つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

御大、再び

2006-04-07 20:47:19 | その他
さて、そろそろ記念回のネタを考えんとなぁの第493回は、

タイトル:日本の伝説
著者:柳田国男
出版社:新潮文庫

であります。

2月17日の「日本の昔話」に引き続き、民俗学の大家、柳田御大の著作。
昔話のほうと同様に、日本全国に散らばる伝説の紹介を主として趣の本で、本編はたったの150ページ足らずのかなり薄い文庫になっている。

ちなみに、「伝説」は、「口承文芸の分類の一。具体的な事物に結びつけて語り伝えられ、かつては人々がその内容を事実と信じているもの。次第に歴史化・合理化される傾向をもつ。言い伝え」(goo辞書)
「昔話」は「口承文芸の分類の一。民間に口承されてきた説話」(同上)

さて、内容は章ごとに大きなカテゴリーを作り、その中で全国津々浦々、様々な地方で語られている伝説を紹介している。
第1章から、

「咳のおば様」
「驚き清水」
「大師講の由来」
「片目の魚」
「機織り御前」
「お箸成長」
「行逢阪」
「袂石」
「山の背くらべ」
「神いくさ」
「伝説と児童」

と、11章で構成されている。

各章の詳細は、ほとんど各地に伝わる伝説のあらすじや主要な一部を、ほとんど列記している、と言っていいくらいの書き方になっている。
たとえば「片目の魚」では、歴史上の人物が何らかの事故のようなことで片目を傷つけるなどした際に、目を洗った池の魚がすべて片目になった、という伝説が概ね3行から5行くらいの分量で列記されている。
多いときには10篇以上も、同種の伝説が記されており、また歴史上の人物だけではなく、池の主が片目を傷つけたために池の魚がすべて片目になった、などのやや異なる伝説の場合も同様に列記されている。

そうした中に、時折著者の推論が語られていたり、総論が記されていたりしている。
……とは言うものの、ほんとうに列記されているだけ、といった印象が強いので、それぞれの伝説にあるであろう物語性はあまり感じられず、「日本の昔話」のように懐かしんだりはできなかったなぁ。
それに、著者の推論なども、なんか空想の物語を現実でばっさり斬られる感じがして、なんかいまいち……。

おもしろさでは、断然「日本の昔話」のほうがいいね。
もっとも、ある程度の学問的な意味合いもあるので、物語として望むなら、と言うところではあるけど。

まぁでも、最後の「伝説と児童」のほうは、子供の姿をとるお地蔵様の伝説がメインなので、最後の最後でとてもほほえましく読ませてもらえたのはよかったかな。