今日は、夕方から、標記の本を読んだ。私は、一時、藤沢周平に凝ったことがある。一番最初に読んだのは、長塚節の生涯を描いた「白き瓶」であった。長塚節が茨城の生んだ有名な歌人・作家であることは知っていたが、「土」は、少し読んだが面白くなく、途中で放り出した。
私の高校教員組合時代の先輩に、下妻一高の先生をしていた永瀬純一さんがいた。永瀬先生は、生物の先生であったが、県内では「長塚節の研究家」としての方が有名であった。また、最後は、実家が千代川村村長の家であったため、請われて村長選挙にでて、村長を務めた方でもあった。その永瀬先生から、長塚節のことは、いつも聞いていたので、関心があった。
「白き瓶」を読んで、大きな地主であっても、借金に苦しんだ地主であったこと、また、歌の師・正岡子規と同じように結核で苦しんだことを知った。
これをきっかけに、暗殺の年輪、又蔵の火、義民が駆ける、回転の門、闇の傀儡師、用心棒日月抄、獄医立花登手控え、密謀、海鳴り、市塵、一茶など読んだ記憶がある。
私が一番記憶に残ってるのは、第5代将軍徳川綱吉の時代から、出現以前まで、政治の中枢で活躍した新井白石の日常を描いた「市塵」である。この時代は、綱吉や田沼意次の時代であるので、そのことを書いた「物語」は多いが、新井白石のことを書いた本はあまり知らない。新井白石は、歴史の教科書にも出てきて名前は知っていても、物語の主人公になっているのを読んだのは、はじめてです。
また、小林一茶の伝記を書いた、「一茶」も私には面白かった。俳諧師のプロとして、食べていくことの大変さ、さらには、信州へ帰ってからの遺産争い、年取って生まれたこどもが、健やかに育たなくて苦労する「人間くささ」が、よく描かれている。
私は、藤沢周平の作品は、全くの創作物語より、伝記ものの方が、好きである。