下にあまねく布かれ、わたくしめがほんの僅かでもご助力でき、功名を後の世に残したいのでございます。更始帝は凡庸、帝王は大事業でありますから、とてもつとまりはしません。あなた様には宜しく天下の英雄を糾合し、つとめて民心をよろこばせることが肝要かと存じます。高祖皇帝のような大業を立て、万民の命を救うことだできれば、天下の平定はさして難くはございますまい」と申し上げた。劉秀はたいそう喜び、禹を引き止め、幕中に宿泊させてともに策を練った