引き続き当メディア最高裁判所は、メディア最高検察庁が起訴した第2の犯罪「安倍総理の誤解に基づく集団的自衛権行使のための憲法解釈変更を支持し、国民を欺く主張を行った罪」に対する判決理由を述べる。
中国が領土領海拡大の野心を持って国際社会の了解を得ず軍事力の強化、とくに海上・航空攻撃力を強化しつつあることは、直接の脅威にさらされている当事国の日本、フィリッピンなどを含む東南アジア諸国にとって看過しがたい状況にあることは事実として認めるが、読売新聞が今年元日の朝刊3面の社説『日本浮上に総力を結集せよ――「経済」と「中国」に万全の備えを』は、主張の趣旨は理解できるとしても、「主張を正当化するために捻じ曲げた国連憲章解釈」を読者に強いた罪はゆるがせにできないものがあると言わざるを得ない。
同社説はこう主張している。
「日米同盟の深化(※強化と書くべき)によって、中国をけん制することも重要だ」「米国は尖閣諸島に対し、日米安保条約の対日防衛義務を定めた条項が適用される、という立場を変えていない。この条項が確実に機能するよう、米国との間で日本の役割も増強しなければならない」「安倍政権が今年末に、日米防衛協力の指針(ガイドライン)を見直すのは時宜にかなっている」「平時から有事へ、危機の拡大に応じた継ぎ目のない日米共同対処ができるよう、自衛隊の米軍支援の拡充、尖閣など離島防衛での米軍の関与拡大を打ち出したい」「集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更に踏み切ることも、避けて通れない」「政府・自民党は。自衛のための『必要最小限の武力行使』に、集団的自衛権の行使も含める、とする新しい解釈を検討している。安全保障環境の悪化を受けて、『必要最小限』の範囲を広げるのは、十分理解できる」「集団的自衛権とともに、個別的自衛権の議論も深めたい。たとえば、偽装漁民による離島占拠という武力攻撃に至らない段階で、自衛隊は、どう対処するのか。こうした『マイナー自衛権』の武器使用の問題も詰めておく必要がある」
小林紀興氏が展開した「集団的自衛権論」の骨子はこうである。
「集団的自衛権は国連憲章51条が国連加盟国に対して認めている『自衛のため
の固有の権利の一つ』というのが氏の主張である。国連憲章51条ではもう一つの自衛のための固有の権利として個別的自衛権も認めている。そもそも国連憲章は国際平和の実現を目指し、その第1章において、すべての国連加盟国は国際紛争を平和的に解決すること、武力による威嚇又は武力の行使を慎まなければならない、という大原則を明記している。しかし、かつて永世中立宣言が国際会議で承認されながら中立を維持するための武装をしていなかったため(非武装中立)、他国から簡単に侵略占領されたケースもあったため、国連憲章第6章で安保理に『非軍事的措置』として軍事力によらないあらゆる手段(経済制裁やスポーツも含むあらゆる分野での「村八分」政策など)を行使する権限を与えている。しかしそうした非軍事的措置でも平和に対する脅威を排除できなかった場合を考慮して、国連憲章第7章は安保理に『軍事的措置』を行使する権限を与えることにした。しかし国連安保理15か国のうち米・英・仏・ロ・中の常任5か国は拒否権を与えられているため、多数決で非軍事的措置も軍事的措置も行使できないことがありうるため、第7章の最後に51条を設けて、侵略を受けた場合に自国を防衛するための『自衛権』として、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認めることにしたのである。日本が他国から侵略されたとして、この『自衛権』の行使について、もう少しわかりやすく書くと、まず個別的自衛とは自衛隊の出動・軍事力による抵抗の権利を意味し、集団的自衛とは自衛隊だけでは防ぎきれない場合は他の国連加盟国に支援を要請できる権利を意味している。日本の場合、集団的自衛権は日米安全保障条約によって既にいつでも行使できる状態にあり、政府の従来の解釈『密接な関係にある他国が侵略(攻撃)を受けた場合、日本が侵略(攻撃)を受けたと見なして反撃する権利』というのは明らかに間違っている」
さらに小林紀興氏は「日本政府やマスコミはアメリカを同盟国と見なし、勝手にそう位置づけているが、同盟関係とは本来双務的な関係であり、日本が攻撃を受けたときだけアメリカに支援を要請できる権利を擁し、アメリカが攻撃されてもアメリカは日本に支援を要請する権利を持てず、日本も支援する義務を負わない、などというご都合主義的な同盟関係などありえない。アメリカにとって日本は単なる『パートナー』(キャロライン・ケネディ駐日米大使)の一つに過ぎず、ときには日本より中国との関係を重視することがあるのはそのためである。現に、アメリカが沖縄に米軍基地を集中しているのは日本防衛のためではなく、中国の領土領海拡大政策を封じ込めるための一大軍事拠点と位置付けているからである。さらに、尖閣諸島に関してはアメリカは日本の領土として認め防衛する意向を現在は示しているが、それが現時点におけるアメリカの対中関係の反映に過ぎず、いつアメリカのスタンスが変化するかは予断できない。その証拠に、日本固有の領土である竹島が韓国によって実効支配されていてもアメリカは知らんぷりだし、日本も日米安保条約に基づいて竹島奪還のための共同作戦の要請をアメリカにしていない。仮に要請してもアメリカが絶対応じないことを日本政府はよくわかっているから、下手な動きをすると日米安保条約によってアメリカが日本のために血を流してくれるときは、そうすることがアメリカの国益になるときだけだという冷厳な事実が国民の目にあからさまになってしまうことを恐れているからにほかならない。アメリカにとって間違いのない同盟国はイギリスだけであり(ひょっとするとイスラエルもそうかもしれない)、だから日本が真の同盟関係をアメリカとの間に構築するには憲法を改正して国連憲章が定める加盟国(真の独立国家)としての権利と義務を有することを明確にする必要がある」
政府は日本の教科書に尖閣諸島、竹島を日本の領土と明記することを定めた。それは当然である。だが、1953年以降、竹島は韓国軍によって実効支配されている。日本政府はたびたび韓国に対して抗議を行い、国際法にのっとり領有権を国際司法の場で決めようと提案しているが、韓国側は「領土問題は存在しない」として国際法にのっとった解決を拒否している。逆に尖閣諸島については日本側が中国に対して「領土問題は存在しない」と主張して中国の主張を撥ね付けている。また北方四島についても過去ロシア(ソ連時代から)は「領土問題は存在しない」という基本的立場を崩していない。が、シベリアの資源開発には日本の協力が絶対に欠かせない状況から、ロシアのプーチン大統領が軟化の姿勢を匂わせ、安倍総理も従来の「北方四島」という呼称をやめて「北方領土」と言い換えている。
領土問題は、このように一筋縄では解決しないのである。尖閣諸島に関しては、先に述べたようにアメリカがいまのところ「尖閣諸島は日米安保条約の対象だ」と言っているため、中国も強硬手段に出れない状態だが、竹島については「われ関せず」の姿勢だ。北方四島についてはアメリカは2010年11月2日、フィリップ・クローリー国務次官補が記者会見で「アメリカは北方領土に対する日本の主権を認めている」としたうえで、北方領土に日米安全保障条約が適用されるかについてに質問に対しては「現在は日本の施政下にないため適用されない」と語っている。
これら三つの領土問題について検証作業を行うことは小林紀興氏も難しいとしている。ただ言えることは、竹島はかつて朝鮮犯罪人の流刑地として使用されていたが、本国との往来が困難で使用をやめたという「事実」が少し前まではウィキペディアに掲載されていた。が、この記述が、現在のウィキペディアにはない。なぜ削除されたのか、ウィキペディアも政治的独立性を維持できなくなったのかもしれない。そうなると、ウィキペディアでいろいろなことを調べることが困難ということになりかねない。ウィキペディアが「事実でないことが分かったから削除した」というなら、そのことをきちんと明記してほしい。そうでないとウィキペディアの信頼性が大きく損なわれる。ウィキペディアへの投稿は自由だが、投稿内容は厳しく審査され、問題があると思われる投稿にはその旨注意書きがされている。それだけ慎重な基準を設けていながら、竹島についての極めて重要な記載が無断で削除されたことに私はウィキペディアのために悲しむ。
尖閣諸島については中国の言いがかりとしか思えない。確かに江戸時代、薩摩藩が幕府の了承を得て沖縄を占領して薩摩藩の版図に組み入れたことはよく知られている。当時沖縄は琉球王朝であり、中国の属国として中国の支配下にあったこと、薩摩藩の侵攻を受けた琉球王朝が中国に応援軍の派遣を要請したが、国力が弱っていた中国が、この要請を無視したことも日本人の多くが知っている。
いま中国が、かつて琉球との往来の際に尖閣諸島を航海
の目印にしていたからと、実効支配の理由付けをするなら、大航海時代にはヨーロッパの海洋国が航海の目印にしていた場所はすべてその国の領有するところになる。そもそも朝鮮も沖縄(琉球王朝時代)もかつては中国の属国であったし、実際豊臣秀吉が大軍(日本の歴史上はじめての「日本軍」と位置付けてもいいだろう)で朝鮮侵攻を試みたとき、朝鮮の要請に応じて日本軍と戦火を交え、朝鮮を防衛したのは中国だった。かつて属国だった沖縄への渡航の目印にしていたからという屁理屈を並べるなら、朝鮮や沖縄に対し「かつては中国の属国だったのだから、現在も中国の領土だ」と国際司法裁判所に訴え出ればいい。議論の余地もなく門前払いされるだけだが…。
北方領土についてはもっとひどい。先の大戦時、日本はソ連との間に日ソ中立条約を締結していた。日ソ両国の条約締結の背景についてはすでにブログで書いたので繰り返さないが、国益が一致したことによって条約締結に至ったことだけは覚えておいてほしい。国際条約というのは、基本的にそういうもので、国益が一致しなくなったら紙くずになってしまったケースは歴史上数知れない。「信義」とか「信頼」などという言葉は、条約においては事実上意味をなさない言葉だということを日本は戦争の最大の教訓として学ばねばならない。
実際、日本の要請を拒絶してソ連が日ソ中立条約の延長を拒否したのは1945年4月5日で、同日、期限切れと同時に日ソ中立条約を破棄する旨を通告した。この通告により条約の自動延長(日米安全保障条約も1960年以降改訂されず自動延長が続いている)は行われず、46年4月25日に失効されることになった。そして日本が正式にボツダム宣言を受諾して連合国に無条件降伏を回答したのは8月14日である(日本の終戦記念日は、その翌日、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び…」という玉音放送が行われた15日になっている)。そしてソ連は日ソ中立条約破棄を条約失効前の8月8日に条約日本に通告して対日宣戦布告をした。この条約破棄と宣戦布告は国際法上無効だと日本政府は主張している。なおその翌日9日にはアメリカが広島に原爆を投下しており、その情報をアメリカがソ連に伝えていた可能性はかなり高いと考えて不自然ではない。
日本は9日の深夜に御前会議を開き、10日午前2時半、国体維持を条件にボツダム宣言受諾を連合国に通告した(国内では極秘)。ただしこの通告がソ連に対しても行われたかは不明。14日再び御前会議を開き、ボツダム宣言≪無条件降伏)受諾を回答。翌15日に昭和天皇が正午を期して終戦の「玉音放送」をラジオで流した。ゆえに8月15日が終戦記念日とされた。
なお占領軍の進駐に備えて日本の内務省は18日、地方長官に占領軍向けの「性的慰安施設」の設置を命じている。また慰安婦は公募であり(応募したのは職業的娼婦と考えられる)、一般の妙齢の女性は丸刈り男装を命じられたという話も私は母親から聞いた(公的記録はない)。こうした事実が、先の大戦時の慰安婦問題の歴史的背景にあり、大阪市前市長の橋下徹氏やNHKの籾井会長の発言が歴史的事実を述べたにすぎないという証拠でもある。
国際法上は「白旗」を揚げた時点で戦争は終結したと見なされており、「白旗」を掲げているのに攻撃を続けるのは国際法上も違法行為であることが認められている。実際、ソ連軍を除いて連合国軍は、日本政府のボツダム宣言受諾回答と同時に攻撃停止しており、占領軍の第1陣は8月28日、何のトラブルもなく日本上陸を果たしている。日本政府が米軍艦ミズリー号の甲板上で降伏文書に調印したのは9月2日。連合国側で調印したのは米・英・仏・オランダ・中国・カナダ・ソ連・オーストリア・ニュージーランドであった。ソ連もこの時点で日本の降伏文書に調印していたことに留意してほしい。
さてソ連が日ソ中立条約を国際法に違反して日本の同意を得ずに一方的に破棄し、対日宣戦布告したのは、すでに述べたように8月8日である。その時点ではまだソ連軍は対日戦争の準備を終えていなかったようで(アメリカによる原爆投下で急きょ対日宣戦布告だけ、とりあえずしておこうということだったと考えられる)、実際にソ連軍が国境を侵犯して南樺太に侵攻したのは8月11日である。そして日本政府が正式にボツダム宣言受諾を連合国に回答したのは14日である(以前のブログで述べたようにボツダム宣言はドイツ郊外のボツダムで米トルーマン・英チャーチル・ソ連スターリンの三首脳によって作成され米トルーマン・英チャーチル・中国蒋介石の三首脳連名で日本に通告された)。
が。ソ連はボツダム宣言受諾回答後も南樺太への侵攻を続けて25日には南樺太を占領、さらに28日から9月1日までに北方領土の択捉・国後・色丹を占領、9月3日から5日にかけて歯舞群島も占領した。こうした歴史的経緯からして北方四島が国際法に照らせばソ連(現ロシア)による違法占領地域であることは疑いを容れず、アメリカが尖閣諸島については安保条約の範囲と声明を出しながら、北方四島については口出ししないのは、日本との「同盟」(同盟関係にあると考えているのは日本人だけでアメリカは日本を同盟国とはみなしていない)より自国の国益次第では、日米安全保障条約の適用条件も変えることが明確になった。
そうした日米関係の真実を明らかにせず、北方領土に関するアメリカの煮え切らない態度に対して、アメリカに抗議もせず、教科書に記載することがどう
いうことを意味するのかまで踏み込んだ主張をしない(するだけの知的能力が
ない ?)読売新聞の非見識ぶりが改めて明らかになったとする小林紀興氏の論理的主張には、当メディア最高裁判所もまったく同感の意を表するに躊躇する必要はないと考える。
中国が領土領海拡大の野心を持って国際社会の了解を得ず軍事力の強化、とくに海上・航空攻撃力を強化しつつあることは、直接の脅威にさらされている当事国の日本、フィリッピンなどを含む東南アジア諸国にとって看過しがたい状況にあることは事実として認めるが、読売新聞が今年元日の朝刊3面の社説『日本浮上に総力を結集せよ――「経済」と「中国」に万全の備えを』は、主張の趣旨は理解できるとしても、「主張を正当化するために捻じ曲げた国連憲章解釈」を読者に強いた罪はゆるがせにできないものがあると言わざるを得ない。
同社説はこう主張している。
「日米同盟の深化(※強化と書くべき)によって、中国をけん制することも重要だ」「米国は尖閣諸島に対し、日米安保条約の対日防衛義務を定めた条項が適用される、という立場を変えていない。この条項が確実に機能するよう、米国との間で日本の役割も増強しなければならない」「安倍政権が今年末に、日米防衛協力の指針(ガイドライン)を見直すのは時宜にかなっている」「平時から有事へ、危機の拡大に応じた継ぎ目のない日米共同対処ができるよう、自衛隊の米軍支援の拡充、尖閣など離島防衛での米軍の関与拡大を打ち出したい」「集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更に踏み切ることも、避けて通れない」「政府・自民党は。自衛のための『必要最小限の武力行使』に、集団的自衛権の行使も含める、とする新しい解釈を検討している。安全保障環境の悪化を受けて、『必要最小限』の範囲を広げるのは、十分理解できる」「集団的自衛権とともに、個別的自衛権の議論も深めたい。たとえば、偽装漁民による離島占拠という武力攻撃に至らない段階で、自衛隊は、どう対処するのか。こうした『マイナー自衛権』の武器使用の問題も詰めておく必要がある」
小林紀興氏が展開した「集団的自衛権論」の骨子はこうである。
「集団的自衛権は国連憲章51条が国連加盟国に対して認めている『自衛のため
の固有の権利の一つ』というのが氏の主張である。国連憲章51条ではもう一つの自衛のための固有の権利として個別的自衛権も認めている。そもそも国連憲章は国際平和の実現を目指し、その第1章において、すべての国連加盟国は国際紛争を平和的に解決すること、武力による威嚇又は武力の行使を慎まなければならない、という大原則を明記している。しかし、かつて永世中立宣言が国際会議で承認されながら中立を維持するための武装をしていなかったため(非武装中立)、他国から簡単に侵略占領されたケースもあったため、国連憲章第6章で安保理に『非軍事的措置』として軍事力によらないあらゆる手段(経済制裁やスポーツも含むあらゆる分野での「村八分」政策など)を行使する権限を与えている。しかしそうした非軍事的措置でも平和に対する脅威を排除できなかった場合を考慮して、国連憲章第7章は安保理に『軍事的措置』を行使する権限を与えることにした。しかし国連安保理15か国のうち米・英・仏・ロ・中の常任5か国は拒否権を与えられているため、多数決で非軍事的措置も軍事的措置も行使できないことがありうるため、第7章の最後に51条を設けて、侵略を受けた場合に自国を防衛するための『自衛権』として、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認めることにしたのである。日本が他国から侵略されたとして、この『自衛権』の行使について、もう少しわかりやすく書くと、まず個別的自衛とは自衛隊の出動・軍事力による抵抗の権利を意味し、集団的自衛とは自衛隊だけでは防ぎきれない場合は他の国連加盟国に支援を要請できる権利を意味している。日本の場合、集団的自衛権は日米安全保障条約によって既にいつでも行使できる状態にあり、政府の従来の解釈『密接な関係にある他国が侵略(攻撃)を受けた場合、日本が侵略(攻撃)を受けたと見なして反撃する権利』というのは明らかに間違っている」
さらに小林紀興氏は「日本政府やマスコミはアメリカを同盟国と見なし、勝手にそう位置づけているが、同盟関係とは本来双務的な関係であり、日本が攻撃を受けたときだけアメリカに支援を要請できる権利を擁し、アメリカが攻撃されてもアメリカは日本に支援を要請する権利を持てず、日本も支援する義務を負わない、などというご都合主義的な同盟関係などありえない。アメリカにとって日本は単なる『パートナー』(キャロライン・ケネディ駐日米大使)の一つに過ぎず、ときには日本より中国との関係を重視することがあるのはそのためである。現に、アメリカが沖縄に米軍基地を集中しているのは日本防衛のためではなく、中国の領土領海拡大政策を封じ込めるための一大軍事拠点と位置付けているからである。さらに、尖閣諸島に関してはアメリカは日本の領土として認め防衛する意向を現在は示しているが、それが現時点におけるアメリカの対中関係の反映に過ぎず、いつアメリカのスタンスが変化するかは予断できない。その証拠に、日本固有の領土である竹島が韓国によって実効支配されていてもアメリカは知らんぷりだし、日本も日米安保条約に基づいて竹島奪還のための共同作戦の要請をアメリカにしていない。仮に要請してもアメリカが絶対応じないことを日本政府はよくわかっているから、下手な動きをすると日米安保条約によってアメリカが日本のために血を流してくれるときは、そうすることがアメリカの国益になるときだけだという冷厳な事実が国民の目にあからさまになってしまうことを恐れているからにほかならない。アメリカにとって間違いのない同盟国はイギリスだけであり(ひょっとするとイスラエルもそうかもしれない)、だから日本が真の同盟関係をアメリカとの間に構築するには憲法を改正して国連憲章が定める加盟国(真の独立国家)としての権利と義務を有することを明確にする必要がある」
政府は日本の教科書に尖閣諸島、竹島を日本の領土と明記することを定めた。それは当然である。だが、1953年以降、竹島は韓国軍によって実効支配されている。日本政府はたびたび韓国に対して抗議を行い、国際法にのっとり領有権を国際司法の場で決めようと提案しているが、韓国側は「領土問題は存在しない」として国際法にのっとった解決を拒否している。逆に尖閣諸島については日本側が中国に対して「領土問題は存在しない」と主張して中国の主張を撥ね付けている。また北方四島についても過去ロシア(ソ連時代から)は「領土問題は存在しない」という基本的立場を崩していない。が、シベリアの資源開発には日本の協力が絶対に欠かせない状況から、ロシアのプーチン大統領が軟化の姿勢を匂わせ、安倍総理も従来の「北方四島」という呼称をやめて「北方領土」と言い換えている。
領土問題は、このように一筋縄では解決しないのである。尖閣諸島に関しては、先に述べたようにアメリカがいまのところ「尖閣諸島は日米安保条約の対象だ」と言っているため、中国も強硬手段に出れない状態だが、竹島については「われ関せず」の姿勢だ。北方四島についてはアメリカは2010年11月2日、フィリップ・クローリー国務次官補が記者会見で「アメリカは北方領土に対する日本の主権を認めている」としたうえで、北方領土に日米安全保障条約が適用されるかについてに質問に対しては「現在は日本の施政下にないため適用されない」と語っている。
これら三つの領土問題について検証作業を行うことは小林紀興氏も難しいとしている。ただ言えることは、竹島はかつて朝鮮犯罪人の流刑地として使用されていたが、本国との往来が困難で使用をやめたという「事実」が少し前まではウィキペディアに掲載されていた。が、この記述が、現在のウィキペディアにはない。なぜ削除されたのか、ウィキペディアも政治的独立性を維持できなくなったのかもしれない。そうなると、ウィキペディアでいろいろなことを調べることが困難ということになりかねない。ウィキペディアが「事実でないことが分かったから削除した」というなら、そのことをきちんと明記してほしい。そうでないとウィキペディアの信頼性が大きく損なわれる。ウィキペディアへの投稿は自由だが、投稿内容は厳しく審査され、問題があると思われる投稿にはその旨注意書きがされている。それだけ慎重な基準を設けていながら、竹島についての極めて重要な記載が無断で削除されたことに私はウィキペディアのために悲しむ。
尖閣諸島については中国の言いがかりとしか思えない。確かに江戸時代、薩摩藩が幕府の了承を得て沖縄を占領して薩摩藩の版図に組み入れたことはよく知られている。当時沖縄は琉球王朝であり、中国の属国として中国の支配下にあったこと、薩摩藩の侵攻を受けた琉球王朝が中国に応援軍の派遣を要請したが、国力が弱っていた中国が、この要請を無視したことも日本人の多くが知っている。
いま中国が、かつて琉球との往来の際に尖閣諸島を航海
の目印にしていたからと、実効支配の理由付けをするなら、大航海時代にはヨーロッパの海洋国が航海の目印にしていた場所はすべてその国の領有するところになる。そもそも朝鮮も沖縄(琉球王朝時代)もかつては中国の属国であったし、実際豊臣秀吉が大軍(日本の歴史上はじめての「日本軍」と位置付けてもいいだろう)で朝鮮侵攻を試みたとき、朝鮮の要請に応じて日本軍と戦火を交え、朝鮮を防衛したのは中国だった。かつて属国だった沖縄への渡航の目印にしていたからという屁理屈を並べるなら、朝鮮や沖縄に対し「かつては中国の属国だったのだから、現在も中国の領土だ」と国際司法裁判所に訴え出ればいい。議論の余地もなく門前払いされるだけだが…。
北方領土についてはもっとひどい。先の大戦時、日本はソ連との間に日ソ中立条約を締結していた。日ソ両国の条約締結の背景についてはすでにブログで書いたので繰り返さないが、国益が一致したことによって条約締結に至ったことだけは覚えておいてほしい。国際条約というのは、基本的にそういうもので、国益が一致しなくなったら紙くずになってしまったケースは歴史上数知れない。「信義」とか「信頼」などという言葉は、条約においては事実上意味をなさない言葉だということを日本は戦争の最大の教訓として学ばねばならない。
実際、日本の要請を拒絶してソ連が日ソ中立条約の延長を拒否したのは1945年4月5日で、同日、期限切れと同時に日ソ中立条約を破棄する旨を通告した。この通告により条約の自動延長(日米安全保障条約も1960年以降改訂されず自動延長が続いている)は行われず、46年4月25日に失効されることになった。そして日本が正式にボツダム宣言を受諾して連合国に無条件降伏を回答したのは8月14日である(日本の終戦記念日は、その翌日、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び…」という玉音放送が行われた15日になっている)。そしてソ連は日ソ中立条約破棄を条約失効前の8月8日に条約日本に通告して対日宣戦布告をした。この条約破棄と宣戦布告は国際法上無効だと日本政府は主張している。なおその翌日9日にはアメリカが広島に原爆を投下しており、その情報をアメリカがソ連に伝えていた可能性はかなり高いと考えて不自然ではない。
日本は9日の深夜に御前会議を開き、10日午前2時半、国体維持を条件にボツダム宣言受諾を連合国に通告した(国内では極秘)。ただしこの通告がソ連に対しても行われたかは不明。14日再び御前会議を開き、ボツダム宣言≪無条件降伏)受諾を回答。翌15日に昭和天皇が正午を期して終戦の「玉音放送」をラジオで流した。ゆえに8月15日が終戦記念日とされた。
なお占領軍の進駐に備えて日本の内務省は18日、地方長官に占領軍向けの「性的慰安施設」の設置を命じている。また慰安婦は公募であり(応募したのは職業的娼婦と考えられる)、一般の妙齢の女性は丸刈り男装を命じられたという話も私は母親から聞いた(公的記録はない)。こうした事実が、先の大戦時の慰安婦問題の歴史的背景にあり、大阪市前市長の橋下徹氏やNHKの籾井会長の発言が歴史的事実を述べたにすぎないという証拠でもある。
国際法上は「白旗」を揚げた時点で戦争は終結したと見なされており、「白旗」を掲げているのに攻撃を続けるのは国際法上も違法行為であることが認められている。実際、ソ連軍を除いて連合国軍は、日本政府のボツダム宣言受諾回答と同時に攻撃停止しており、占領軍の第1陣は8月28日、何のトラブルもなく日本上陸を果たしている。日本政府が米軍艦ミズリー号の甲板上で降伏文書に調印したのは9月2日。連合国側で調印したのは米・英・仏・オランダ・中国・カナダ・ソ連・オーストリア・ニュージーランドであった。ソ連もこの時点で日本の降伏文書に調印していたことに留意してほしい。
さてソ連が日ソ中立条約を国際法に違反して日本の同意を得ずに一方的に破棄し、対日宣戦布告したのは、すでに述べたように8月8日である。その時点ではまだソ連軍は対日戦争の準備を終えていなかったようで(アメリカによる原爆投下で急きょ対日宣戦布告だけ、とりあえずしておこうということだったと考えられる)、実際にソ連軍が国境を侵犯して南樺太に侵攻したのは8月11日である。そして日本政府が正式にボツダム宣言受諾を連合国に回答したのは14日である(以前のブログで述べたようにボツダム宣言はドイツ郊外のボツダムで米トルーマン・英チャーチル・ソ連スターリンの三首脳によって作成され米トルーマン・英チャーチル・中国蒋介石の三首脳連名で日本に通告された)。
が。ソ連はボツダム宣言受諾回答後も南樺太への侵攻を続けて25日には南樺太を占領、さらに28日から9月1日までに北方領土の択捉・国後・色丹を占領、9月3日から5日にかけて歯舞群島も占領した。こうした歴史的経緯からして北方四島が国際法に照らせばソ連(現ロシア)による違法占領地域であることは疑いを容れず、アメリカが尖閣諸島については安保条約の範囲と声明を出しながら、北方四島については口出ししないのは、日本との「同盟」(同盟関係にあると考えているのは日本人だけでアメリカは日本を同盟国とはみなしていない)より自国の国益次第では、日米安全保障条約の適用条件も変えることが明確になった。
そうした日米関係の真実を明らかにせず、北方領土に関するアメリカの煮え切らない態度に対して、アメリカに抗議もせず、教科書に記載することがどう
いうことを意味するのかまで踏み込んだ主張をしない(するだけの知的能力が
ない ?)読売新聞の非見識ぶりが改めて明らかになったとする小林紀興氏の論理的主張には、当メディア最高裁判所もまったく同感の意を表するに躊躇する必要はないと考える。