しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

五匹の赤い鰊 ドロシー・L・セイヤーズ 浅羽莢子訳 創元推理文庫

2015-01-02 | 海外ミステリ
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

本作含め4作は去年読んだものですが今年ボチボチ記事化していきます。

ピーター卿シリーズ第6作です、1931年発刊。
全10作あるピーター卿シリーズの長編もいよいよ後半戦に入ります。

前作「毒をくらわば」が347ページでしたが本作は483ページと分量も大幅に増えていますし本作から本格的にシリーズ後半戦ということなんでしょうね。
(本作以降は1-5作目までと異なり分厚くなります。)

前作でシリーズヒロインであるハリエット嬢が登場したのですが、本作では残念ながら登場しません。
本作はシリーズ中で一番のいわゆるパズルミステリーとされているらしく、シリーズ的には外伝的な話とされているようです。

なお残念ながら本作現在絶版のようです。
というわけで….でもないのですが(笑)本書もブックオフで購入。


内容紹介(裏表紙記載)
スコットランドの長閑な田舎町で嫌われ者の画家の死体が発見された。画業に夢中になって崖から転落したとおぼしき状況だったが、ピーター卿はこれが巧妙な擬装殺人であることを看破する。怪しげな六人の容疑者から貴族探偵が名指すのは誰? 大家の風格を帯び始めたミステリの女王が縦横無尽に紡ぎ出す本格探偵小説の醍醐味。後期の劈頭をなす、英国黄金時代の薫り豊かな第六弾!


題名が「赤い鰊」で釣り好きが集まる田舎町が舞台なのでてっきり魚の鰊がそのうち出てくるんだろうと思っていましたが…。
ミステリの世界では「赤い鰊」=「レッド・ヘリング」=「偽の手がかり」というのは常識のようです。
「詳しくない」のはしょうがないですねぇ…。
シリーズ一番のパズルミステリーということで、前作までの「謎解きは勢いでやっつけて、登場人物のキャラで勝負」という展開(?)と大きく違ってきます。
(本作以降の傾向は未読なのでわかりませんが…。)

そんなこんなで「ピーター卿シリーズ」としては「違和感を感じ苦手」という人もいるようです。
確かにまったく地理のわからないスコットランドの田舎町でのこみいった時刻表やアリバイトリックはかなりややこしく、私は途中から謎をちゃんと追いかけようという気がなくなりました….。

序盤でいきなり「読者への挑戦状」的な謎が出てきて最後の方まで明かされないので、これもなにやら気になってしまいます…..。

でもまぁ「わからなくてもいいや」と割り切って読みだしたら、殺害された嫌われ者の画家とその画家を殺害しそうな理由を持ちアリバイの怪しい画家が六人という突飛なシチュエーションと容疑者や地元の警察官の絶妙なキャラを結構楽しめました。

地元の警察官の捜査状況や入手した証拠・証言を細かく丁寧に書いているのがこれまでと違うところでその分ページ数も増えていますが基本的シチュエーションは前作までと同じです。
ページ数も増えていますがそれでも登場人物がキャラ立ちしており、冗長にならず読ませているところは「さすがセイヤーズ」という所でしょうかねぇ。

最後の方で警察長や警部やら巡査がそれぞれ自分の推理を展開した後、ピーター卿がそれをあっさりひっくり返し謎解きをする場面や殺人事件の捜査とは思えないノリノリでの事件再現場面などはピーター卿シリーズらしいとがった展開で楽しめました。
(謎解きの方は最初の「読者への挑戦状」の謎がキーだったりします、容疑者6人の所在が明らかになったところで犯人の検討はついたりしますが…。)

でもその他の部分はいわゆる「普通の謎解きミステリー」という感じが強く、というかこのシリーズならではのピーター卿の活躍(と苦悩)の部分は薄目でなにか物足りないような気もしてしまいました。

前述しましたが好みの分かれる作品のようですが、私の好みではないかなぁ。

でも普通に「1931年のミステリーを読む」と思えばこの時代の作品にしてはテンポもよく現代的な作品で楽しめるとは思います。
あと自転車好きにもいいかもしれない(笑)

次作以降は本作と毛色が違った展開のようなので期待して読みたいです。

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