常識について思うこと

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メディアの融合現象

2008年02月03日 | 産業

コンテンツにはいろいろなカテゴリーがあると思います。ゲーム、アニメ、コミック、音楽、カラオケ、占い、クイズ・・・。何をどれに分類するかについて、曖昧なものもありますが、今まではメディアが何であるかによって、ある程度明確に、それらを分類できていたのではないかと思います。例えばゲームはゲーム機で、アニメはビデオで、コミックは漫画本として、音楽はCDでそれぞれ楽しむということで、どのメディアを通じて楽しんでいるかを見ることにより、ほとんど問題なくカテゴリーの分類ができていたのではないかと思うのです。ところが最近のデジタル化の進展により、ほとんどのコンテンツがPCで視聴できるようになり、状況は大きく変わりつつあります。さらに、コンテンツの中身も変わってきており、直感的な意味でも、コンテンツの分類は非常に難しくなってきています。

例えば、電子コミックは漫画本をデジタル化したものですが、これは相変わらず「コミック」というカテゴリーに分類されるべきものかということです。従来のコミックコンテンツをデジタル化した場合、それに若干の加工をしていくようなことが起こります。具体的には白黒のものをカラーにするといったことから始まり、さらに突っ込んでいくと、ズームやパンを使って多少動きを出してみたり、BGMや効果音でシーンを盛り上げてみたり、拳を上げる程度の簡単な動作については、腕を一本付け足して動画っぽく見せたりといった具合です。あるコミックでは、声優を使って台詞を読ませるようなことも試みられているようです。こうなるとコミックというよりも、直感的にはアニメに近い形態になってきます。そして、こうした電子コミックをPCで見るということになると、これらを何に分類するべきかが、ますます分からなくなるのです。

ゲームについても同じことが言えます。最近はCGやアニメーションを駆使したゲームが多く出されており、それらは放っておくと、いわゆる「アニメ」のような作りになっています。所々で、ゲーム性を持たせて、ユーザーが操作を行っていくことがあっても、それ全体の流れは、いわゆる従来の「アニメ」のようなコンテンツの場合、これを純粋にゲームと分類するべきか、アニメにカテゴライズするべきなのかは分かりません。

メディアミックスという言葉があります。私はこの言葉を「組み合わせ」という概念で理解するべきだと思います。従来のアニメは、コミックを原作として出されているものが主流です。これがいわゆるメディアミックスで、それがコミックだけではなく、ラジオから派生したり、ゲームから派生したりということで、アニメが誕生していたわけです。しかしこの場合、アニメは別のメディアから派生はするものの、アニメはアニメとして独立したかたちで創作するという行為が起こっています。つまりコミックとアニメは、メディアミックスされながらも、それぞれが独立したコンテンツとして存在しており、単に別々のものが組み合わされたと理解するべきだろうということです。

しかし、最近ではそれらが融合してしまっているのです。例えば、上記の例で言えば、コミックは、デジタル技術によって手を加えられることで、アニメそのものに化けているのです。ゲームは、単にゲームとしてではなく、ひとつのアニメとしても成立してしまっているのです。ここには境界線がなく、ひとつの作品がコミックであり、アニメであり、ゲームであるという現象が起こりつつあるという意味で、従来のように、本質的には組み合わせである「メディアミックス」とは、まったく異なると考えるべきだと思います。

こうした現象は、「メディアミックス」というよりも、「メディアフュージョン(媒体融合)」という表現の方が相応しいのではないかと考えます。そして、こうした流れはデジタル化技術の進展と普及により、今後急速に拡大していくものと思われます。とくに、これまでのように一部の人々のみが創作行為を行うような状況でなくなり、多くのアマチュアが創作活動を行うようになりつつあるなか、こうした融合現象は爆発的に拡大するであろうことは予見しなければなりません。

ここで大変気になるのは、著作権の問題です。従来の著作権は、メディア毎の設定がなされているため、「メディアミックス」には的確に対応できても、「メディアフュージョン」に対応するのは、非常に難しいだろうと思います。

しかし私は、こうしたメディアの融合現象は、時代の必然であり、止められない流れであると考えています。そして、こうした大きな流れを積極的に掴んで、産業の活力に変えていくことこそが、活気ある社会作りに繋がっていくのではないかと思います。そういう意味で、国家や業界の責任ある立場にいらっしゃる方々には、このような動きをいかに将来のコンテンツ産業の活性化に繋げるかということについて、積極的に検討していただきたいですし、また知恵を絞っていただきたいと思うのです。

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