真夏の子連れなので、炎天下をぶらぶら散歩、というわけにはいかない。海遊びのほかには、涼しい美術館や博物館にいくつか足を運んだ。他にも行きたいギャラリーがあったが、時間の余裕がなかった。
■沖縄県立博物館・美術館の博物館常設展
設立時にいろいろと揉めて、最近では「アトミック・サンシャイン」検閲事件があったハコである。巨大な建造物の中心にロビーがあり、左右に博物館と美術館が分かれている。新都心にあり、周囲はあまり魅力のないところだ。ただ、前回の訪沖時は年末年始で休み、その前は出来たばかりでオープン前、その前は首里からの移転工事中、といったわけで、随分と行きたかったところなのだ。やたら広くて疲れるので、博物館と美術館と2日間に分けて鑑賞した。
常設展は歴史、文化、考古学、自然などかなり充実している。これだけをまともに観ても足が棒になる。特に面白かったのは自然のジオラマで、やんばるの森や宮古・八重山、マングローブ域、海辺、イノーなどそれぞれ作られている。じろじろ見ると様々な生物や植物が隠れている。また琉球列島の隆起沈降の様子が把握できるギミックもあって楽しい。
ガイドブックも旧博物館時代より良いものになっている。(旧博物館には訪れることがなかったが、これだけは読んでいた。)
新ガイドブック
旧ガイドブック
■「空飛ぶ勇者たち 飛ぶを科学する」(沖縄県立博物館・美術館)
息子がポスターを見つけて行きたがったので、いの一番に入った。凧などを除いて沖縄独自の展示は少ないが、こういうのは好きである。
■「琉球絵画展」(沖縄県立博物館・美術館)
琉球王朝時代から明治期までの作品群。ほとんど知らない芸術家たちだが、やはり琉球なのだ。なかでも長嶺宗恭という画家の作品(『芭蕉の図』など)には惹かれるものがあった。また、首里城や那覇の鳥瞰図のような作品がいくつもあり、いまの様子と比べて眼で歩くことができた。
■「岡本太郎・東松照明 まなざしの向こう側」(沖縄県立博物館・美術館)
それぞれ沖縄と深くつながった外部からの訪問者だ。ただ、今回は東松照明のドライな感覚が気分的に馴染めなかった。有名な波照間の海の写真をよく見ると、縦に引っ掻き傷がいくつもある。付きかたからしてフィルムの傷ではないだろうから、森山大道のように印画紙に一期一会の作為を施しているのだろうか?
また岡本太郎の写真など所詮シロート以下のもので、今回は展示されていなかった久高島の記録などを除いてさほどの興味はない。今回そのことを再確認することになった。石垣島で生きたまま(?)の山羊に藁をかぶせて焼く場面の記録には驚愕してしまった。
■沖縄県立博物館・美術館の美術館常設展
北川民次や藤田嗣治などビッグネームの訪沖時の作品が興味深い。それを置いておくと、大嶺政寛(大嶺政敏の兄)による写実や、安谷屋正義による先鋭な半・抽象に惹かれるものがあった。
■赤嶺正則 風景画小品展(那覇市ギャラリー)
予備知識なく覗いた個展だったが、サバニや民家など同じモチーフを描いた作品群は魅力的だった。透明感があり、ベルビアのような青い光は、蒸し暑いのではなく独特の感覚がある。4号キャンバスの小品が中心に揃っているのもちょうど良い。
画家がおられて、誘われるままに茶菓子をご馳走になりながら話をした。筆は固めで力が直接伝わるようなもの、絵具はマツダやホルベインが好みということだった。透明感はホルベインの所為かもしれないねとの言。沖縄のアートシーンは抽象画が多く、それは現場に時間をとられず頭の中のイメージだけで作品を完成できて、短期間での成果が得られるからだろう、という話もあった。
たくさんお菓子までいただいてしまったので、子どもたちのおやつにできた。