A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

レヴュー「山下麻衣+小林直人:The Small Mountain」

2009-08-01 21:26:16 | お知らせ
ややご報告が遅れましたが、アートウェブマガジン「カロンズネット」にて<山下麻衣+小林直人:The Small Mountain>展(2009年5月16日―6月27日、Takuro Someya Contemporary Art)のレヴューを書かせて頂きました。お時間ございましたら、お読み頂ければ幸いです。

<山下麻衣+小林直人:The Small Mountain>レヴュー
http://www.kalons.net/j/review/articles_911.html

解題
やはり(いつもというべきでしょうか)今回はレヴュー記事に使われている作品画像を見て頂くのがいいでしょう。その滑稽さとそれゆえの魅力が伝わるのでないかと思います。また、偶然ですが作品画像の並びが宇宙から地上に降下していくように配置されたのが効果的でした。

山下+小林の作品には、地道な努力や根気というこの時代では忘れられてしまった「行為」が通過されています。絵画や彫刻、およそ芸術作品というものは時間とお金がかかるものですが、映像・写真作品はすぐできるもの、そういった認識はないでしょうか。私はそうは思いません(なお、すぐできるのは悪いという固定観念もいかがなものかと思います。すぐできる料理がすべてまずいということはありません)

今回の個展では見ることはできませんでしたが、彼らの作品に『miracle』(2004)という映像作品があります。5個のサイコロを振ると、すべてゾロ目が出るという作品です(ちなみに、サイコロはカタログを見る限り、明治サイコロキャラメルの空箱を使っていると思われます)。サイコロすべての数字がそろう偶然とはいったい何回あるのかわかりませんが、彼らはCGなど一切使わず、2ヶ月かけてサイコロを振り続けたのです。偶然という事象に関心がある者として、これは驚異的な作品でした。

山下+小林は遊んでいるように見えて、システムやメディア、世間で言われていることに対してつねに自覚的なのです。まるで何かに奉仕するかのような、あるいは試練のような地道で根気のいる行為は、真剣な「コメディ」のみが持ちえる批評性を内包しているように思えるのです。例えは大げさですが、ドン・キホーテのように、その身体をもってして、何かを証明しようとする意志が彼らにはあります。



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