ここ数日、本ブログ記事に対するコメントで、総務省の電波政策に関する内容をいただいております。私自身、過去に電波に関する事業に携わっていた関係もあり、議論するのは全く構わないと思っております。ただし、当該記事は、元々南京大虐殺に関する議論を巡る内容(「丁寧に議論するための分量」参照)であり、コメントが本来の論点からかけ離れてしまったため、あらためて、ここで整理をさせていただくことにしました。
いただいているコメントは、以下の通りです。
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「総務省へ」
ウィルコムを企業再生支援機構という半官半民族の仕組みを使って、救済し、何故ZTEとファーウェイに次世代通信システムLTETDDをやらせるのか。説明せよ。いい加減にしろよ。
「総務省の中国ベンダ育成」
許せないのは、総務省がPHSを失敗した事ではない。勝敗は兵家の常。関係者が責任を取ればいい。
問題は、総務省がPHSの失敗隠すために、800MHz電波割当を餌にソフトバンクにウィルコム救済を依頼をした事だ。
結果、ソフトバンクは企業再生支援機構が支援を乗り出す事を前提に、2.5GHz帯を利用して、LTE TDDシステムの導入を中国ベンダ2社を中心に検討してる。日本勢は入っていない。総務省は本件把握しているのか?
LTEはWCDMAで失敗した日本にとって、生命線だろう。TDSCDMAは北京オリンピックで失敗が明らかになった。中国勢はLTE参入の巻き返しのために、日本市場での参入をウィルコムを使って仕掛けてきている。
何故、国の税金を投入して創られた産業再生支援機構を使って、中国通信産業の育成に戦略的に手を貸し、NECや富士通潰しを、総務省が手を貸すのか。日本の国益を考える官僚の仕事だろ。いい加減にしろよ。
「審議会制度を守れ」
ウィルコムに割当された2.5GHz帯は、元々、総務省が第三世代移動通信方式の拡張バンドとして、アジア全体の取りまとめに取り組んできた。しかし、米国インテル社のWIMAX技術普及の流れに屈して、敢えて同周波数帯は移動通信技術を対象から外した。
総務省はウィルコムが保有する2.5GHzを電波返上せずにLTE TDD方式での利用を認めてはならない。
LTE TDDは3GPP方式であるため、技術的条件で定められていない。もしウィルコムがLTE TDDを利用するならば、ウィルコムは、一旦、電波を返上し、新たに電波割当の審議会プロセスを経なければならない。最低1年は必要である。
そもそも報道の通り、ウィルコムを2社に分離して、電波を保有する事業を売却するのは、電波の転売を認めるのと同じである。一体、何の為の審議会だったのか。
審議会制度は公明正大なプロセスである。中国の利権屋に屈して、形骸化させるな。
今、総務省の良心が問われている。
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上記のご意見に関して、私自身、実情がどのようになっていて、それを総務省がどこまで把握しており、またどうしようとしているのか、全く情報を持ち合わせておりません。したがって、これらに対する具体的なコメントを返すのは難しいだろうと思っております。
ただ一点、2.5GHz帯の扱いについては、当時、私も多少、関わっていたので分かります。ご指摘の通り、2.5GHz帯の技術的条件の策定は、当初Wi-Max一色で、かろうじて次世代PHS等が滑り込んだ状況でした。この時点で、3GPPのような移動体通信方式は、徹底的に排除されたのを覚えています。これは、私も関わっていたことで、最終的に3GPP等の移動体通信方式については、今後の課題という記述を入れ込むのがやっとだったと記憶しています。
非常に基本的なことですが、周波数帯の割当は、当該周波数帯の技術的条件が策定した後、それを踏まえて事業者を募るという順序になっています。したがって、周波数帯の割当に名乗りを上げる事業者は、その技術的条件を確認した上で、応募の是非を決めることになります。ご指摘のように、もしその前提たる技術的条件が改定(同一技術方式のバージョンが上がった等の次元ではなく、全く新しい技術方式を導入するというレベルで改定)されるのであれば、その新しい条件の下、あらためて事業者の募集を行なうというのは、至極、当然の流れであろうと考えます。当たり前のことながら、このプロセスの中で、ウィルコムは電波を返上しなければなりません。
しかし仮に、このプロセスを経ずに、総務省がウィルコムに2.5GHz帯の継続保持を認めながら、技術的条件を改定するということであれば、それは同省の責任者、担当者の方が、「国策」として、そうした対応が必要であると判断したと見るべきでしょう。この場合、それは日本国政府としての判断であり、そうした裁量を否定することはできないと考えます。ただし、そうした政策実行には、必ず責任が伴います。したがって、このような措置を取ることの意義や重要性については、その責任者や担当者の方々が、必ず説明責任を求められることになるでしょうし、私たち国民は、その責任者、担当者とは誰なのかを注視する必要があるのだろうと考えます。
その中で、ご指摘のような中国ベンダーに関する問題があった場合には、今後、それなりの説明があるのかもしれません。
ただ、私個人としては、中国ベンダー云々もさることながら、そこまでウィルコムに肩入れしておいて、万が一、ウィルコムの2.5GHz帯事業がおかしなことになったら、それこそ大変なことになるのではないかという気がしています。ウィルコムを支援すると報道されているソフトバンクについては、その経営状態の脆さに関して、いろいろな情報が飛び交っています。仮に、そうしうた状況を把握しているにも関わらず、見通しの甘い意思決定をしておいて、後々になって、その損害を国民に押し付けるようなことがあったとしたら、それは絶対に許されません。もちろん、その場合の損害は到底一個人で負えるようなものではありませんので、そうしたことを十分に肝に銘じつつ、同省の責任者、担当者の方には、文字通り、命を懸けてお仕事に臨んでいただきたいと思うのです(「命を張る仕事」参照)。
そういう意味を含めて、ウィルコム関係の問題を裁く同省の責任者、担当者の方々の立ち振る舞いには、一人の国民として、今後も注意深く見守っていきたいと思います。
既にPHSは中国の事業者は廃止を決めている。中国は統制経済として、固定通信網の整備を計画し、この網の整備が間に合わないから、代替としてPHSの普及に務めていたに過ぎない。携帯電話はTD-SCDMA/LTETDDが本命なのだから、PHSに市場がないのは明らかだ。
PHS430万ユーザーを守るといっても、全体5%もいないではないか。すぐに「病院で困ることになる」と口にするが、単に内線電話で使っているだけで、これは自営網で、外線電話はおまけだ。総務省が使っているのだから、メーカーが、自営網として売って、外線はおまけでつけるという営業をしてるというのは、知ってるだろう。
挙句の果てに、税金投入して、審議会制度を形骸化させ、中国ベンダを育成するという政策は、どんなに総務省に好意的に思おうと努力してもできない。公僕でありながら、売国奴という批判を浴びて、反論できるのか。
ウィルコムへの天下りの枠が減るから、その分、ソフトバンクに枠を作ってもらう取引をしたのか。
本件について、中国ベンダーとの関係性は、私自身、情報を持ち合わせていないため何とも言えません。ただ、ひとつ言うならば、中国ベンダー云々もさることながら、それ以上に日本のメーカーがきちんと頑張れていないことが残念です。
http://it.nikkei.co.jp/business/column/natsuno.aspx?n=MMIT33000021102008&cp=2
具体的には、LTEに関しては、既に日本勢の負けが決まっている。NECと富士通は、WCDMAの製品でHSPA+やデュアルキャリア対応していない。(中国方式のLTE TDDはもちろんのこと)理由はドコモが採用していないからだ。海外のトレンドといつもドコモがずれた技術戦略を立てるので、他通信事業者の技術検討の段階で、検討の土台にすら乗れない。
下記のNECのコメント「投資額をトータルで見れば、LTEに一気に進む方が安くなるはずだ。」は、机上の空論で、1.5GHz帯、800・900MHz帯でLTEを使わないでHSPA+で勝負してくるソフトバンク、イーモバイルの戦略に日本勢がついて来れないのは、その証左である。 http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=MMIT0f000016022010&landing=Next
総務省は、日本勢がLTEでも既に失敗が決まっている事が分かっているのか。LTEの海外普及に力を入れずに、世界で相手にされていないワンセグ普及を進めているのは、LTEの失敗をごまかしたいからか。
いい加減、失敗を認めて、謙虚な姿勢で産業育成にもっと真剣に取り組んで欲しい。
日本メーカーの責任論、たしかに夏野氏の口から聞いた時はビックリです。他の場所でも、日本企業云々の話を聞いたことありますが、「それでご自分は・・・?」と突っ込みたくなることは、たしかにありますね(笑)。
総務省の産業育成については、元々、私自身、期待していないし、個人的にはテレビ関連に力を入れているあたりにセンスを感じないということもあり、あまり真面目にウォッチしていないため、正直、ほとんど分かりません。
当時のNTTドコモの役員は、お咎めなし、総務省の役人は、いつも通り、ドコモへ天下り。
挙句の果てに夏野氏の先の暴言へと繋がり、何と慶応SFCで教鞭を取っているという。彼が学生に何を教える事があるのだろう。
そんな携帯電話会社の3社の営業利益合算は2兆円。ドコモの営業利益は20%。電波という公共の資産を使った免許事業としては、ぼろ儲けではないか。しかし株価はEBITDA倍率3倍を割り、世界で最も安い携帯電話会社になってる。
総務省は、既得権益の事業者にぼろ儲けさせ、そこへ役員レベルで、天下りをして、しかし経営は下手糞で、株価は低迷するという悪循環を作り出している。挙句の果てに、国策でウィルコムまで倒産させ、税金を使って中国ベンダを育成しようとする。一体、中央官僚とは、どこまで厚顔無恥になのか。
天下りが悪とは単純には思わないが、もっと国益を考えて、真面目に仕事をしてほしい。
いくつかポイントがありますが、まず夏野氏に関しては、もはや言うことはありません。私自身、慶應の出身であり、また私の恩師が学部長を務めたSFCのレベルとしては、少々、残念な気がしています。しかし今は、そこが今日の慶應の限界と受け入れるほかないかもしれません。
ドコモと総務省の問題については、当事者たちの方々からすると、旧来型の産業と政治が、それでうまく回ってきたから、そのやり方を踏襲したというくらいの感覚ではないかと思います。ただ、おっしゃる通り、そうした手法は、既に限界を迎えており、これまでのようにキレイな結果は出てこないだろうと考えます。私としては、後々、きっちり結果責任を取らせることが重要であろうと考えます。
総務省の電波行政は、1.周波数帯で利用される技術的条件を策定し、2.同周波数帯を利用する事業者を選定する、3.認可を受けた事業者はネットワークの開設計画を総務省に提出し、認可を受けるという3つのプロセスで運用されている。
2.5GHz帯の技術的条件は、下記の4つ。
1.WIMAX(インテルが提唱している技術)
2.次世代PHS(京セラが提唱している技術)
3.UMB(クアルコムが提唱している技術)
4.i-Burst(京セラが提唱している技術)
ウィルコムは2.次世代PHS技術を採用して、2.5GHz帯事業者免許を取得した。
現在、ソフトバンクが検討しているLTE TDDという技術は、技術的条件に含まれていない。
以前、セルラー技術であるLTE TDも技術的条件に含めようという働きかけがあったが、総務省の事務局の強い反対で敢えて技術的条件に含まれなかった。
本来は一旦電波を返上し、再度、同周波数帯の利用用途、技術的条件を策定し、事業者の募集という一連の流れとるべきだ。
ソフトバンクのやり方は、次世代PHSのまま、事業者計画を策定し、総務省の認定を受ける。その際にLTE TD方式には触れない。
当初、次世代PHSの基地局は京セラのみが製造しできるので、現在稼動している300局に加えて、せいぜい300局程度を追加して、展開する。その間に、次世代PHSAdvanced,ないし次世代PHS2といった次の技術方式を策定したいという旨を総務省に申し入れをして、技術的条件の改定・高度化の検討を総務省で行う。この中で討議されるのが、LTE TDである。
LTEは日本・欧州・米国が採用しているFDD方式と中国が採用しているTDD方式に分かれる。
エリクソン、ノキアシーメンス、アルカテルルーセントといったグローバルベンダ、ファーウェイ、ZTEといった中国ベンダは、FDD方式もTDD方式の双方もサポートしている。しかし、NEC、富士通といった日本メーカーは体力の関係上、LTE FDD方式しかサポートしていない。
ここでのポイントは、中身はLTE TDDだが、名称はあくまで高度化次世代PHSとか、次世代PHS2とか名称はPHSと呼び続ける事である。技術の検討は、民間団体であるXGPフォーラム(http://www.xgpforum.com/ja/index.php)で検討して、技術を持ち込むので、中身はLTEでも名称がPHSなら、総務省もPHSだと認めざるを得ない。
結果として、ソフトバンクは次世代PHSの周波数帯を使って、事実上、LTEを採用することができる論理構造である。
法的には問題はないが、審議会制度は事実上、これで形骸化した。戦後の代表的政治システムである審議会制度が破綻した最初の事例となる。
XGPを最初からやらない計画の事業者にXGPの免許を認めるのであれば、何のために審議会制度があるのか、総務省の人に聞いてみたい。
なるほど、そういうロジックですか。酷いものですねぇ・・・。
最後の挨拶で、増子副大臣は「オールジャパン体制で日本の産業経済、エネルギーなどあらゆる分野をリードしていきたい」と挨拶した。
その中の資料で「日本の産業を巡る現状と課題」というレポートで、当然、通信産業に関する指摘もあった。P31で携帯電話産業で海外勢が強いのは、インフラが「ブラックボックス化しているからだ」、という指摘がある。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225a06j.pdf
経産省は、インフラが3GPP、3GPP2という標準化団体で完全にオープンになっているという事を知らない。そして海外勢にノキア・モトローラとあるが、インフラでWCDMA基地局は、モトローラは、世界で一件も受注できていない事を知らないし(ファーウェイからのOEM)、ノキアとシーメンスが合併して、ノキア・シーメンスにな
っている事も知らない。世界に出る前に最初から負けてる。事前レビューで、総務省が入れば、すぐに修正入るのに。
本当に必要なのは、産業を育成するプランを通信サービスを管轄する総務省と、通信メーカーを管轄する経産省が、共同でプランを検討することだろう。
「ブラックボックス化」してるのは、総務省と経産省がバラバラで仕事するからだ。
「有識者」集めて、審議会で予算とって、また補助金ばらまいて終わりか。
オールジャパン体制という前に、オール霞ヶ関になれよ。おこがましい。
まぁ、そうは言っても、そういう今の社会では、そういう役割分担ですから、仕方がないですね・・・。