項羽率諸侯兵、欲西入關。或説沛公守關門。羽至。門閉。大怒、攻破之、進至戲、期旦撃沛公。羽兵四十萬、號百萬。在鴻門。沛公兵十萬、在覇上。范説羽曰、沛公居山東、貪財好色。今入關、財物無所取、婦女無所幸。此其志不在小。吾令入望其氣、皆爲龍成五采。此天子氣也。急撃勿失。
項羽、諸侯の兵を率い、西のかた関に入らんと欲す。或る人沛公に説いて関門を守らしむ。羽至る。門閉づ。大いに怒り、攻めて之を破り、進んで戲に至り、旦(あした)に沛公を撃たんと期す。羽の兵は四十万、百万と号す。鴻門に在り。沛公の兵は十万、覇上に在り。范、羽に説いて曰く、沛公、山東に居りしとき、財を貪り色を好めり。今関に入り、財物取る所無く、婦女幸する所無し。此れ其の志、小に在らず。吾人をしてその気を望ましむるに、皆龍と為り五采を成す。此れ天子の気なり。急に撃って失うこと勿かれ、と。
項羽は諸侯の兵を率いて、西のかた函谷関に入ろうとした。するとある人が沛公に説いて関門を閉じて守らせた。項羽が到着すると、関門が堅く閉ざされていたので項羽は激怒して関を攻め破り、進軍して戲水のほとりに至り明朝にも沛公を撃とうとした。項羽の兵は実数で四十万、百万の大軍と称して鴻門に陣を布いた。一方沛公の兵は十万、覇上に布陣した。項羽に范が説いて言うには、「沛公、山東に居た時は財宝をむさぼり、女色を好んだ。ところが関中に入ったとたん財物は取らないし、女性は近づけない。少なからず天下を狙う意志があると観じられる。私が部下に雲気を窺わせると、皆龍の形と五色に色どられていたとの報告でありました。これは天子の気に違いありません。迂闊に攻めて取り逃がしてはなりません」と。
項羽、諸侯の兵を率い、西のかた関に入らんと欲す。或る人沛公に説いて関門を守らしむ。羽至る。門閉づ。大いに怒り、攻めて之を破り、進んで戲に至り、旦(あした)に沛公を撃たんと期す。羽の兵は四十万、百万と号す。鴻門に在り。沛公の兵は十万、覇上に在り。范、羽に説いて曰く、沛公、山東に居りしとき、財を貪り色を好めり。今関に入り、財物取る所無く、婦女幸する所無し。此れ其の志、小に在らず。吾人をしてその気を望ましむるに、皆龍と為り五采を成す。此れ天子の気なり。急に撃って失うこと勿かれ、と。
項羽は諸侯の兵を率いて、西のかた函谷関に入ろうとした。するとある人が沛公に説いて関門を閉じて守らせた。項羽が到着すると、関門が堅く閉ざされていたので項羽は激怒して関を攻め破り、進軍して戲水のほとりに至り明朝にも沛公を撃とうとした。項羽の兵は実数で四十万、百万の大軍と称して鴻門に陣を布いた。一方沛公の兵は十万、覇上に布陣した。項羽に范が説いて言うには、「沛公、山東に居た時は財宝をむさぼり、女色を好んだ。ところが関中に入ったとたん財物は取らないし、女性は近づけない。少なからず天下を狙う意志があると観じられる。私が部下に雲気を窺わせると、皆龍の形と五色に色どられていたとの報告でありました。これは天子の気に違いありません。迂闊に攻めて取り逃がしてはなりません」と。