常識について思うこと

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仕事を選ぶ大切さ

2009年06月29日 | 会社

自分の会社を立ち上げて、まだ一年も経っておりません。資金が潤沢にあるわけでもなく、仕事を選ぶような余裕があるはずもないのですが、それでも仕事は選んでいかなければならないと思います。

仕事というのは、他人の役に立つためにするものであり、報酬は、単にその対価として支払われるものです(「報酬は感謝・感動の証」参照)。当たり前すぎて、何のことか分からないという方もいらっしゃるかもしれませんが、重要なポイントは、「他人の役に立つこと」が仕事の目的であり、報酬は、あくまでもその付随物に過ぎないということです。もちろん、こうした見方が全てではありませんが、少なくとも、私の場合はそのように考えています(「道具の目的化の危険性」参照)。

例えば、コンサルティングというのは、困っている方を助ける仕事です。助けるという意味で、コンサルティングは、他人の役に立ってなんぼといった仕事なのだろうと思います。

ただし、あくまでも、コンサルティングで主体となるべきは、クライアントの側であり、何とかするためには、クライアントの「何とかしたい」という強い意思がなければ、助けることができません。特に、事が重大であればあるほど、私としても、相当真剣に取り組んでいかなければなりませんし、クライアントの側にも、それをきちんと認識していただいた上で、こちらの言を重く受け止めていただく必要があります。

ところが、「コンサルティング=助けてくれるサービス」という意識ばかりが先行すると、本来あるべき、クライアント側の「何とかしたい」という意思は、「何とかしてくれるはず」という過度な期待にすり替わってしまいます。こうなると、どんなに優秀なコンサルタントであっても、そのクライアントを助けてあげることができなくなってしまうのです。

仮に、こうしたクライアントの仕事を受けてしまうと、結果が出ないばかりか、その結果が出ないなか、延々とうまくいかせるための方策を打ち続けなければなりません。こうなってしまうと、コンサルタントは時間と労力を浪費するだけでなく、クライアントの「何とかしてくれるはず」という過度な期待が、反感や疑心となって、跳ね返ってくるという負の結果まで受け止めなければならなくなります。延々と時間と労力を費やしながら、クライアントから悪く思われたり、言われたりするといったことでは、まったく割が合いません。また、それはお互いのためにも良くありません。

もちろん、そうしたクライアントでも、一度仕事としてお受けすれば、まずは報酬をいただけるので、資金的にはそれなりに潤うことになります。

それは別の言い方をすれば、一所懸命やっているにもかかわらず、クライアントからいろいろと不満を言われたり、ダメ出しをされたりする仕事をしている人には、それなりの理由があるかもしれないということです。つまり、そうした環境にあるというのは、その仕事におけるクライアント側の問題もさることながら、それと引き換えに、ひとまずサービスを買っていただくという意味で、資金的には潤うことができたという自分側のメリットもあったはずだろうということです。このように考えると、仕事上で、たとえ愚痴をこぼすような状況があったとしても、そこに至るまでの間、自分の側に、それ相応の「うま味」があったことも忘れてはならないということになります。

こうした仕事についての考え方は、何も「コンサルティング業」だけに限ったことではありません。例えば、一般的なサラリーマンで、会社勤めをされているとして、直接、顧客に触れていなくても、その人の仕事は、より直接的には部署や会社など、非常に近い周囲の人々の役に立つための仕事をしているわけでもあり、そういう意味で、直属の上司や部下が、その人のクライアントと考えることができるはずです。経営トップの地位にある人であれば、その会社の株主が、直接的なクライアントという見方ができます。政治家であれば、有権者がクライアントということになるでしょう。

そうしたクライアントが、真剣に「何とかして欲しい」、「何とかしたい」と願っているかどうかは、後の仕事の成否において、大変重要な問題です。そして一旦、そのクライアント(あるいはその組織や仕組み)から報酬を受け取って、仕事を始めてしまったら、それ相応の結果を出す責任が生じることだけは、極めて明白なのです。

私は、こうした問題意識のなかで、とにかくスタートの時点で、誤った始め方をしないように細心の注意を払いたいと考えています。

お金、報酬は大切です。報酬を得ることなく、ただ一方的に奉仕をし続けるというのは、ある意味で不健全であるとも言えるでしょう。しかし、お金や報酬を目的化させてしまって(お金に魂を売ってしまって)は、後々になって、大きな代償を払うことになるのではないかとも思うのです。仕事を進めてしまってから、愚痴をこぼすような状況に陥るくらいなら、最初から、その仕事をお断りする方が双方のためなのではないかと考えます。「うま味」も大切ですが、その結果として、仕事がうまく回らなくなるようでは本末転倒なのです。

そうした意味で、私自身は、事の大小を問わず、きちんと仕事やクライアントを選んでいかなければならないと思います。またそれが、数十年後の大きな枠組み作りへと繋がっていくことを想定すればするほど、その選定作業は、極めて重要な意味を持つのではないかと考えます。

《おまけ》
仕事を選ぶ、クライアントを選ぶというのは、選ばなかった対象を切り捨てるということではありません。人生においては、それぞれ巡り合わせや適切なタイミングがあるため、その時々の状況に応じて、判断をしていくという意味にほかなりません。ある時点において、距離を置かざるを得ない人々に対しても、常に未来に向けて門戸は開かれているのであり、その人々が「真剣に何とかしたい」と思うようになった瞬間、その関係は、全く別のステージに移行していくでしょう。その際には、あらためて、一緒に仕事をさせていただく、あるいはクライアントとしてお付き合いいただくようなかたちになっていくのではないかと考えます。

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