Sightsong

自縄自縛日記

北井一夫『ロザムンデ』

2012-10-23 01:02:50 | 写真

北井一夫『ロザムンデ』(1978年)は、「習志野少年少女オーケストラ」が、ウィーンの大会出場を果たしたときの様子を捉えた写真群である。

DVD版『北井一夫全集2』に収録されてはいるが、映像のクオリティが低く、ずっと欲しいと思っていた。しばらくしてから入手できたが、カバーは付いていない。いつか、現代の印刷で新版を出してほしい。

写真集は、オーケストラに参加した中学生たちの感想文と、北井一夫の写真からなる。

中学生たちは、放課後、音楽教室で楽器を片付けたり、練習したり、教室や廊下で談笑したり、照れたり、うつむいたり。当時33歳、北井さんのまなざしは、淡々とかつ優しく、暗がりの中の彼・彼女たちの様子を、捉えている。いつもの、滲むレンズも効果的だ。

素人がやると下手な写真と言われかねないアングルや瞬間がしばしばあるのだが、北井一夫の写真はそれを物ともしない。襞に静かに触れる写真とはこのようなものを言うのだろうね。

練習の日々のあと、写真はウィーン編に移る。モノクロがモノクロらしく写るヨーロッパの街のスナップショット群の後、いよいよ、カメラが演奏大会に入る。少年少女たちの演奏写真は驚くほど少ないが、そのような展開で、演奏を終えた場面で締めくくられると、かすかな気持ちの高まりを覚えるのである。


音楽教室の空気感


帰宅時の夜の写真も良い


演奏が終わった

北井一夫情報
●『いつか見た風景』 東京都写真美術館 2012年11月24日~2013年1月27日
●『Barricade』 Harper's Books、発売中
●1965年、神戸の港湾労働者を撮った未発表写真群(2013年) ギャラリー冬青
●『村へ』カラー版!(2014年?) ギャラリー冬青
●『三里塚』 ワイズ出版のものよりも前の作品群、もうドイツの出版社のカタログには載っているとのこと

●参照 北井一夫
『1973 中国』(1973年)
『遍路宿』(1976年)
『境川の人々』(1978年)
『西班牙の夜』(1978年)
『ドイツ表現派1920年代の旅』(1979年)
『湯治場』(1970年代)
『新世界物語』(1981年)
『英雄伝説アントニオ猪木』(1982年)
『フナバシストーリー』(1989年)
『Walking with Leica』(2009年)
『Walking with Leica 2』(2009年)
『Walking with Leica 3』(2011年)
中里和人展「風景ノ境界 1983-2010」+北井一夫
豊里友行『沖縄1999-2010』


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