きのう召集された特別国会=写真=で岸田文雄氏が首相に再び指名され、第二次岸田内閣が発足した。衆院選で自民、公明両党の与党が過半数を得ての再出発だ。
新型コロナウイルスの新規感染者は減少しているが、暮らしや経済は厳しい状況が続く。前政権までの独善的な政治で危機に陥った民主主義を再生するには、国民の声に謙虚に耳を傾け、丁寧な国会運営に努めなければならない。
第一次内閣発足からわずか一カ月余りでの第二次内閣発足で、閣僚はほぼそのまま再任された。
例外が林芳正氏の外相起用。前任の茂木敏充氏が自民党幹事長に就いたことに伴うものだ。この人事こそが、第二次内閣に注がれる国民の厳しい目を象徴する。
岸田総裁率いる自民党は衆院選で、公示前より十七議席(追加公認を含まず)減らしたとはいえ単独過半数を確保し、公明党との連立政権を継続させた。
自民政治に厳しい視線
しかし、総裁に次ぐ党の要職で選挙対策の陣頭指揮を執った幹事長の甘利明氏が小選挙区で敗退、幹事長を辞任した。同党幹事長の小選挙区敗退は初めてだ。
甘利氏自身は説明を尽くしたとしていたが、経済再生担当相当時に大臣室で業者から現金を受け取った「政治とカネ」の問題に対して、有権者が依然、厳しい視線を注いでいることがうかがえる。
自民党を離党したとはいえ、新型コロナの緊急事態宣言中に東京・銀座のクラブ通いが発覚した松本純氏が落選したのも、国民の思いと遊離した政治は認めないとの有権者の判断であろう。
現職閣僚の若宮健嗣万博相が小選挙区で敗退したことも、菅義偉氏から岸田氏に政権の「顔」が代わったとはいえ、自民党政治が依然、信頼回復の途上であることを意味しているのではないか。
衆院選直後の一、二両日行われた共同通信世論調査によると、政権継続となった衆院選結果を「よかった」と答えた人は35・3%に対し、「どちらともいえない」とした人は47・9%に上る。
岸田氏自身も「大変厳しい選挙だった」「多くの厳しい声も寄せられたことは厳粛に受け止めなければならない」と振り返る。
岸田氏は、自民党政治に向けられた国民の厳しい目を意識して政権運営に努めなければならない。さもなければ岸田政権継続の選択は、直ちに政権不信に転じうることを忘れるべきではない。
岸田氏は首相就任後、自らが議長を務める「新しい資本主義実現会議」に加え、社会保障改革を議論する「全世代型社会保障構築会議」や保育士らの処遇改善を図る「公的価格評価検討委員会」、デジタル分野で地方活性化を検討する「デジタル田園都市国家構想実現会議」、規制改革を議論する「デジタル臨時行政調査会」を次々と発足させた。
自民党総裁選や衆院選で公約した「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」「令和版所得倍増」の実現に向けて、専門家の知恵を集めることが目的だ。自ら率いる派閥「宏池会」の先達である大平正芳元首相が、学者らに助言を求めたことに倣ったのだろう。
国民の命を守り、暮らし、経済や社会全体をよくするために衆知を集める必要性は理解する。
「ブレーン政治」の兆し
ただ、新しい資本主義、令和版所得倍増、デジタル田園都市国家構想のいずれも具体像が結ばず、掛け声先行の感は否めない。岸田氏は、何を目指すのかを、具体的かつ丁寧に語る必要がある。
懸念されるのは、乱立する会議体を舞台に、いわゆる「ブレーン政治」「側近政治」が横行する恐れはないのか、である。
政府の議論や結論を唯一のものと考え、国会を政府提出法案や予算案の単なる追認機関におとしめるのなら、議会制民主主義を愚弄(ぐろう)する行為にほかならない。
大島理森衆院前議長は政界引退に当たり、本紙の取材に「民主主義は多様な意見を発露させ、議論し、合意点をつくるもの。手間暇はかかるが、国の運営には最もよいと確信している」と語った。
国会を軽視し、存在意義を損ねるような前政権までの振る舞いを岸田氏が改めなければ、民主主義の危機を脱し、再生させることは難しい。数の力を過信せず、国民の目を畏れることこそ、政権運営の要諦だと心得るべきである。
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