満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

NANIWA AMBIENTオムニバス音源2枚組CDR

2020-12-24 | 新規投稿

OKAHASHI NOBUHIRO氏から何気に手渡されたCDRは氏の主宰するNANIWA AMBIENTのつい先月の収録盤であった。NANIWA AMBIENTは私にとっても馴染みのある定期イベントで、これまで幾度となく出演させてもらっている。Loud Rockが主体の心斎橋HOKAGEで月一回のペースで継続されるいわば名物イベントと言ってもいいだろう。

この2枚組CDRは主宰者OKAHASHI NOBUHIROの他、毛利桂、増子真二、JUNYA HIRANOの4人の演奏が、各30分以上のフル・レコーディングされた聴き応えのある‘作品’となっている。パッケージの裏に連番が印字され、OKAHASHI氏のこれまではライブだけを続けてきた活動を今後は録音、作品化というものを意識した発想の転換を感じさせる試みの一つとなっている。それはNANIWA AMBIENTを一種のムーブメントに育てていこうというOKAHASHI氏の目論見の端緒となる‘一つの形’としてオブジェ化したものに違いない。

 

内容は充実を極めたもので、毛利桂のダーク・インダストリアル(恐らくライブでは点滅するライティングによるリズムへの同機を行っていたであろう)、増子真二の無調のギター・オーケストレーションの美しさ、OKAHASHI NOBUHIROのシンプルなミニマリズム的サイレント・アンビエントは他の3人の出演者の音響の強度を見計らったように静的な調べを奏でている事に納得。

そして私が最も感じ入ったのはJUNYA HIRANOのトラックであり、その41分に及ぶ大作に新鮮な驚きを禁じ得なかった。HIRANO氏は先鋭的なエレクトロ系ミュージックが展開されるenvironment og zero-gaugeのオーナーであり、同スペースを創始した故・阿木譲氏の後継的なDJ,サウンドクリエイトを行っている。このNANIWA AMBIENTオムニバスに収録されたトラックの制作過程を私は知る由もないが、その起承転結の流れに興味が湧く。抽象的な小音響のプロローグで始まり、不規則なビート(ダンスとしても機能する)に続く壮大な全音符によるクライマックス、そして最後の方にタンジェリン・ドリーム(と言うかピ-ター・バウマン)を連想させる高速フレーズの反復を繰り出すあたり、単に演者の感覚の赴くままのムード先行の環境音ではなく、聴き手の意識の中に入っていこうとするレベルの表現を感じさせる。

尤もこう言ったある種の物語性は私の好むところであり、家で反復鑑賞するに足りる条件を満たしているという意味で、今回のOKAHASHI氏によるCDRという作品化は実に意義ある試みであると感じた。

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