つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

夏こいこい

2006-04-17 22:38:53 | ミステリ
さて、二週に一冊は読んでるなぁと思う第503回は、

タイトル:閉ざされた夏
著者:若竹七海
文庫名:光文社文庫

であります。

お馴染み、若竹七海の長編ミステリ。
会社の倒産によって職を失った(若竹さんこのパターン多いな……実体験?)主人公・佐島才蔵が遭遇した事件を描きます。

舞台は、才蔵の新たな勤め先『高岩青十記念館』。
職員は暢気を絵に描いたような人物ばかりで、期日厳守が常識の世界にいた才蔵は常にイライラしています。
そんな折、悪戯とも取れる奇妙な放火事件が発生するのですが、これは一度では終わらず……。(以下本編へ続く)

謎解きよりも、主人公の日常を描くことに重点が置かれている作品です。
記念館に勤める人々や妹・楓との会話、登場人物一人一人に対する心情、頻繁に出てくる食事のシーン等々……普通の生活の描写がかなり細かい。
何度か起こる放火事件がそれなりに緊張感を持たせてくれるのですが、物語の転換点である殺人事件が起こるまではかなりほのぼのとした雰囲気でした。

では、職場で起こった殺人事件で日常が破壊され、異常な世界が展開されるかと言うと、そうでもない。
才蔵は他の職員達と共に殺人事件発生後の『日常』に追われますし、家に帰れば、相変わらず楓と一緒に食事を貪り、とりとめもない会話をします。
こんな風に、身近で殺人事件が起こった後の主人公達の生活を、淡々と描いていく作品って結構珍しいかも。

一応、どっかのお庭番みたいな名前の才蔵・楓兄妹が、探偵役として事件の解明を目指すのですが……実はこの二人、役に立ってない。(笑)
御約束として才蔵が疑われるという事態はあったものの、事件は殆ど警察が解決してしまいます、手遅れに近い形ですが。
ラストにどんでんどんでん返しがあり、その時始めて才蔵の推理が生きる……のだけど、なくてもいずれ真相は明るみになっていた気が。

全然関係ないけど、この兄妹、異様に仲がいいです。
つーかどこの世界に、ミステリ作家やりながら兄貴の食事作って、家事もやって、ついでに女関係の心配までする、かいがいしい妹がいるんだっ!
ラスト近くなんか殆ど恋人同士みたいに描かれているし、こりゃ、才蔵君も楓ちゃんも当分結婚しそうにないですね。(笑)

ミステリと言うより青春小説といった感じ、でもオススメ。
毒は割と(飽くまで割と)薄めなので、ドロドロした話が苦手な方はどうぞ。



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