A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記935 『NO BOOK』

2014-10-25 23:52:11 | 書物
タイトル:NO BOOK by NO ARCHITECTS
編集・デザイン:後藤哲也(OOO Projects)
写真:辺口芳典
協力:林勇気、神戸アートビレッジセンター
発行:[出版地不明] : OOO PRESS
価格:2,000円(税込)
形態:1組 ; 30cm
注記:ed. 22/200
内容:
・A2ポスター四折(A4/8P)
 「NO ARCHITECTSは建築を否定しない」鈴木明(武蔵野美術大学 建築学科 教授)テキスト
 「街のリズムを刻む」川勝真一(RAD)テキスト
 林勇気 with NO ARCHITECTS「光の庭ともうひとつの家」イラストポスター
・辺口芳典「NO DETAIL NO STYLE」写真集(B5/31P)
・NO ARCHITECTS 作品集(B5/44P)

到着日:2014年10月24日(予約日:2014年9月6日)
購入店:the three konohana
購入理由:
 大阪・the three konohanaにて開催された展覧会「NO ARCHITECTS:NO SHOP」にて予約購入した1冊。後日ギャラリーにお伺いして受取るつもりだったが、ご丁寧に郵送頂いた。どうもありがとうございます。

 NO ARCHITECTSは、西山広志(NISHIYAMA Hiroshi)と奥平桂子(OKUDAIRA Keiko)の2名による建築家ユニット。ユニット名の「NO」は二人の頭文字の組み合わせだとか。今展は、これまで仕事をしてきた画家、家具職人、音楽家、ファッションデザイナーなどとコラボレーションして制作したプロダクトを、自ら設計した空間内に期間限定の仮設の店舗「NO SHOP」と見立てた展覧会であった。

 家具やファッション、音楽、書籍といわゆる建築展というよりはデザイン展といえる内容で、なかなかおもしろかった。そこで私が予約購入したのが本書である。私の目的は辺口芳典氏が撮った写真集が付くということが魅力だった。夏に行われた辺口氏の個展を見過ごしたことを後悔していたこともあるが、なにより彼が撮る写真をきちんと見てみたかったのである。私が行った日には制作中のため、まだ完成していなかったが、こういうケースは現代美術展ではよくあることなので、購入後を楽しみにしつつ日々の雑事に追われて忘れたころに届いたというわけである。

 さて、封筒を開けて驚いた。たしかに見本は見ていたが、完成品ではないこともあって、あまり真剣に見てはいなかった。中身は完成品が届いてからじっくり見たいという思いもあった。そこで見落としたということかもしれない。期待していた辺口氏の写真集はいいとして、驚いたのは、NO ARCHITECTS作品集がコピー用紙のような紙に片面印刷、未製本、ダブルクリップ留めであったこと。そして、辺口氏の写真集と合わせてA2ポスター四折のポケット状の部分に挟み込み、上部をダブルクリップ留めされていたのだった。封を開け、ダブルクリップ留めを外したとき、当然だがポスターの紙に跡が付いていた。私は深く深く溜息をついた。このような心ないデザインを。私は熱心な林勇気ファンというわけでもないが、もし私が林勇気ファンだったら、私以上に落ち込むだろう。林勇気のポスターにダブルクリップの跡がつくのだから(もし、A2ポスターの紙がもっと厚さがあれば違ったかもしれないが、どんな厚さであれ大なり小なりダブルクリップの跡はつくだろう)。

 自分がダブルクリップを使って保存して、紙にクリップ跡が付いたのなら、自分の責任だからあきらめもつく。だが、この場合のダブルクリップはどんなデザイン上の目的があって用いられたのだろうか。『NO BOOK』のタイトル通り、本ではないことを狙ったデザインなのだろう。だが、本を購入・保存すること、あるいは予約購入して楽しみに封を開ける者の期待を考えたことがあるのだろうか。少なくとも私は保存する際にはダブルクリップは使いたくない。人から見れば、たかが本じゃないか、潔癖すぎる、美本に対するこだわりと言えばそれまでかもしれない。
 そこらでよく見かける文具であるダブルクリップをエディション入りのアーティストブックに採用し、お金を頂くってなんだろう。やはり本は製本されていることに意味と価値があるのだということを強く感じた経験だった。