思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『赤と青とエスキース』

2024-03-08 13:28:59 | 日記
『赤と青とエスキース』
青山美智子

最後まで読むと、あれとあれがこう繋がってたんだな〜とわかる、
良い感じの連作短編集。

ジャック・ジャクソンの描いた「エスキース」という絵が
すべてのお話しに登場しているのも、
「どうやって繋がるのかな?」というフックになっていて良い。

漫画家の師弟対談が良かった。

タイトルが
「赤と青のエスキース」ではなく
「赤と青とエスキース」なんですよね。
これ、最後まで読むと、「と」で良いんだな、と思います。

2022年の本屋大賞2位。
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『ルネサンスの女たち』

2024-03-07 16:00:37 | 日記
『ルネサンスの女たち』
塩野七生

塩野先生のデビュー作です。
初版は1969年、執筆時期は29歳から30歳。
ほげ〜。
(自分がその頃何してたかは考えたくないので考えない)

それはそれとして。
1500年前後、ルネサンス期のイタリア事情を
4人の女性の人生を通じて覗くことができる一冊。

その頃のイタリアは、小さな公領や共和国の集合体であり
「国」ではないわけです。
結婚やら戦争やら教皇の代替わりやらで、
家の存続も国の存続もころころ変わる時代。
やんごとない家に生まれるのも大変なのである。

そんな苦労の絶えない時代を象徴する4名の女性。
本の収録順は前後しますが、生きた年代順で、

カテリーナ・コルネール(1454-1510)
ヴェネツィアがキプロス島を支配するために
キプロス王に嫁がせた女性。
ザ・お飾り女王。お城にほぼ軟禁である。かわいそう。
ヴェネツィア共和国って、悪の組織感あるよね。
共和国市民も絶対服従!みたいな。

カテリーナ・スフォルツァ(1463-1509)
傭兵からミラノ王になったスフォルツァ家の血筋。
ゆえに、めちゃ強気。しかも美人。
実子を人質にとられ投降を呼びかけられた際にスカート捲り上げて
「いくらでも産めるんじゃい!」
と啖呵切ったことで有名な人。人気悪役感あるよね。
(マキアヴェッリがフォルリ(カテリーナの領国)に出張する際、
 友人から「夫人の肖像画」を土産に頼まれたという
 当時のイタリアで有名&人気だったエピソードがある。)

イザベッラ・デステ(1474-1539)
マントヴァ公国妃。
ヴェネツィアの捕虜になった夫を取り戻すのに奮闘した人。
こちらは長男との人質交換を強気に断ったり、権謀術数系。
1527年サッコ・ディ・ローマ(ローマ大虐殺)の際に
ローマ市内にいて被害を免れるための立ち回りができた人でもある。
私だったら10回死んでる…と思える人生。
ラスボス感あるよね。

ルクレツィア・ボルジア(1480-1519)
チェーザレ・ボルジアの妹で、駒のように結婚させられた人。
悪の組織にうっかり生まれた可哀想な姫君感あるよね。
という設定の時点で絶対に幸せになれない。
かわいそう…。

というわけで、4人とも興味深い人生を送っております。
そして、生まれ変わっても絶対にその立場にはなりたくねえ!
と思える姫君でもあります。
生まれ変わるなら、平和な時代の金持ちの家の、猫がいいな。
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『シェイクスピアを楽しむために』

2024-03-06 11:11:36 | 日記
英米文学史の本を読んで、気づきました。
私、シェイクスピアを読んだことも観たこともないかも…っ!
と。
ロミジュリとか、「to be, or not to be」とか、
理解はしてないけど存在は知ってる!みたいなレベル。
なんなら、夭折した息子の名前がハムネットなのは知ってるけど、
ハムレットが喜劇か悲劇かは知らない、というレベル。
よし、なんとかしよう!

と思って読んだのがこちら。
<知っていますか>シリーズでおなじみ阿刀田高大先生の
『シェイクスピアを楽しむために』
(聖書もギリシャ神話も古事記も阿刀田先生に教わりました。
どれもこれも原典はいまだに読んでいない!)

シェイクスピアは1564年生まれ、1616年没。
「ひとごろし」「いろいろ」で覚えるそうです。
冒頭から、めっちゃ勉強になる〜!!

シェイクスピア演劇の11作品をそれぞれ章立てして、解説。
設定とストーリーだけでなく、時代背景や考察も豊かで
読んでいて楽しい。

『ハムレット』の舞台はデンマーク・エルシノアのクロンボー城。
ここ、中野京子さんの本に出た城だ!
ストルーエンセとの醜聞で王妃カロリーネが幽閉された城
進研ゼミでやったところだ!的なうれしさがありますね。

あと、『オセロー』の章での小ネタで、
肩書きは偉い順に「公・侯・伯・子・男(爵)」。
へえ〜。歴史本で「伯領」「公領」とかで争っているけど
肩書きランクを覚えておくと読書が捗りますね。

ちなみにシェイクスピアの生きた時代はエリザベス女王時代。

シェイクスピアの<史劇>と言うと14世紀〜16世紀の英国、
ランカスター朝、ヨーク朝を経て(薔薇戦争)
テューダー朝が成立するまでが舞台のものを指すそうです。
(『リア王』は古代なので<史劇>に含まれないし、
 『ジュリアス・シーザー』は英国ですらないので含まない)

<史劇>が史実かと言われると、まあ、テューダー朝に
下駄を履かせているらしく、むべなるかな。です。

あと個人的な学びですが、

罪の意識からずっと手を洗い続けて
「血が落ちない」と言う有名なモチーフ(?)は
マクベス夫人。
池井戸潤の小説『シャイロックの子供たち』でおなじみの
金貸しシャイロックは『ヴェニスの商人』。
黒澤明の『乱』は『リア王』のオマージュ。

シェイクスピアってすごいな!
そして分かりやすく解説してくれる阿刀田高さんは
本当にありがたいな!!

いつか、英語オリジナルのセリフで観劇してみたいです。
英語、ぜんぜんだけど。
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