思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Tup's woolを求めて

2022-07-19 06:05:00 | 毛針/Flies

Tup's Indispensableは英国南部のTivertonでタバコ店を営む傍ら毛鉤を巻いていたR.S.Austin氏が1900年頃に作り出した毛鉤と言われております。
そもそもAustin氏は元々この毛鉤をRed Spinnerを模して作ったそうですが、Austin氏からこの毛鉤の秘伝の材料を伝授された家族以外ではただ二人の釣り師、C.A.Hassam氏と、G.E.M Skues氏の内、後者がこの毛鉤の材料の一つ、羊毛が雄羊の睾丸付近に生えるものであることから「雄羊に無くてなはならないもの」の毛を隠喩したTup's Indispensableという名前を広めたのでした。
1900年当時のAustin氏のオリジナルレシピでは:
Silk: yellow silk
Hook: 00(16) Pennel Hook
Hackle: blue hackle of a lighter colour and freckled thickly with gold
Body: Ram's wool, cream coloured seal's fur, lemon spaniel's fur and a few pinches of yellow mohair
となっておりましたが、Skues氏がmohairの替わりにcrimson seal's furを使うことをAustin氏に薦め、その後はcrimson seal's furを使って巻かれ今日に至っております。
この雄羊の睾丸の毛という材料をどうやって入手出来るのか昔からの課題であったのですが、イスラム教国であれば簡単ではないかと思い立ちました。
「犠牲祭」です。
イード・アル・アドハーと言うこの祭日はイスラム教の巡礼月の10日にあたり、イブラヒム(アブラハム)が神に息子イスマイル(イシュマイル)を犠牲として捧げようとした故事に則り、北アフリカでは一家で一頭は雄羊を捌き家族・近所で食べる日です。
その日のために雄羊を購入したモロッコ人に頼み、雄羊のあそこの毛を刈り取ってもらいました。上の写真がそれ。

草の様なものや不純物がつき匂いもきついこの毛を流水と石鹸で洗いある程度不純物が取れた右側と未だ不純物まみれの左側にまずは分けます。

不純物が少ない方の羊毛を更に手でちぎって不純物を叩き出していくと

残ったのは普通の羊毛よりも黄色味の強い羊毛でした。
これがTup's wool。ピンク色した羊の睾丸の毛という表現で数年前に日本の雑誌に記事が出ていましたが、赤みは全然ない羊毛です。まあ尿やその他の汚れにされされた毛なのでこのような色になってしまったのでしょう。
これを使ってまたTup's Indispensableを巻き、今度こそモロッコの鱒に見参したいものです。

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2 コメント

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愉しそう (nori)
2022-07-23 19:25:48
budsekさま

本当にここまでやる方は、日本人ではまず貴殿だけでしょう。その熱狂振りに深く敬意申し上げます。ピンクというのは結局のところどうなんでしょうかね。私はむしろ、我々のそのへんの体毛のように、テラテラと光沢があるかどうかに興味があったりします。それこそ、ネオ・イミテーショニストたちが追い求めてきた要素のひとつですから・・・

nori 拝
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この羊毛の特徴とは (budsek)
2022-07-23 22:16:17
nori様
コメントを頂き大変ありがとうございました。
大先生、特に日本の先達のおっしゃることも、その真偽を実験で確かめないと得心出来ないことはこれまでの釣り人生で経験しておりますので、今回の仕儀と相成りましたが、結論を申し上げますと黄色がかったただの羊毛だと思われます。然しながら、羊毛が含むラノリンオイルやAustinも言う様にパラフィンを多少つけると水中で気泡を作り輝きを作り出すのではないかと思います。Tup'sのボディはこの羊毛の他、シールズファー、レモンスパニエルのファーにモヘア、或いはクリムゾンシールズファーを一二本使うというものですので、水に馴染みやすいスパニエルファーと輝きを持つシールズファーに羊毛ですので、生命感を持ったボディになるのでは。
少なくとも、羊の睾丸を目指さなくとも、クリーム色のウールセーターで十分代用出来るのではないかと思いました。。。勿論、この睾丸羊毛は大切に使って行きたいと思っておりますものの。
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