しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

レッド・マーズ上・下 キム・スタンリー・ロビンソン著 大島豊訳 創元推理文庫

2016-04-03 | 海外SF
本作が2016年最初に読了した作品となりました。
(読み始めたのは年末なのですが…)
ストーカー」に引き続きで'12年ローカス誌オールタイムベスト35位の作品ということで読み始めました。
1992年刊、ネピュラ賞(1993年)・英国SF協会賞を受賞しています。

現在絶版のようなのでAmazonで古本をオーダーしました。

本作は「火星三部作」の幕開けの作品であり、著者のキム・スタンリー・ロビンソンの代表作ということになっているようです。
本作の後「グリーン・マーズ」(ヒューゴー賞1994年・創元文庫・絶版)「Blue Maras」(ヒューゴー賞1997年未訳)とつながっていきます。
帯には「ジェームズ・キャメロン映像化決定」となっていますが…されなかったんでしょうね。
Amazonで探してみましたが「グリーン・マーズ」入手が難しくなっていました。
「火星の人」の栄華が公開されており世の中微妙に火星のブームなような気もするので、復刊と「Blue Maras」の翻訳、是非期待したいところです。

内容紹介(裏表紙記載)
上巻:
人類は火星への初の有人飛行を成功させ、その後、無人輸送船で夥しい機材を送り出した。そしてついに2026年、厳選された百人の科学者を乗せ、最初の火星植民船が船出する。果てしなく広がる赤い大地に、彼らは人の住む街を創りあげるのだ。そして大気と水を。惑星開発に向けて前人未到の闘いが始まる。NASAの最新情報に基づく最高にリアルな火星SF。A・C・クラークが激賞!(ネビュラ賞/英国SF協会賞受賞。)
下巻:
火星表面には数多の巨大テント型居住施設が完成し、地球から数万の植民者が送り込まれてきた。また人と資源の移送を容易にするため、火星上空の衛星軌道にまで達する人類初の宇宙エレヴェーターの建造も始まる。だが、この星は地球の延長ではない。そしてある日、革命が勃発する。各地の植民街が決起し、ついには宇宙エレヴェーターが衛星軌道から落下しはじめた。空前の崩壊劇!(ネビュラ賞/英国SF協会賞受賞。)


本書の第一部は、下巻の冒頭の直後辺りの衝撃的事件を書いています。
そこからカットバックして物語が始まるのですが...しばらくついていくのが大変でした。
このカットバックは意味あったのかしら?
登場人物にある程度感情移入してしまってから第一部の描写が出てくると最後までフランクに対して悪意を持ってしまいそうなのでこれでよかったのかもしれませんね。

物語全体としてはハードSF的「火星年代記」とでもいう感じで、リアルな火星植民が第8部までのエピソードごとに、年代を追って語られます。
前半の火星植民はリアルかつ火星の美しさを伝えていて中盤から後半は政治的なごとたごた、最後は壮絶な崩壊と希望(?)という構成です。

それぞれ主要となる登場人物が異なるので誰が主人公かは特定しにくいです。
登場人物は類型的といえば類型的なのですがみんなキャラ立ちしていてなかかなか魅力にあふれていました。

中心となる登場人物は主人公各の植民団のアメリカ側リーダー フランク・チャーマーズ、その旧友で初の有人火星飛行士のジョン・ブーン、ロシア側リーダーのマヤ・トイトヴナ、技師のナディア・チェルネシェフスキィというところになるかと思いますが、脇役的設定の訓練担当アルカディィ・ボグダノフ、生命維持システム設計者ヒロコ・アイ、物理学者サックス・ラッセル等々もみんないい味出しています。
読了後3ケ月が過ぎていますが脇役のキャラも結構思い出せます。

個人的には火星がテラフォーミングされれば他はどうでもいいという感じのサックス・ラッセルが随所にスパイスを効かせている感じでお気に入りです。

地球とその植民地たる火星との関係、なにかに憑かれたかのように政治ゲームに没頭するフランクの姿、有能なんでしょうが性格が破綻しているマヤ、まるで火星人のように神出鬼没なヒロコなどもなかなか…。

といった人物群像も楽しめますが、この作品圧巻はラス近くの宇宙エレベーター落下の描写のすさまじさでしょうね、すごいスケールです。
これを読むと地球に宇宙エレベーター造るのが怖くなります。

いわゆる高尚な形での「文学」はしていませんが正統的かつ力技なSFであると同時に人物を正面から骨太に描いている上質なエンターテインメント作品として楽しめました。

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