Sightsong

自縄自縛日記

『LP』の「写真家 平敷兼七 追悼」特集

2010-01-06 23:20:36 | 沖縄

『LP』は、沖縄でつくられている季刊の写真誌である。創刊以来気にはしていたが、今号の特集が「写真家 平敷兼七 追悼」だというので、初めて購入した。

2008年末に銀座ニコンサロンで開かれた写真展「山羊の肺」は、ちょっと感動的だった。同年に国立近代美術館で開かれた「沖縄・プリズム1872-2008」における氏の作品の展示よりも素晴らしかったのは、言葉の力、匿名多数の記憶の力をも感じたからだろうと思った。そんな写真家が、昨年2009年に亡くなった。年末に東京で開かれた写真展には、足を運ぶことができなかった。

特集には、平敷兼七が那覇新都心開発前の「銘苅古墳群」を撮影した作品群が掲載されている。被写体は「山羊の肺」などとは違って「もの」だが、それでも「人」に対する場合と同じように、間合いの自然さ、優しさといったものを感じる。技巧的に大見得を切っているところは全くない。モノクロのトーンが素晴らしい。

いろいろな方が追悼文を寄せている。見たことも会ったこともない写真家だが、平敷兼七という人物を慕う気持ちだらけで、つい泣けてしまう。そんな中で、オサムジェームス中川という写真家が、納得させられる言葉を記している。

「1970年代の日本の写真家の多くが「粗粒子、ブレ、ノーファインダー」といった、アグレッシブな表現スタイルが主流の時代に、平敷さんのような欲のない、メディテイティブな優しいまなざしに、ボクが共鳴する何かがあったのかもしれません。」

平敷兼七はライカM4コンタックスG1を使っていた。この「まなざし」にはやはりレンジファインダー機だよなあ、と、これも納得した次第。

特集外ではあるが、豊里友行という俳人・写真家による、「彫刻家 金城実の世界」と題した写真が何枚か掲載されている。彫刻家の手、その手により作り上げられたぐちょぐちょとした人物のマチエールがとらえられている。金城実という異色の彫刻家の手仕事を実感できるような視線を提供してくれるもので、これも素晴らしい。この2月に同名の写真集が出されるようで、ちょっと楽しみだ。

●参照
平敷兼七、東松照明+比嘉康雄、大友真志
沖縄・プリズム1872-2008
金城実『沖縄を彫る』


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (24wacky)
2010-01-07 20:12:19
『LP』ついに購入しましたね。最新号はまだ目にしていませんが、表紙は銘苅古墓群ですか。現在再開発とそれに伴い最近までNPOによる遺骨収集が行われていた真嘉比かと、一瞬思いました。

銘苅古墓群は埋蔵文化財調査報告書で知っていますが、平敷兼七撮影によるとなると凄そうでうすね。「ここは沖縄か?そうだ、ここが沖縄だ」みたいな。
返信する
Unknown (Sightsong)
2010-01-07 23:39:51
24wackyさん
ようやく辿り着きました。これなら最初から読んでおくべきでしたね。
平敷兼七の銘苅古墓群、これが素晴らしいのです。しかし、人によっては、何だ漠然と撮っただけじゃないかと言いそうです。それだけに、まさにその、風景の異化作用さえありました。
返信する
Unknown (豊里友行)
2010-01-10 18:58:31
はじめまして===3
沖縄の俳人で写真家の豊里友行と申します。
ブログでコメントしていただき感謝!
『彫刻家金城実の世界』豊里友行写真録の出版なのですが4月頃に延びそうです。
ぜひURLのとよチャンネルでも購入できますのでどうかよろしくお願い致します。
返信する
Unknown (Sightsong)
2010-01-10 21:58:52
豊里友行さん
ご自身のコメント恐縮です。
『彫刻家金城実の世界』は肉迫が凄まじいですね。4月まで楽しみにしております。
返信する
Unknown (24wacky)
2010-01-10 22:05:33
勘違いだったら恥をかくので控えたんですけど、2007年9月、Sightsongさんを辺野古の座り込み現場へご案内し、そこからジュゴンの見える丘に照屋勇賢さんらと行きましたよね。あの時同行されてたのが豊里さんでは?と勝手に思ったりしているのですが・・・人違いだったらお許し下さい。
返信する
Unknown (Sightsong)
2010-01-11 00:09:56
24wackyさん
そうだったら愉快な偶然です。さて・・・
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。