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寡黙堂ひとりごと

詩吟と漢詩・漢文が趣味です。火曜日と木曜日が詩吟の日です花も酒も好きな無口な男です。

唐宗八家文 柳宗元 (七)石澗記

2015-02-24 12:40:23 | 唐宋八家文
石渠之事既窮。上由橋西北、下土山之陰、民又橋焉。其水之大、倍石渠三之。亘石爲底、達于兩涯。若床若堂、若陳筵席、若限閫奥。水平布其上、流若織文、響若操琴。掲跣而往、折竹掃陳葉、排腐木。可羅胡床十八九居之。交絡之流、觸激之音、皆在床下。翠羽之木、龍鱗之石、均蔭其上。
 古之人、其有樂乎此耶。後之來者、有能追余之踐履耶。得意之日、與石渠同。由渇而來者、先石渠後石澗、由百家瀬上而來者、先石澗後石渠。澗之可窮者、皆出石城村東南。其可樂者數焉。其上深山幽林逾峭險、道狭不可窮也。

(七)石澗の記
石渠の事既に窮まる。橋の西北より上りて土山(どざん)の陰(きた)に下れば、民また橋す。その水の大いさ、石渠を倍してこれを三にす。亘石(こうせき)を底と為し、両涯に達す。床(しょう)の若(ごと)く、堂の若く、筵席(えんせき)を陳(の)ぶるが若く、閫奥(こんおう)を限るが若し。水その上に平布(へいふ)し、流れは文(あや)を織るが若く、響きは琴を操るが若し。掲跣(けいせん)して往き、竹を折り陳葉(ちんよう)を掃(はら)い、腐木(ふぼく)を排す。胡床(こしょう)十八九を羅(つら)ねてこれに居(お)くべし。交絡(こうらく)の流れ、触激(しょくげき)の音、皆床下に在り。翠羽の木、龍鱗(りゅうりん)の石、均(ひとし)くその上を蔭(おお)う。
 古の人それ此(ここ)に楽しむ有るか。後の来る者、能く予の践履(せんり)を追うこと有るか。意を得るの日、石渠と同じ。渇よりして来たるもの、石渠を先にし、石澗を後にす。澗の窮むべきもの、皆石城村の東南に出ず。その間楽しむべきもの数あり。その上は深山幽林逾々(いよいよ)峭険(しょうけん)、道狭くして窮むべからざるなり。


窮まる 述べ尽した。 亘石 一枚岩。 両涯 両岸。 筵席 敷物。 閫奥 敷居で区切られた奥の座敷。 掲跣 裾をまくり、はだしになる。 陳葉 古い落ち葉。 胡床 床机。 交絡 交わり絡み合う。 触激 水が石に激しく当たる。 翠羽 かわせみの羽根。 践履  歩くこと。 峭険 ともにけわしい意。

 石渠の事は既に述べ尽した。その石渠の橋の西北よりのぼって土山の北側にくだると、住民がまた橋を架けている。その流れの多さは石渠の三倍ほどである。一枚岩を底にして両岸に届いている。腰かけの様であり、座敷のようであり、むしろを敷いたようであり、敷居で区切られた座敷のようである。水は石の上を平らに流れ、綾を織るように、水音は琴を奏でるようである。裾をからげてはだしで渡り、竹を折り落ち葉を掃き、朽木を除いた。椅子を十八九ほど並べて置ける。交わり絡み合う流れ、激しくぶつかり合う水音、皆その椅子の下にある。カワセミの羽根色の木、龍の鱗のような石が平らに上を覆っている。
 昔の人で此処で楽しんだ人が居ただろうか。後の人で私の足跡をたどる人が居るだろうか。ここを見つけて喜んだのは石渠の日と同じである。袁家渇からここに来る場合は石渠を先に見て石澗を後に見ることになる。百家瀬の上から来る場合は、石澗を先に見、石渠を後に見る石澗の見るべきものは皆石城村の東南に現れる。これらの間にも楽しむべきものが数々ある。ただその上は深い山や林がますます険しくなり、道も狭くなって入って行くことができない。

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