五鳳元年、殺左馮翊韓延壽。延壽爲吏、好古教化。由潁川太守、入爲馮翊。民有昆弟相訟。延壽閉閤思過。訟者各悔、不復爭。郡中翕然相敕。恩信周徧、莫復有詞訟。民吏推其至誠、不忍欺紿。至是坐事棄市。百姓莫不流涕。
五鳳元年、左馮翊(さひょうよく) 韓延壽を殺す。延壽、吏となり、いにしえの教化を好む。潁川(えいせん)の太守より、入って馮翊となる。民に昆弟(こんてい)相訟うるもの有り。延壽、閤(こう)を閉じて過ちを思う。訴うる者、各々悔い、復た争わず。郡中翕然(きゅうぜん)として相敕(ちょくれい)す。恩信周徧(おんしんしゅうへん)にして、復た詞訟(ししょう)有ること莫(な)し。民吏、其の至誠を推(お)し、欺紿(きたい)するに忍びず。是(ここ)に至って、事に坐して棄市(きし)せらる。百姓(ひゃくせい) 流涕(りゅうてい)せざるは莫し。
五鳳元年(前57年)に左馮翊(さひょうよく) 韓延壽が殺された。延壽は官吏となってから、古の聖人が民を教化したやり方を踏襲したいと考えていた。潁川郡の太守から朝廷に入って左馮翊の長官になった。その民で兄弟が互いに訴え出た者があった。延壽は部屋に閉じこもり、自分に落度があったのではないかと思い悩んだ。訴えでた兄弟は互いに後悔して、二度と争わなくなった。郡中の民は相いましめ、励ましあった。延壽の恩情と信望はあまねく行きわたって、訴えを起こすこともなくなった。民も役人も延壽の至誠にうたれ、他人を騙すことをしなくなった。ところがこのたび、ある事件に連坐して死罪になり、市中にさらされた。これを見た市民は皆涙を流した。
昆弟 兄弟。 閤 小窓。 翕然 集まるさま。 敕 いましめ励ます。
欺紿 欺くこと。
五鳳元年、左馮翊(さひょうよく) 韓延壽を殺す。延壽、吏となり、いにしえの教化を好む。潁川(えいせん)の太守より、入って馮翊となる。民に昆弟(こんてい)相訟うるもの有り。延壽、閤(こう)を閉じて過ちを思う。訴うる者、各々悔い、復た争わず。郡中翕然(きゅうぜん)として相敕(ちょくれい)す。恩信周徧(おんしんしゅうへん)にして、復た詞訟(ししょう)有ること莫(な)し。民吏、其の至誠を推(お)し、欺紿(きたい)するに忍びず。是(ここ)に至って、事に坐して棄市(きし)せらる。百姓(ひゃくせい) 流涕(りゅうてい)せざるは莫し。
五鳳元年(前57年)に左馮翊(さひょうよく) 韓延壽が殺された。延壽は官吏となってから、古の聖人が民を教化したやり方を踏襲したいと考えていた。潁川郡の太守から朝廷に入って左馮翊の長官になった。その民で兄弟が互いに訴え出た者があった。延壽は部屋に閉じこもり、自分に落度があったのではないかと思い悩んだ。訴えでた兄弟は互いに後悔して、二度と争わなくなった。郡中の民は相いましめ、励ましあった。延壽の恩情と信望はあまねく行きわたって、訴えを起こすこともなくなった。民も役人も延壽の至誠にうたれ、他人を騙すことをしなくなった。ところがこのたび、ある事件に連坐して死罪になり、市中にさらされた。これを見た市民は皆涙を流した。
昆弟 兄弟。 閤 小窓。 翕然 集まるさま。 敕 いましめ励ます。
欺紿 欺くこと。