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資本主義に拠らぬ資本戦略

2009年07月12日 | 会社

会社は資本主義のなかで成立します。資本を出してくれる人がいなければ、会社は成り立たないわけで、そういう意味で「資本家は偉い」と言うことができると思います。ただ、それだけでもないでしょう。

会社については、いろいろな考え方があります。株主としての立場、経営者としての立場、従業員としての立場、顧客としての立場、それぞれの立場からいろいろな見方ができるのだろうと思いますので、それらを否定するつもりはありません。ただ、私としては、小さいながらも自分の会社を持っているという立場から、以下のように考えています。

会社は資本主義のなかにありながら、けっして、そのルールのなかだけで成立するものではありません。会社は、顧客があって成立するのであり、その顧客に選ばれるという意味では、資本主義ではなく、市場主義のなかで成り立つと言えるでしょう。さらに会社は、そうした資本主義と市場主義を繋ぐ経営者や従業員があって、はじめて機能します。そういう観点からすれば、会社は経営者と従業員によって、成り立っていると言うこともできると思います。

会社が資本主義のなかで成立するということは、ひとつの側面として正しく、またそうした意味で、「資本家が偉い」という言葉は分からなくもありません。しかし、日常的に会社を動かしていくのは、経営者であり、従業員です。そう考えると、会社というのは資本家と経営者・従業員が両輪のようなものであり、互いにリスペクトできるような関係を構築していくことが、会社を動かしていく上で、極めて重要なのではないかと思います(「会社は誰のものか」参照)。

また、会社が行う事業は金儲けにはなり得ますが、それが目的化してしまったような出資を受けることにも、私自身、少なからぬ違和感を覚えます。

経営者は、資本家と顧客の間を繋ぐ役割を果たしていかなければなりません。そのなかで、金儲けばかりを優先した出資を受けてしまうと、経営者は、顧客のためというよりも、資本家に金を儲けさせる仕事を請け負うことになります。市場主義的な考え方からすれば、良いサービスを開発すれば、きちんと市場から評価され、その成果を資本家に還元できることにはなりますが、それは、あくまでも市場において、貢献しようとしたことの結果であるということが大切です。

私は今、現実世界で起こっていることは、顧客を置き去りにした会社経営の蔓延であると見ています。つまり、非常に多くの会社が、資本主義的な考え方に偏重してしまい、顧客(広く言えば消費者全体=社会)を喜ばせることのできる商品やサービスが減少し、結果として、付加価値や産業全体の活力が低下してきているという見方です。

翻って、このような資本主義的な観点から、ベンチャーを見ると、一般的にベンチャーは、頭を下げて資本家を回りながら、お金を集めるものというものという考え方が強いように思います。少なくとも、私の過去の経験においては、違和感はありながらも、ベンチャーとはそういうものであるということを認識せざるを得ませんでした。それはそれで、ひとつの見方ですし、また過去の自分がそうせざるを得なかった点、自己反省を含めて、いろいろと思うところがあります。ひとつには、私自身、経営者として、「資本家との両輪関係」を築けるような、諸々の準備ができていなかったということでしょう。

今は、だいぶ状況が変わりました。

まず、事業の位置付けを明確にし、純粋にそれを実行するための態勢をとっています。このことは非常に重要で、私なりに過去の経験から学んだことでもありますが、内なる「意思」を、外なる「態勢」と一致させていることで、大きな余裕が生まれるのです。もう少し別の表現をするならば、時簡に追われることがなくなり、「時間を味方にする」ことができるようになるということです(「時間との付き合い方」参照)。逆に、背伸びをして、例えば中途半端に、他人のお金を入れて「態勢」を組んでしまうと、そのお金が尽きる前に、次のフェーズに移行する責任を負うことになり、結果として時間に追われてしまうようになります。

「意思」と「態勢」の間に、無理を起こさせなければ、特段、資本家がいないなら、いないなりの展開も可能となり、それによって余裕が生まれます。この余裕によって、場合によっては、自らが経営者を兼ねた資本家となるよう、ただ時間をかければ良いという発想も生まれます。また、たとえ資本家と話すとしても、資本主義的思考に偏重せず、きちんと事業の本質(「事業の本質と存在価値」参照)を理解し、また尊重してくれる人とだけ会話をすればよいことになり、無駄な時間を過ごすこともなくなります。

大したことではありませんが、そういう意味で、私の会社における資本戦略の方針は、「資本主義に偏重した考え方に拠らぬこと」なのでした。

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