A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

【お知らせ】展覧会「High-Light Scene」

2016-04-27 23:24:25 | お知らせ
この度、京都・Gallery PARCにて展覧会のキュレーションさせて頂きます。
昨年、大阪・サイギャラリーにて企画しました「光路」に続いて、「光」をテーマとした展覧会となります。

 今展では、映像や放送番組などで最も劇的な場面を指して使われる「ハイライトシーン」という言葉を手がかりに、大洲 大作、竹中 美幸、中島 麦の3名のアーティストの作品における「ハイライト」に着目します。

【開催概要】
High-Light Scene
2016年5月4日(水)~5月22日(日)[月曜休] 
11:00 ~ 19:00 *金曜日は20:00まで

企画:平田剛志
出品作家:大洲大作竹中美幸中島麦

会場:Gallery PARC
〒604-8082 京都市中京区三条通御幸町弁慶石町48三条ありもとビル [ル・グランマーブル カフェ クラッセ] 2階
阪急河原町駅より徒歩10分 / 三条京阪駅より徒歩10分
地下鉄東西線京都市役所前駅より徒歩3分
Tel・Fax:075-231-0706 
http://www.galleryparc.com/

協力:サイギャラリーGallery OUT of PLACE
助成:アーツサポート関西

*関連イベント
5月4日(水・祝)12:00~18:00
「Open Draw-ing」中島麦
・上記の時間内、会場内にて中島麦が断続的にドローイングを描きます。

5月5日(木・祝)
先着順で「Hi」ライトなプレゼントを贈呈。(数に限りがあります。ご了承下さい)

5月22日(日)16:00~
「High-light Talk」大洲大作、竹中美幸、中島麦、平田剛志
・企画者、出展者が全員そろってのトークイベントです。


以下、展覧会によせてのテキストです。

―――――

High-Light Scene
平田剛志

 光も風景も、いつも日常にあるのに見逃しています。今日、私は日々の傍らに降りそそいだ「光」を見たでしょうか。今日のハイライト(見所)ではなく、「ハイ-ライト」を。
本展「High-Light Scene」は、3人のアーティストの作品を通じて、日々見過ごしている光(ハイライト)にあらためて目を向けてみる展覧会です。

 「ハイライト」には2つの用例があります。
 ひとつは映像や放送番組、小説において最も重要な、または感動的な部分や場面、見せ場、見どころを指す「ハイライトシーン」です。映画やドラマ、演劇やコンサートからスポーツまで、「ハイライトシーン」を通じて私たちは物語や試合の内容、結果を知ることができるのです。転じて、ある一日または旅行や祭り、冠婚葬祭などにおいて印象的な出来事やエピソードを「ハイライト」と呼び、過去を想起・回想してもいるでしょう。「ハイライト」とは、過去を照らす光でもあるのです。
2つ目は、絵画用語としての「ハイライト」です。光のあたった最も明るい部分を白や黄色の絵具などで浮き立たせる「ハイライト」は、光沢やテクスチュアを再現する光学的な表現技法として15世紀のフランドル絵画において確立され、現在では写真やマンガまでハイライトが効果的に使われています。

 以上のように、「ハイライト」には、一方では非日常的な見どころや見せ場、他方ではこの地上を照らす日常的な「光」を再現・模倣する言葉として、まったく異なる意味があるのです。
「ハイライト」は、岡田温司が「ハイライトの逆説」と呼ぶように、二面性があります。例えば、絵画における「ハイライト」は自然な光の再現描写ですが、ハイライトそのものは白や黄色の絵の具の塊りでしかありません。鑑賞者は人物や物質に反射・反映する「ハイライト」を見ているのか、絵の具の塊を見ているのか、ともすればハイライトは絵の具が物質として知覚されてしまう可能性を孕んでいるのです。この「ハイライト」の二面性は、「再現されたものと再現の媒体」、模倣と反模倣、フォルムとアンフォルムという対極的なイメージの揺らぎをもたらすことでしょう。それは今展における3人の作家にも通じるものです。

 大洲大作(1973年大阪生まれ)は、主に列車の車窓を過ぎる一瞬間の光のシークエンスを捉えた写真作品を制作してきました。大洲の「光のシークエンス」は光の「ハイライトシーン」でもありますが、本展では車窓とは異なる日常の「ハイ-ライトシーン」を捉えた未発表・新作のプリント写真およびスライドプロジェクションを出品します。スライド映写機の光源を通じてスクリーンに映し出される「光」は、「それは=かつて=あった」ハイライトの存在を明かすことでしょう。


 竹中美幸(1976年岐阜生まれ)は、水彩、アクリル樹脂を用いた平面・立体作品を手がけ、(半)透明を介在した光と影、重層的な視覚の揺らめき、瑞々しさを視覚化してきました。近年は映画フィルムを素材に、暗室の闇のなかでフィルムに光を留めた作品を制作しています。映画フィルムというシークエンスに刻まれた色彩は、展示空間に差し込む光(と影)とも合わさり、私たちそれぞれの「ハイ-ライトシーン」へと続いていくことでしょう。

 中島麦(1978年長野生まれ)はストロークの集積・蓄積から生れる絵画やドローイングを制作してきました。近年は、ドリッピング、ポーリングによる偶然性を取り込んだ絵画制作を行なっています。中島の作為と無作為、偶然と必然、カオスとコスモスがせめぎ合う画面には、描く行為の痕跡と絵の具の物質性が刻まれた「ハイライトシーン」が形成されています。今展では、大洲大作の写真作品を素材とした新作ドローイング(5/4に公開制作)、および新作のキャンバス作品を出品します。

 今展で鑑賞者が見るのは、カメラが捉えた光(ハイライト/シーン)であり、過ぎゆく光や色彩をフィルムやキャンバスに留めた「ハイライトシーン」です。3人の作品が展示空間にどのような「光景」を見せるのか、新緑まぶしい5月の「High-Light Scene」をお楽しみください。





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