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Sightsong

自縄自縛日記

北井一夫『Walking with Leica 3』、『遍路宿』

2012-01-08 01:39:09 | 写真

中野のギャラリー冬青に足を運び、北井一夫写真展『Walking with Leica 3』を観る。

前回同様、「引きこもり」ものと風景である。風景であっても、例えばビルの工事現場の外幕から顔を出す樹木の葉叢の「顔」を変えて3点。「引きこもり」も、ライカレンズと入れ歯を組み合わせたり、本棚の文庫本の前に即席で蝋燭を立てたりして、それぞれ3点セットにしている。3という数字はともかく、まるで床の間で正座をして、角が微妙に合うように、とん、とん、と箱を積み上げているような感覚は、相当に奇妙である。静かなる反骨の人、その眼がもはや余裕を持って座っている。奇妙どころか過激なのだ。

プリントはこれまでに増して柔らかいように感じたが、合わせて出された同名の写真集では、オリジナルプリントよりもややコントラストが強い。ギャラリーにおられた冬青社の社長によれば、『1』『2』との差をつける意味もあったのだ、という。

北井さんに訊ねると、今回の写真群のうち、「引きこもり」ものはヴィゾ用のエルマー65mm、風景はほとんどエルマー50mmF3.5を使っており、フィルムはすべてT-MAX100、印画紙はクロアチア製のバライタ紙だそうだ。コダック破産申請の件、「さっき聞いて驚いた」とのこと、たださほど心配していない様子だった。さもありなん、である。

折角なので、最近古本を入手した『アサヒカメラ』誌1976年6月号をお見せした。ここに、北井さんが木村伊兵衛賞(第1回)を受賞した記念として、『遍路宿』と題されたカラー作品群が掲載されている。四国八十八箇所巡りのお遍路さんたちを撮影したものである。ライカM4ズミルックス35mmF1.4と50mmF1.4キヤノン25mmF3.5に加え、珍しいことに、ライツミノルタCLロッコールの40mmF2が使われており、フィルムはエクタクロームとハイスピードエクタクロームとある。室内もあって暗いため、増感のきかないコダクロームよりもエクタ(ISO64と200)を使ったのだ、との言。

微妙な間合いや滲みなど相変わらず素晴らしいのだが、やはり、これまで写真集には収録していないという。ところが、冬青社と組んで、2014年にでもこの作品群を再プリントし、写真展を開く計画もあるという吃驚する話。これは期待しなければならない。

●参照 北井一夫
『ドイツ表現派1920年代の旅』
『境川の人々』
『フナバシストーリー』
『Walking with Leica』、『英雄伝説アントニオ猪木』
『Walking with Leica 2』
『1973 中国』
『西班牙の夜』
『新世界物語』
『湯治場』
中里和人展「風景ノ境界 1983-2010」+北井一夫
豊里友行『沖縄1999-2010』


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