ピーター卿シリーズ第7作です1932年刊行。
第6作「五匹の赤い鰊」を読んだのが一昨年の終わり頃ですからピーター卿シリーズを読むのも1年以上空いてしまった…。
直近SFを続いて読んでいて少し飽き気味でしたので手に取りました。
「レッド・マーズ」を読んでいる途中で読みたくなり、現在絶版になっているためAmazonで古本を注文し入手。
前作「五匹の赤い鰊」からの長大路線を受け継ぎ600ページ以上の大作です。
今年(こそ)はピーター卿シリーズ(長編全11作)読了したいと思っていますが、全部読んでしまうのもなんだかさみしいような…。
内容紹介(裏表紙記載)
探偵作家のハリエットは、波打ち際に聳える岩の上で、喉を掻き切られた男の死体を発見した。そばには剃刀。見渡す限り、浜には一筋の足跡しか印されていない。やがて、満潮に乗って死体は海に消えるが……? さしものピーター卿も途方に暮れる怪事件。本書は探偵小説としての構成において、シリーズ一、二を争う雄編であり、遊戯精神においても卓越した輝きを誇る大作である。
「毒をくらわば」で登場したハリエット・ヴェイン再登場です。
ピーター卿から熱烈なプロポーズを受けているようですが、事件後人気探偵作家となっているハリエットはピーター卿を憎からず思いながらも「助けられた」という意識もあり素直に受け入れることができません。
推理小説とはいいながら、そんなピーター卿とハリエットの微妙なやりとりと心の動きが全編にわたって繰り広げられます。
そうはいってもピーター卿シリーズですのでストレートな恋愛小説とはならずに、ハリエットが探偵小説作家であるという設定を利用してのメタフィクション的な展開やら、謎解きをめぐるハリエットとピーター卿のやり取りの場面の描写にはあれこれ工夫が施されており楽しめます。
時にはとてもユニークに時には真剣に。
海辺を二手に分かれて証拠を探す場面などいかにもセイヤーズが楽しんで書いていそうです。
とはいっても二人で協力して暗号を解く場面辺りはあまりにマニアック過ぎて飛ばしましたが....。
推理小説としてはピーター卿の推理が何度もひっくり返されながら、事実に近づいていく展開になっていてモヤモヤさせるわけですが、中盤くらいには「メイントリックはこうだろうなぁ」というのは現代の刑事ドラマなど見慣れている人には想像がついてしまうのではないかと思います。
「謎」そのものよりももっともらしい「仮説」もいかにあやふやなものかというのを楽しむ作品と思います。
ある意味誰が犯人でもいいような書き方で推理小説に詳しくないのでいい加減ですが「パズラーではあるけれどもフーダニットではない」という分類になるのでしょうか?
解説でも「この時期から単なる犯人当てでない推理小説が書かれてきた」というようなことが書いてありました。
様式としても前半は「死体なき殺人」的展開で(私中盤まではこっち側がメイントリックかなぁと思ってしまっていました)暗号解読やアリバイ崩しにいろいろ盛りだくさんにアイディアが詰め込まれています。
謎解き以外では被害者をめぐる様々な人間模様が描かれていて端役にいたるまで人物のキャラが立っていて楽しめました。
みんなどこか浮世離れした感があって不思議な感じなのがこのシリーズの魅力でしょうかねぇ。
個人的には被害者と歳の差婚をしようとしていたフローラ・ウェルドン嬢の息子ヘンリーとピーター卿の正反対ぶりが一番興味深かったです。
浮世離れしていて才能あふれながらもどこか自信なさげなピーター卿に対し、浮世の苦労をいろいろしょい込んでいてまったく解決できていないながらも自信満々なヘンリー。
どりらもハリエットにアプローチするわけですが、ハリエット的にはどちらも微妙なような…。(笑)
ちょっとしか出てこない劇場主(?)のシェイクスピア論などもなかなか楽しめました
そんなこんなで600ページ全編にわたり楽しく読むことができます。
最後の謎解きの場面は前述のとおり意外感はなかったのですが、ところどころキチンと伏線をも貼ってあったのを改めて気づき、推理小説慣れしていない私としては「なるほどねぇ」という納得感もありました。
ただハリエットの行動・心の動きの方が強く印象に残っていて、ピーター卿の印象が薄かったかなぁ…。(笑)
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第6作「五匹の赤い鰊」を読んだのが一昨年の終わり頃ですからピーター卿シリーズを読むのも1年以上空いてしまった…。
直近SFを続いて読んでいて少し飽き気味でしたので手に取りました。
「レッド・マーズ」を読んでいる途中で読みたくなり、現在絶版になっているためAmazonで古本を注文し入手。
前作「五匹の赤い鰊」からの長大路線を受け継ぎ600ページ以上の大作です。
今年(こそ)はピーター卿シリーズ(長編全11作)読了したいと思っていますが、全部読んでしまうのもなんだかさみしいような…。
内容紹介(裏表紙記載)
探偵作家のハリエットは、波打ち際に聳える岩の上で、喉を掻き切られた男の死体を発見した。そばには剃刀。見渡す限り、浜には一筋の足跡しか印されていない。やがて、満潮に乗って死体は海に消えるが……? さしものピーター卿も途方に暮れる怪事件。本書は探偵小説としての構成において、シリーズ一、二を争う雄編であり、遊戯精神においても卓越した輝きを誇る大作である。
「毒をくらわば」で登場したハリエット・ヴェイン再登場です。
ピーター卿から熱烈なプロポーズを受けているようですが、事件後人気探偵作家となっているハリエットはピーター卿を憎からず思いながらも「助けられた」という意識もあり素直に受け入れることができません。
推理小説とはいいながら、そんなピーター卿とハリエットの微妙なやりとりと心の動きが全編にわたって繰り広げられます。
そうはいってもピーター卿シリーズですのでストレートな恋愛小説とはならずに、ハリエットが探偵小説作家であるという設定を利用してのメタフィクション的な展開やら、謎解きをめぐるハリエットとピーター卿のやり取りの場面の描写にはあれこれ工夫が施されており楽しめます。
時にはとてもユニークに時には真剣に。
海辺を二手に分かれて証拠を探す場面などいかにもセイヤーズが楽しんで書いていそうです。
とはいっても二人で協力して暗号を解く場面辺りはあまりにマニアック過ぎて飛ばしましたが....。
推理小説としてはピーター卿の推理が何度もひっくり返されながら、事実に近づいていく展開になっていてモヤモヤさせるわけですが、中盤くらいには「メイントリックはこうだろうなぁ」というのは現代の刑事ドラマなど見慣れている人には想像がついてしまうのではないかと思います。
「謎」そのものよりももっともらしい「仮説」もいかにあやふやなものかというのを楽しむ作品と思います。
ある意味誰が犯人でもいいような書き方で推理小説に詳しくないのでいい加減ですが「パズラーではあるけれどもフーダニットではない」という分類になるのでしょうか?
解説でも「この時期から単なる犯人当てでない推理小説が書かれてきた」というようなことが書いてありました。
様式としても前半は「死体なき殺人」的展開で(私中盤まではこっち側がメイントリックかなぁと思ってしまっていました)暗号解読やアリバイ崩しにいろいろ盛りだくさんにアイディアが詰め込まれています。
謎解き以外では被害者をめぐる様々な人間模様が描かれていて端役にいたるまで人物のキャラが立っていて楽しめました。
みんなどこか浮世離れした感があって不思議な感じなのがこのシリーズの魅力でしょうかねぇ。
個人的には被害者と歳の差婚をしようとしていたフローラ・ウェルドン嬢の息子ヘンリーとピーター卿の正反対ぶりが一番興味深かったです。
浮世離れしていて才能あふれながらもどこか自信なさげなピーター卿に対し、浮世の苦労をいろいろしょい込んでいてまったく解決できていないながらも自信満々なヘンリー。
どりらもハリエットにアプローチするわけですが、ハリエット的にはどちらも微妙なような…。(笑)
ちょっとしか出てこない劇場主(?)のシェイクスピア論などもなかなか楽しめました
そんなこんなで600ページ全編にわたり楽しく読むことができます。
最後の謎解きの場面は前述のとおり意外感はなかったのですが、ところどころキチンと伏線をも貼ってあったのを改めて気づき、推理小説慣れしていない私としては「なるほどねぇ」という納得感もありました。
ただハリエットの行動・心の動きの方が強く印象に残っていて、ピーター卿の印象が薄かったかなぁ…。(笑)
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