又曰、春秋大一統者、天地之常經、古今之通誼也。今師異道、人異論。臣愚以爲、諸不在六藝之科、孔子之術者、皆絶其道、然後統紀可一、法度可明、而民知所從矣。上善其對、以爲江都相。
又曰く、春秋、一統を大にするは、天地の常経、古今の通誼(つうぎ)なり。今、師ごとに道を異にし、人ごとに論を異にす。臣愚、以為(おも)えらく、諸々の六芸(りくげい)の科、孔子の術に在らざる者は、皆其の道を絶ち、然る後に統紀一(いつ)にす可(べ)く、法度(ほうど)明らかにす可く、而して民、従う所を知らん、と。上(しょう)、其の対を善しとし、以って江都の相と為す。
また言うには、「春秋の書は、王が天下を統一することを示していますが、これは天地自然の変わりない道であり、古今を通じて変わらぬ道義であります。ところが今は、先生ごとにそれぞれ道を異にし、人ごとにそれぞれ論を異にしています。そこで愚かながら私が考えますに、六芸の科目、つまり孔子の学術でないものは、皆その道を根絶して、そこではじめて国家の規範もひとつになり、天下の法も明らかになって、そして人民も従うべき方向を知るであろうと、存じます」と。武帝はこの答えをよしとして、董仲舒を江都王の宰相にした。
春秋 孔子が魯の国の記録を書き残した。解説書に左氏、穀梁、公羊(くよう)の三伝がある。董仲舒は公羊伝に精通した。 常経 常の径(みち) 六芸 六経(りくけい)に同じ。易経・書経・詩経・春秋・礼経・楽経の六つ。江都 江蘇省にある地名。統紀 綱紀におなじ、国を治める根本原則。