寡黙堂ひとりごと

詩吟と漢詩・漢文が趣味です。火曜日と木曜日が詩吟の日です花も酒も好きな無口な男です。

唐宋八家文 韓愈 争臣論四ノ四

2013-05-11 09:43:13 | 唐宋八家文
或曰、吾聞、君子不欲加諸人、而惡訐以爲直者。若吾子之論、直則直矣、無乃傷于而費於辭乎。好盡言以招人過、國武子之所以見殺於齊也。吾子其亦聞乎。
愈曰、君子居其位則思死其官、未得位則思修其辭以明其道。我將以明道也。非以爲直而加人也。且國武子不能得善人、而好盡言於亂國。是以見殺。傳曰、惟善人能受盡言。謂其聞而能改之也。子告我曰、陽子可以爲有道之士也。今雖不能及已、陽子將不得爲善人乎哉。

或るひと曰く「吾聞く、君子は諸(これ)を人に加うることを欲せずして、訐(あば)きて以って直と為す者を悪(にく)むと。吾子の論の若(ごと)きは、直は則ち直なり、乃(すなわ)ち徳を傷つけて辞を費やすこと無からんや。尽言を好みて以って人の過ちを招(あ)ぐるは、国武子の斉に殺さるる所以なり。吾子それ亦た聞けるか」と。
愈曰く「君子はその位に居れば、則ちその官に死せんことを思い、未だ位を得ざれば、その辞を修めて以ってその道を明らかにせんことを思う。我は将(まさ)に以って道を明らかにせんとするなり。以って直と為して人に加うるに非ざるなり。
且つ国武子は善人を得ること能わずして、尽言を乱国に好む。是(ここ)を以って殺さる。伝に曰く、惟だ善人のみ能く尽言を受くと。その聞きて能くこれを改むるを謂うなり。子我に告げて曰く、陽子は以って有道の士と為すべきかと。今や及ぶ能(あた)わざるのみなりと雖も、陽子は将(は)た善人たるを得ざらんや」と。


尽言 言い尽くすこと、国語に「尽言を好みて以って人の過ちを招ぐるは怨の本なり、唯だ善人のみ能く尽言を受く」とある。 国武子 春秋時代の斉の大夫、遠慮ない発言のため殺された。 吾子 あなた。 

ある人が言った「私はこう聞いたことがある『君子は人を攻撃することを好まないし、人の悪事をあばいて自分を直言の士とする者を憎む』と。あなたの論はなるほど直であるが、自身の徳を傷つけてまで言いすぎるのではありませんか。言いたいことを言って人の過ちをあげつらうのは、春秋の時代国武子が斉人に殺された所以ではありませんか。あなたはそのことを聞いていないのですか」
私は「君子は官職にあるときは、その職に命をかけようと思い、まだ官職についていなければ言論を深めてその道理を明らかにしようと思うのである。私も言論によって道理を明らかにしようとしているのであって、決して直言をもって人を攻撃しているのでは無い。また国武子は善人を得ることができないで、言いたいことを言った、それも国が乱れているときにだ。そのため殺されたのだ。国語の伝に『惟だ善人だけが尽言を受け入れる』と。これは善人だけが自分の過ちを改めることができるといったのである。あなたは私に『陽城は道徳を身につけた人物と言えるか』と聞いたことがある。私はこのように答える、今はまだとても達してはいないが、陽城は善人であるということはできよう」


韓愈二十五歳の作。或る人を登場させてそれに反論する形をとる。易経・書経・論語・孟子などの古典を引用して論旨に重みをくわえているが、少し強引に誘導しているようにも思える。

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1 コメント

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Unknown (崎門学徒)
2015-03-05 17:40:09
参考になりました。欧陽脩も期待しています。
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