デイックの人気作である本作、‘12年ローカス誌オールタイムベストで55位SFマガジン'06年ベストではランクインしていませんでしたが'14年では37位にランクインしており近年人気上昇中(?)のディック作品の中でも評価が高まっている作品のようです。
'14年SFマガジン10月で発表された「PKD総選挙」でも3位と人気が高い。
本書は自身の体験した神秘体験に基づく独自の「神学」にのめりこんだ晩年の問題作「ヴァリス」の直前に出版された作品として、そこに至るデイック作品の流れをつかむ上で重要という評価もあるようですね。
1977年の発刊です。
本作ハヤカワでも浅倉久志氏訳で「ダーク・スキャナー」として出版されているようですが、私は創元版のこちらの方を
ブックオフで見つけて購入したのでこちらで読みました。
創元版は現在絶版のようですね。
内容(裏表紙記載)
どこからともなく供給される麻薬、物質Dがアメリカ中に蔓延していた。覆面麻薬捜査官アークターは、捜査のため自らも物質Dを服用、捜査官仲間にも知らさずに中毒者のグループに潜入し、彼らと日々を共にしていた。だがある日、彼は上司から命じられる。盗視聴機を仕掛け、アークターという名のヤク中を―彼自身を監視せよと。彼はその命令に従うが…。ディック後期の傑作。
一応近未来を舞台としいますが、「SF」….というよりもとにかく「ドラッグ」な小説です。
SF的仕掛けとしては、着ると自分の正体がわからなくなるスーツと物質Dくらいす。
いわゆる「SF」的エンターテインメント作品を期待して読むとずっこけます。
自らもかなりドラッグにはまり込んでいたディックの実体験に基づいた自伝的側面もあるようでドラッグ中毒者の会話はとてもリアル(だと思う)です。
そして本作で中毒者を描写するディックの視線は終始あたたかい。
解説で訳者の山形浩生氏は本作をSF的「超越性」に逃げ込む安易さからも「ヴァリス」での宗教への逃げ込みもないディック一番の傑作と評価しています。
「ヴァリス」は未読なのでわかりませんが、ディックのSF作品には確かにSF特有の「安易さ」があるかとも思います。
でも私はそれも含めて「いい」と思うんですがねぇ…。
もっと安易に「超越的存在」に逃げちゃっているSF多いですし。
そんなにディック作品を読んでいるわけではないですがディックの場合「運命論」と「不可知論」の間くらいのところに佇んで結論が出せずにいい感じに仕上がっているような気がします。
人間ですから、「運命論」にも「不可知論」にも果ては「唯我論」にも(宗教にも?)すがりたくなる瞬間があるんじゃないでしょうか。
ディックのSF作品の場合、その中でとにかくもがく人々の姿の生々しさ(時には色っぽさ)が魅力と感じます。
本作で描かれる人物の殆どは「ドラッグ」に入り込んでいるか、入り込んでいない側で境界線上で悩んでいる状況の人はいない。
(主人公は悩みながらも「ドラッグ」側に落ち込んでしまうわけですが…。)
そんなどちらか側にか入り込んでいる無機質な登場人物の描写がメインですから、本作の場合はなんだか悩みの部分が薄く「自然主義」的な状況描写な仕上がりです。
それが「いい」もしくは「高級」な文学なんでしょうかねぇ?
私的にはディックは「SF」の方が好きです。
ということを踏まえながら本作の感想は…。
とにかくひたすらドラッグを摂取して壊れていく主人公やら周りの人物を描くという内容でなんとも書きにくい。
私自身ドラッグはやりませんが(当たり前か???)時々お酒に逃げているなぁと思う時はあります。
自分を壊すと知りながらも摂取し続ける気持ち、妙な連帯感はなんとなくわかる気もします。
世の中、自分で自分を律することができる「強い」人ばかりではないし、弱かったりついてなかったりする人がいるわけですよねぇ...。
そこにどう向き合うのか?
お酒はある程度可逆的ですが、ドラッグは確実に精神や体を蝕みます。
でもお酒もある意味確実に体に悪いけれども飲まなきゃやってられない自分もいる...。
作者自身あとがきで「この小説に教訓はない」といっており、作中では何の結論も出しておらず、実際正解はないのでしょう。
まぁ本作のようにありのままを「あたたかい視線で見つめる」こともありかもしれない。
(現実は冷たいわけですが)
というような感情がモヤモヤ~と湧いてくる作品で、なんだか印象が残って後からじわっとくるという種類の作品です。
ただ私には「ちょっとかなぁ」というのが正直な感想ですね。
最初に書きましたがディック作品の中でも人気が高い作品のようなので私の読み方が悪いのでしょうけれど…。
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'14年SFマガジン10月で発表された「PKD総選挙」でも3位と人気が高い。
本書は自身の体験した神秘体験に基づく独自の「神学」にのめりこんだ晩年の問題作「ヴァリス」の直前に出版された作品として、そこに至るデイック作品の流れをつかむ上で重要という評価もあるようですね。
1977年の発刊です。
本作ハヤカワでも浅倉久志氏訳で「ダーク・スキャナー」として出版されているようですが、私は創元版のこちらの方を
ブックオフで見つけて購入したのでこちらで読みました。
創元版は現在絶版のようですね。
内容(裏表紙記載)
どこからともなく供給される麻薬、物質Dがアメリカ中に蔓延していた。覆面麻薬捜査官アークターは、捜査のため自らも物質Dを服用、捜査官仲間にも知らさずに中毒者のグループに潜入し、彼らと日々を共にしていた。だがある日、彼は上司から命じられる。盗視聴機を仕掛け、アークターという名のヤク中を―彼自身を監視せよと。彼はその命令に従うが…。ディック後期の傑作。
一応近未来を舞台としいますが、「SF」….というよりもとにかく「ドラッグ」な小説です。
SF的仕掛けとしては、着ると自分の正体がわからなくなるスーツと物質Dくらいす。
いわゆる「SF」的エンターテインメント作品を期待して読むとずっこけます。
自らもかなりドラッグにはまり込んでいたディックの実体験に基づいた自伝的側面もあるようでドラッグ中毒者の会話はとてもリアル(だと思う)です。
そして本作で中毒者を描写するディックの視線は終始あたたかい。
解説で訳者の山形浩生氏は本作をSF的「超越性」に逃げ込む安易さからも「ヴァリス」での宗教への逃げ込みもないディック一番の傑作と評価しています。
「ヴァリス」は未読なのでわかりませんが、ディックのSF作品には確かにSF特有の「安易さ」があるかとも思います。
でも私はそれも含めて「いい」と思うんですがねぇ…。
もっと安易に「超越的存在」に逃げちゃっているSF多いですし。
そんなにディック作品を読んでいるわけではないですがディックの場合「運命論」と「不可知論」の間くらいのところに佇んで結論が出せずにいい感じに仕上がっているような気がします。
人間ですから、「運命論」にも「不可知論」にも果ては「唯我論」にも(宗教にも?)すがりたくなる瞬間があるんじゃないでしょうか。
ディックのSF作品の場合、その中でとにかくもがく人々の姿の生々しさ(時には色っぽさ)が魅力と感じます。
本作で描かれる人物の殆どは「ドラッグ」に入り込んでいるか、入り込んでいない側で境界線上で悩んでいる状況の人はいない。
(主人公は悩みながらも「ドラッグ」側に落ち込んでしまうわけですが…。)
そんなどちらか側にか入り込んでいる無機質な登場人物の描写がメインですから、本作の場合はなんだか悩みの部分が薄く「自然主義」的な状況描写な仕上がりです。
それが「いい」もしくは「高級」な文学なんでしょうかねぇ?
私的にはディックは「SF」の方が好きです。
ということを踏まえながら本作の感想は…。
とにかくひたすらドラッグを摂取して壊れていく主人公やら周りの人物を描くという内容でなんとも書きにくい。
私自身ドラッグはやりませんが(当たり前か???)時々お酒に逃げているなぁと思う時はあります。
自分を壊すと知りながらも摂取し続ける気持ち、妙な連帯感はなんとなくわかる気もします。
世の中、自分で自分を律することができる「強い」人ばかりではないし、弱かったりついてなかったりする人がいるわけですよねぇ...。
そこにどう向き合うのか?
お酒はある程度可逆的ですが、ドラッグは確実に精神や体を蝕みます。
でもお酒もある意味確実に体に悪いけれども飲まなきゃやってられない自分もいる...。
作者自身あとがきで「この小説に教訓はない」といっており、作中では何の結論も出しておらず、実際正解はないのでしょう。
まぁ本作のようにありのままを「あたたかい視線で見つめる」こともありかもしれない。
(現実は冷たいわけですが)
というような感情がモヤモヤ~と湧いてくる作品で、なんだか印象が残って後からじわっとくるという種類の作品です。
ただ私には「ちょっとかなぁ」というのが正直な感想ですね。
最初に書きましたがディック作品の中でも人気が高い作品のようなので私の読み方が悪いのでしょうけれど…。
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