A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 062 よろこび

2012-04-23 23:05:00 | ことば
 あらゆるものの中で、外部から、価いなく、不意に、天の恵みのように、求めもしなかったのにやってくるもの、それだけが純粋なよろこびである。同じように、まことの善は、ただ外部からくるので、わたしたちの努力によってもたらされるものでは決してない。わたしたちはどんな場合にも、自分より以上によいものをつくり出すことはできない。だから、実際に善に向かって努力をつくしてみても、それが実を結ぶはずはない。長いむなしい緊張の果てに、ついに絶望におちいり、もはや何ひとつ期待しなくなったときに、外部からふしぎとも驚きともいうべきことに、賜物がやってくる。こうして努力したことによって、わたしたちの中にあったいつわりの充実が一部つきくずされたのだ。そんな充実よりももっと充実した、神的な空虚がもたらされて、わたしたちの中に居すわったのだ。
シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫)』田辺保訳、筑摩書房、1995年、82ページ。

自分にできることは限られているが、自分にできることは努力しかない。