つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

左肩上がり

2006-04-24 23:46:48 | ホラー
さて、さりげなくタイトルが継続している第510回は、

タイトル:マニアックス
著者:山口雅也
文庫名:講談社文庫

であります。

表紙の絵が可愛かった(笑)ので、何となく手に取ってみました。
七つの作品が収録されたホラー短編集です。
例によって一つずつ紹介します。

『孤独の島の島』……フリーライター・綾瀬千尋はカメラマンの恭介とともに寄木島を訪問した。浜に打ち上げられる漂着物ばかり収集している風変わりな女性を取材するためだった。インタビューを続けるうちに、千尋はあることに気付くが――。
気持ち悪い作品(褒め言葉)。何かに取り憑かれたように漂着物を集め続ける女性の闇が描かれる。千尋の推理はかなり強引だが、短い中でまとめるには仕方がない……か。

『モルグ氏の素晴らしきクリスマス・イヴ』……艱難辛苦を乗り越えて、ようやく小説家として成功したモルグ氏。彼は人生で最高のクリスマス・イヴに、恋人にプロポーズしようと思っていた。あと三十分もすれば彼女がやってくる――。
かなりブラック! ブラック! なドタバタ話。要は一節ごとに来客があり、××になるだけなのだが、モルグ氏の経歴を考えると笑えない……。定番のオチが付いており、その後を想像するとさらに嫌な気分になれる。

『《次号に続く》』……首切り魔のニュースが世間を騒がせている中、私はニューズスタンドで雑誌を漁っていた。そこに、作家のマーク・D・コールマン氏が現れ――。
なんじゃ、そりゃ? な話。ありと言えばありなんだろうけど、あまり好きなタイプのオチではない。ホラーとしてもイマイチ。ちなみに、続きません。(笑)

『女優志願』……メイドのジュディは気位の高い女優に仕えながら、自分もまたハリウッド・デビューすることを望んでいた。しかし、いくつ撮影所を回っても門前払い。ふてくされてバーで飲んだくれていると、バーテンが妙な提案を持ちかけてきた――。
お気に入り。節を切り替えを上手く利用して、読者を混乱させるように持っていっている。短編映画とかにすると、程よく恐くていい感じだと思う。

『エド・ウッドの主題による変奏曲』……エド・ウッドと名乗る映画マニアが売り込んできた作品、それは映画と呼ぶのも躊躇われるおぞましい出来だった――。
サイテー映画のシーンは、わざと書いてるにしても酷い。書くのは楽しいかも知れないが、読まされるこっちとしてはいい迷惑。

『割れた卵のような』……もうすぐ二人目の子供が生まれるというのに、私の住むマンションでは子供の転落事故が多発していた。落下した子供の頭蓋は、地上に激突してべしゃりと潰れる。そう、まるで卵のように――。
ミュータント系のホラー。よく知られた事実を使っているので、勘のいい人は途中でオチが想像つくと思われる。解ったら解ったでかなり暗い気分になれるけど。(笑)

『人形の館の館』……私は、学生時代の友人ヒュー・グランドを『人形の館』へと案内した。中には、数々のミニチュア・コレクションが揃えてあり、彼もきっと満足してくれるだろう。別の目的も一つある、それは――。
いかにもミステリっぽいが、ミステリじゃない作品。真面目に謎解きしようとすると肩すかしを食らうので、やめとくのが吉。オチは……言わぬが華。

ありとあらゆるマニア、を扱ったホラー作品集です。
不条理なオチが多いので、そういうのが嫌いな人には向かないかも。
つか、ホラー短編って大抵そうだけど。(爆)

『孤独の島の島』と『女優志願』は好きなのですが、他はどうかと……。
さらっと、ホラーをかじってみたい人向きかも知れません、あまり恐くないし。