天気が良くても釣りに行くことが叶わない今年の春。その徒然の中、本に目を通すなどしております。John Waller Hillsの「A Summer on the Test」もその中の一冊。英国の有名なテスト川での季節毎の釣り、そこで使う毛針、テスト川での釣りガイドであると同時に、Skuesの文章に比べると特にですが、平易で切れの良いリズムの良い文章で釣りの悦びを伝えております。
その第二章、「The Beginning of the Season」は春になって一年の釣りが始まる頃の話。英国もそうですが、4月と言えば欧州では未だ未だ春本番という感じではなく、時には雪が舞ったり気温が冬に戻ったりする時分。その4月のドライフライ釣りで活躍する毛針はBlue Upright、Dark Olive Quill、Gold ribbed Hare's Ear、Greenwell's GloryだとHillsは述べておりますが、特にBlue Uprightが良いとしております。そして季節が進むと、Blue Uprightのサイズを落とし、胴に巻くゴールドワイヤーも無しで良いとしながらも(HillsのBlue Uprightはピーコッククイルの胴にゴールドワイヤーを巻いております)、Blue Uprightが通じなければGinger Quillを使うとします。更にHillsは一つの毛針を一年通して使うとすればそれはGinger Quillだとしております(少なくてもテスト川では、と理解します)。
そのGinger Quillを巻いてみます。
「A Dictionary of Trout Flies」によるレシピは:
Hackle and Whisks: Pale brown ginger
Body: Peacock quill, pale
Wings: Palest starling
Hook: 16
スターリングのウィングは何時もの通り左右其々二つのストリップを使い魚を掛けてもバラけ難い強度を持たせます。
8の字巻きをしなくてもウィングは自然に左右に分かれますが、今回はキチンと8の字巻きをしております。
大きく左右に分けております。カゲロウではハッチの際、両羽をつけて流れるものとSpur Wingと言って左右に多少広げて流れるものがありますが、これはSpur Wingと言ったものでしょうか。
ボディの下巻きにテイルを付け、繊毛を取り除いたピーコッククイルを付けます。昔の英国人の毛針用マテリアルの中に処理済みのピーコッククイルがありましたので、それを使って今回は巻きました。
中身はこの通り。
クイルボディを巻いた後、ジンジャー色のハックルを取り付けます。私はいつもアイ側からテイル側にハックルを巻き、それをタイイングシルクでテイル側からハックルの間を通しアイ側に巻きます。シルクがハックルの間から見えることもありますが、こうすることによりハックルが魚をかけてばらけたりすることのない強度を毛針に与えることが出来るからです。格好は悪くなるかも知れませんが、折角作った毛針が直ぐダメになるよりも良いと思っております。
アイまでシルクを巻いたら、手でウィップフィニシュ。ウィップフィニッシャーの使い方はよく分かりませんが、素手では考える必要もなく出来ます。
ウィップフィニッシュを終え、余分なシルクを切ったところ。
斜めから見るとこんな感じ。
ウィングを唾で濡らし整えてやります。釣り場ではオイルを使ってやると魚を何回もかけた毛針でもウィングの形を整えてやることが出来ます。但しダブルウィングにしていたらの話になりますが。
斜めから見ます。
斜め後方から見ます。
上から見たところです。
「A Dictionary」はGinger Quillを「Red Quillの良いバリエーションのドライフライ、Pale WateryとLight Olive Dunのイミテーション」として薄い色のカゲロウのイミテーションと説明します。Red Quillと比べるとボディは一緒でも全体の色調は明るくなっており大分雰囲気は違います。奥に見えるのはGreenwell's Gloryのハックルとテイルをフランスハックルのスモークグレイにしたもの。ハックルとテイルを変えると毛針の印象もガラッと変わるものですね。
仕事から解放されて自由になった頃に、忍野にでも通い込んで改めて自分の釣りスタイルを見詰め直してみたい…などと漠然と考えていたのですが、川自体の環境が随分変わってしまいましたね。
A Summer on the Test…訳本があれば嬉しいのですが、私にとっては、ビジュアルの多いAn Album…とかが雰囲気を感じるのに好都合です(笑)
コメントを頂き大変ありがとうございました。
忍野。桂川。日本のテスト川の候補に相応しい湧水の川ですね。四季のカゲロウ等羽虫の羽化も分かるでしょうし何シーズンも通いこんで研究する絶好の川と思います。しかし。。。首都圏近郊の宿命ですが人が多くて。。。中々小心者の私には敷居が高いのと、電車釣行なのも難点であります。
A Summer...の翻訳は釣り人でないと出来ないと思いますし、逐語訳にならず表現されている全体を伝えるための和訳となると文才も必要で残念ですが非常な難事業だと思います。
日本の釣り場を味わえるyugawasuki様の忍野・湯川の釣行歳時記、他のエッセイを楽しみにお待ちしております。
釣り場の混み具合という話からの連想ですが、英国チョークストリームのドライフライオンリー、キル、匹数制限のレギュレーションは多くのメンバーが釣りを楽しむ為、場荒れを防ぐ目的のものです(Halfordは時代背景もありconfrèreと仏語でメンバー:釣友の事を優雅に表現しており思い遣りが感じられます)。一方、ウェットフライ・ニンフも使え、キャッチアンドリリースの日本の川は欧州の川より釣り人にとって手強い釣り場と本当に実感しております。嗚呼、そんな日本の川に行きたくても行けないこの絶好の釣り日和が本当に恨めしいです。。。