A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記650 『Art and air』

2012-10-07 08:38:55 | 書物
タイトル:Art and air : 空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語 : 或いは、人間は如何にして天空に憧れ、飛行の精神をもって如何に世界を認識してきたか。
編集:Art and air展実行委員会、工藤健志
編集補助:板倉容子、乗田菜々美
ブックデザイン:乗田菜々美
会場写真撮影:柿崎真子
テキスト:工藤健志
制作:岩崎梓
発行:東京 : Pヴァイン・ブックス
発売:東京 : 株式会社スペースシャワーネットワーク
印刷・製本:大日本印刷
発行日:2012.9
形態:191p ; 21cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場: 2012年7月21日-9月17日:青森県立美術館
   主催: Art and air展実行委員会
   展覧会出品リスト: p [158]-[177]
   付属資料CD-ROM1枚
内容:

Chapter 1 : 見上げる――飛行・飛翔の夢
Chapter 2 : 見下ろす――神の視点
 「ものづくり日本」澄川喜一(彫刻家、東京スカイツリーデザイン監修者)
Chapter 3 : 空と飛行機の物語
Chapter 4 : 飛行機のメカニズムとフォルム、そしてデザイン
Chapter 5 : 空を飛ぶこと
空を飛ぶこと~天と地と
 「空を飛ぶこと」押井守(映画監督)
資料編
 「あひるたちもう一度飛びなさい」松浦晋也
 展覧会出品リスト
「きっとまた会えるでしょう、いつかある晴れた日に~あとがきにかえて」工藤健志
Art and Air : オリジナルサウンドトラック

購入日:2012年10月3日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 この展覧会を見たいがために、夏休みを利用して初めて青森まで行ってきた。移動手段はもちろん飛行機である。
 その内容は、期待以上にすばらしかった。エントランスを入ると、青秀祐の紙飛行機作品が頭上高く展示され、「見上げる」ことから展示は幕を開ける。続いて地下の展示室に降りたところから展示は始まる。イカロス、ライト兄弟、リンドバーグ等の飛行・飛翔の歴史を概観する展示に続いて、見下す視点をテーマに、吉田初三郎の鳥瞰図(これが見たかった!)、松江泰治の写真、東京スカイツリーの模型が展示され、見下す視点のダイナミックな空間が脳内に展開する。地図、航空写真はツボなので、とにかく楽しい。本来の目的はここで達成だが、ここから先もとにかくおもしろい。
 戦争記録画、戦闘機の図面、飛行機をモチーフとするポスター、プラモデルのパッケージ、雑誌、写真などの資料、模型飛行機、松本零士の漫画、稲垣足穂の小説などが並び、それらのモノの合間に会田誠、風間サチコ、中村宏、横尾忠則、石田徹也、池田学、O JUNなどの現代美術作品が展示されるのである。例えば、プロペラなどの部品が展示されれば、となりに図像的関連を想起させるマルセル・デュシャン、マン・レイの作品が展示されるといった具合である。大胆な展示はそれだけではない。デュシャンの向かいにはマクロスや戦闘機のゲーム画面、中央には航空会社のノベルティグッズが並ぶという雑多ぶり。だが、テーマがブレてないので、ストーリーに沿って物語を体感しているような感覚で見られる。
 最後は八谷和彦のパーソナルジェットグライダー《Open Sky》、F1マシンの実機、押井守の映像作品《東京スキャナー》、中ハシ克シゲの零戦、寺山修司の市街劇(記録映像)まで展示され、総合文化展と謳うだけの大ボリュームさ。キュレーションの醍醐味をたっぷり味わえる。見終わると知的好奇心を刺激される近年稀にみる展覧会だ。
 飛行機の展覧会というと、男性ファンを想定したマニアックな展示を想像されるかもしれないが、これは展覧会による飛行・飛翔をテーマとした視覚文化論である。このような展覧会を実現した工藤氏、青森県美に心から敬意を表したい。

 なお、本書は展覧会終了後に発売予定のため、旅から帰宅した後にアマゾンで予約して購入。