しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

毒を食らわば ドロシー・L・セイヤーズ著 浅羽莢子訳 創元推理文庫

2014-11-01 | 海外ミステリ
ピーター卿シリーズ第5作、いよいよシリーズのヒロインかつ後にピーター卿の生涯の伴侶となるハリエット女史が登場します。

前作「ベローナ・クラブの不愉快な事件」の2年後の
1930年発刊。
これまたブックオフで見かけて購入していました。

1990年英国推理作家協会ベスト67位、1995年アメリカ探偵作家協会ベスト36位にランクインしておりシリーズの中でも評価の高い作品です。

前作辺りからミステリーを書くことに飽き飽きしていたセイヤーズは本作でハリエットを登場させピーター卿と結婚させてしまいシリーズを終わらせようとしていたというのは有名な話らしいです。
結局は終わらなかったわけですが…。

内容(裏表紙記載)
裁判官による説示。被告人ハリエット・ヴェインは恋人の態度に激昂、袂を分かった。最後の会見も不調に終わったが、直後恋人が激しい嘔吐に見舞われ、帰らぬ人となる。医師の見立ては急性胃炎。だが解剖の結果、遺体からは砒素が検出された。被告人は偽名で砒素を購入しており、動機と機会の両面から起訴されるに至る・・・・・・。ピーター卿が圧倒的な不利を覆さんと立ち上がる第五弾。

結構期待して読んだのですが…。

前作までのピーター卿シリーズと基本的骨格は変わっておらずピーター卿の軽薄キャラも「基本的には」変わっていません。
ハリエットに対するプロポーズなど軽薄の極みです....。
(死刑になりそうで獄中に居る人間に突然プロポーズしてもねぇ)
ミステリーとしても動機は相変わらずのもので、トリックもかなり強引です。
トリックの方は犯人が捨て身なのがすごいところですが…。

そういう意味では本作は4作目までのシリーズ前半の流れかなぁと感じました。
とりあえずシリーズ前半(?)の長編を本作まで5作品読んだところでの私のベストは第2作「雲なす証言」ですねぇ。

本作の評価が世間的に高いのはひとえに作者セイヤーズの分身ともいわれるハリエットの登場作だからなような….。

そのハリエットは確かになかなか興味深いキャラではありますが本作では被告人の立場で拘置所におりあまり活躍できていません。

ただピーター卿はこれまでと若干の変化を見せています。
初老に差し掛かった自分に対する戸惑いや、これまで「超人」と自認していて自分の能力にも疑いを持ったりします。
「軽薄」の鎧をまとってごまかしていた自分の姿や人間関係に対して「果たしてこれでいいのか?」と自問しだしたりもします。
ピーター卿のキャラクターがこれから変化していきそうな兆しを感じます。

そんなピーター卿に対し、前作でも登場した女友達の彫塑家フェルプスからは「あなただけは変わらないでいて」と頼まれている。
「若さ」を想い「変わらない」ことを願う気持ちはよくわかりますが....。
時の流れとともに自分も周りもそして関係も変わっていかざるを得ないわけですよねぇ。
同じピーターでもピーター・パンではいられない。(笑)

シリーズ最初からの男友達である、フレディ爵子は第一作「誰の死体?」で出会った女性と結婚することになり、パーカー警部も「雲なす証言」で出会ったピーター卿の妹メアリとの仲も大きく進展します。
時の流れを感じシリーズ通して読んでいると感慨のようなものを感じます。
いろんな意味での「変化」を感じられます。

ということで本作ではいま一つ元気のないピーター卿に対して本作で大活躍するのはピーター卿の基で働くクリンプソン嬢とその配下マーチスン女史です。
クリンプソン嬢の方はピーター卿への恋愛感情というようなものはないでしょうが、マーチスン女史はピーター卿に対する憧れ的な感情があるように描かれています。

そんなマーチスン女史がピーター卿の片想い相手のハリエットの容疑を果たすためにかなり危ない橋を渡って働きます。
なんだかちょっと可哀そうな気がしました…。
マーチスン女史にも是非幸せが訪れてほしいです。
(私的にはハリッエットより感情移入してしまった。)

また「不自然な死」で大活躍していたクリンプソン嬢は本作でも圧巻の大活躍をします。
今回の事件解決への貢献度はピーター卿よりもクリンプソン嬢の方が間違いなく上です。
降霊会の場面は笑えました。
ウィリスの「犬は勘定に入れません」での降霊会シーンは間違いなくここから取ってるんでしょうねぇ。

女性二人の大活躍によりめでたく事件は解決し、パーカー警部とピーター卿の妹メアリはめでたく結ばれそうな展開になり、ピーター卿とハリエットも順調に進展しそうな感じの大団円な感じで終わるのですが...。
この後もピーター卿とハリエットの仲はなかなか進まずピーター卿シリーズはまだまだ続くようです。

本作はかなり期待して読んだので消化不良気味でしたが...。
まぁ次作以降期待ですね。

次作から本の厚みもぐんと厚くなってますし。

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