當旦之世、王欽若已相。欽若罷、冦準再入相。參政丁謂、事準甚謹。嘗會食、羹汚準鬚。謂起拂之。準笑曰、參政國大臣。乃爲官長拂鬚邪。謂甚愧恨。準罷、李迪・丁謂爲相。準遠貶、迪罷、謂獨相。時上已有疾、昏眩。如準罷貶、皆謂白中宮行之、上不知矣。尋崩。年五十五。在位改元者五、曰咸平・景、曰大中祥符、曰天禧・乾興。太子立。是爲仁宗皇帝。
旦の世に当って、王欽若已に相たり。欽若罷め、冦準再び入って相たり。参政丁謂(ていい)、準に事(つか)えて甚だ謹む。嘗て会食せしとき、羹(あつもの)、準の鬚(ひげ)を汚す。謂、起(た)って之を払う。準、笑って曰く「参政は国の大臣なり。乃ち官長の為に鬚を払うや」と。謂、甚だ愧恨(きこん)す。準罷めさせられ、李迪(りてき)・丁謂、相と為る。準、遠く貶(へん)せられ、迪罷めさせられ、謂独り相たり。時に上、已に疾(やまい)有り、昏眩(こんげん)す。準の罷め、貶せられし如き、皆謂、中宮(ちゅうきゅう)に白(もう)して之を行い、上は知らざるなり。尋(つ)いで崩ず。年五十五。位に在って改元する者(こと)五、咸平(かんぺい)・景と曰い、大中祥符と曰い、天禧(てんき)・乾興と曰う。太子立つ。是を仁宗皇帝と為す。
羹 熱い飲み物。 愧恨 恥じ恨む。 昏眩 めまい。 中宮 皇后。
王旦の在世中に、王欽若は宰相になっていた。欽若が罷免されると、冦準が再び朝廷に入って宰相になった。参政の丁謂は恭しく冦準に仕えていた。ある時、会食中に冦準が吸い物の汁で自分の鬚を汚した。丁謂はすぐさま席を起って冦準の鬚を拭き取った。冦準は苦笑しながら「参政は国の大臣である。上官の為に鬚まで払うには及ぶまい」と戒めた。丁謂は甚だこれを恥じ、ひどく恨んだ。
冦準が罷免されると、李迪と丁謂が宰相になった。やがて冦準が遠く(雷州の司戸に)おとされて行き、李迪も宰相を罷免されて丁謂独りが宰相の座にあった。そのころ真宗は病に冒され、めまいに悩まされていた。冦準の罷免も配流も丁謂が皇后に取り入って決めた事で、帝は何も知らなかった。ほどなく真宗は崩御された。五十五歳、在位中改元すること五回で咸平・景・大中祥符・天禧・乾興である。
皇太子が即位した。これが仁宗皇帝である。
旦の世に当って、王欽若已に相たり。欽若罷め、冦準再び入って相たり。参政丁謂(ていい)、準に事(つか)えて甚だ謹む。嘗て会食せしとき、羹(あつもの)、準の鬚(ひげ)を汚す。謂、起(た)って之を払う。準、笑って曰く「参政は国の大臣なり。乃ち官長の為に鬚を払うや」と。謂、甚だ愧恨(きこん)す。準罷めさせられ、李迪(りてき)・丁謂、相と為る。準、遠く貶(へん)せられ、迪罷めさせられ、謂独り相たり。時に上、已に疾(やまい)有り、昏眩(こんげん)す。準の罷め、貶せられし如き、皆謂、中宮(ちゅうきゅう)に白(もう)して之を行い、上は知らざるなり。尋(つ)いで崩ず。年五十五。位に在って改元する者(こと)五、咸平(かんぺい)・景と曰い、大中祥符と曰い、天禧(てんき)・乾興と曰う。太子立つ。是を仁宗皇帝と為す。
羹 熱い飲み物。 愧恨 恥じ恨む。 昏眩 めまい。 中宮 皇后。
王旦の在世中に、王欽若は宰相になっていた。欽若が罷免されると、冦準が再び朝廷に入って宰相になった。参政の丁謂は恭しく冦準に仕えていた。ある時、会食中に冦準が吸い物の汁で自分の鬚を汚した。丁謂はすぐさま席を起って冦準の鬚を拭き取った。冦準は苦笑しながら「参政は国の大臣である。上官の為に鬚まで払うには及ぶまい」と戒めた。丁謂は甚だこれを恥じ、ひどく恨んだ。
冦準が罷免されると、李迪と丁謂が宰相になった。やがて冦準が遠く(雷州の司戸に)おとされて行き、李迪も宰相を罷免されて丁謂独りが宰相の座にあった。そのころ真宗は病に冒され、めまいに悩まされていた。冦準の罷免も配流も丁謂が皇后に取り入って決めた事で、帝は何も知らなかった。ほどなく真宗は崩御された。五十五歳、在位中改元すること五回で咸平・景・大中祥符・天禧・乾興である。
皇太子が即位した。これが仁宗皇帝である。