しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

美酒一代 杉森久英著 新潮文庫

2014-12-26 | 日本小説
NHK朝の連ドラ「マッサン」鴨居の大将のモデル、サントリー創業者鳥井真治郎の伝記です。
私は小学生の時に著者の杉森久英氏の「天皇の料理番」を読んで以来氏のファンで、密かに(?)全作収集を目指しているのでブックオフでは必ず「す」の棚をチェックしていたりします。
そんなわけで本書も数年前にブックオフで見つけ入手していたのですが未読でした。

今回朝の連ドラを見ていて思いつき読み出しました。

なお本書連ドラに合わせて今年の夏に復刊されているようです。
朝の連ドラ恐るべし…。

内容(裏表紙記載)
大阪の一奉公人から身を起こし、世界に冠たる洋酒メーカー“サントリー”を創り上げた男、鳥井信治郎。食卓に西欧の文化と生まれた赤玉ポートワイン。スコッチに負けないウィスキーをという執念が生んだサントリー・オールド。次々と銘酒を世に送り出し、その優れた経営感覚と新しいアイディアで、常に時代をリードしてきた男の姿を、伝記文学の第一人者が浮き彫りにする。


前述の通り杉森作品は何作か読んでいて自称「デンキ屋さん」の氏は「伝記文学の第一人者」とは思いますが…本作は「伝記文学」というよりも「伝記」という感じでした。
(私的には主人公が有名でなくても「面白い」と思えるのが「伝記文学」と思っています。)

「サントリーの依頼仕事だったの?」というくらい鳥井氏に都合のよいエピソードの羅列かつ無批判な描写になっています。
(毎日新聞に連載したものらしいですが…広告もあるでしょうしねぇ)

「創業者」ですから変わった所やひどい所も当然あるでしょうし、そんなこともちらっと書いてありますが…薄っぺらです。

もうちょっと深く踏み込めば面白くなったと思いますし、充分その力のある作者だと思うのですが….。

軍人や文学者ならいいのでしょが現存する企業の「経営者」を書く場合いろいろ制約あるんでしょうねぇ。

ウィスキーを作る辺りでマッサンのモデルである竹鶴氏も登場しますがその役割はかなり小さく書かれています。
まぁもろにサントリーの商売敵のニッカの創業者ですからねぇ….。

竹鶴氏の創ったウィスキーは「ピート臭くてどうにもならなかった」と書かれており、鳥井氏がそれをなんとかして国産初のウィスキーを創ったという展開になっています。

どこに真実があるかは別として、ウィスキーを創る話は興味深かったです。
ウィスキーは醸造してから何年も寝かせて出荷するので大変なんですねぇ。
意地でも作った鳥井氏、確かにすごい人なんでしょう。

また太平洋戦争中に軍御用達の洋酒メーカーとなっていたのが、戦後に一転して進駐軍を大接待する商魂のたくましさも感心しました。
その辺も大阪商人ならではですね。

「文学」と思って読むと「???」ですが、サントリーの創業者がどんな人だったかをとりあえず知るためにさらっと読むには面白い本と思いました。
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