Sightsong

自縄自縛日記

北井一夫『道』

2014-07-20 07:17:13 | 写真

六本木のZen Foto Galleryに足を運び、北井一夫さんの写真展『道』を観る。

入るなり、在廊されていた北井さんは、わたしが着ていたセロニアス・モンクのTシャツに目を止め、「おおっいいなあそれ!」「意外と日本では人気が出なくて、フランスなんかでは大人気だったんだよね」と。いきなりジャズの話をするとは思わなかった。

写真展のテーマは道。東日本大震災での被災地の道である。

以前に、道は残るものだという発言があった。また、昔からの北井写真でも、向こうへと続く道の中に佇む人がとらえられている作品は少なくない。哲学というような大袈裟なものではなく、長い人の痕跡を見出しているような印象が強く残る。レンズは主にエルマー50mmF3.5、一部はエルマー35mmF3.5だという。

展示作品は被災地だけではない。北井さんの故郷である遼寧省の大連・鞍山の風景が数点含まれている。「何もないところだ、本当に侵略するためだけの場所だった」という。その寂寞とした風景の中にも道があった。そして、もっとも印象深い作品は、かつて『三里塚』において、滑走路予定地に止められたトラックの群れを意識したであろう、道の写真だった。古いレンズゆえ周辺が流れているのが、また味わいを付け加えていた。

今回はじめて見る試みとして、縦写真2点の組み合わせがあった。『ライカで散歩』で使われた、父の形見の布もある。日本と中国、あるいは別のものもあるのかもしれないが、「まったく違うふたつを組み合わせて何か見えてくるか試している」ということだった。

この写真展の作品群は、ちょうど写真集『道』としてZen Fotoから出されたばかり。原版はノートリミングゆえ細長く、少しだけトリミングしてある。厚めだが開きやすく、これまでとは違ってやや黄色い紙。印刷も感触も素晴らしいものだった。

ところで、「週刊読書人」に、現在、北井さんが連載をしている。その第1回で、『三里塚』初版本(1971年)の抽選があって、どうせ当たらないだろうと応募もしなかったのだが、実は、今回同行した研究者のTさんのもとに届いた。折角なので見せていただくと、やはり、当時の北井さんのプリントも印刷も超ハイコントラストで、現在のスタイルとはまったく異なる。それにしても羨ましい。

●北井一夫
『COLOR いつか見た風景』
『いつか見た風景』
『Walking with Leica 3』(2012年)
『Walking with Leica 2』(2010年)
『Walking with Leica』(2009年)
『80年代フナバシストーリー』(1989年/2006年)
『フナバシストーリー』(1989年)
『英雄伝説アントニオ猪木』(1982年)
『新世界物語』(1981年)
『ドイツ表現派1920年代の旅』(1979年)
『境川の人々』(1978年)
『西班牙の夜』(1978年)
『ロザムンデ』(1978年)
『遍路宿』(1976年)
『1973 中国』(1973年)
『湯治場』(1970年代)
『村へ』(1970年代)
『過激派』(1965-68年)
『神戸港湾労働者』(1965年)


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