Sightsong

自縄自縛日記

土田ヒロミ『フクシマ』、『フクシマ2』

2014-03-02 10:28:12 | 東北・中部

土田ヒロミさんによる、福島をテーマにした作品展が2箇所で開かれている。

■ 『フクシマ』 (銀座ニコンサロン)

人がほとんどいない家、山、道、野。

作品には、日時、緯度、経度、標高、放射線量が付され、ものによっては、写真の中に薄い字で線量や「FUKUSHIMA」の字が重ねあわされている。そして、まったく同じ場所での定点観測としての複数の組み合わせもある。

■ 『フクシマ2』 (photographers' gallery)

ふたつの部屋。

片方では、3方向に向けられたモニターで、「森」、「野」、「街」と題された映像がずっと流されている。やはり人がほとんどおらず、たまに、崩れた家や、除染作業の重機や、警察のパトカーが見える。森には牛がいる。

もう片方では、写真のスライドショー。BGMとして東北民謡が流されている。やはり、美しい自然風景の中に、時折サブリミナルのように浮かび上がる「FUKUSHIMA」の文字。スクリーンの手前には、除染後の廃棄物を意識したのであろう、黒い風船が多数置かれている。

これらの作品群をどう捉えるべきか。

もちろん、鑑賞者に、被災地に関する事前情報があることを大前提としている。そして、線量や日時の情報も、黒い風船も、「FUKUSHIMA」という写真内の文字も、とても俗であり、スペクタクルである。

しかし、写真家は、そのことを明らかに意識した上で、方法論として出してきたのだろうと思える。そのことを意識に置いて観ても、やはり、息を呑んで、写真や映像を凝視してしまう。ひょっとしたら、「FUKUSHIMA」が、山中の「HOLLYWOOD」という文字を思わせることは、半分は、方法論を自覚していることを示さんとしてのものかもしれない。

●参照
『土田ヒロミのニッポン』
鄭周河写真集『奪われた野にも春は来るか』、「こころの時代」
鄭周河写真展『奪われた野にも春は来るか』


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